端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

戦国Fate

2011-11-05 00:30:30 | BASARA
「Ha, アンタが相手か?」
「おぉ、初戦が貴殿のような荒ぶる兵(つわもの)で嬉しゅうござる」
「Me too. さぁて…覚悟はいいか?」

戦国Fate

奇跡を叶える「聖杯」を手に入れるために。
七人の魔術師(マスター)が英霊(サーヴァント)をそれぞれ召喚し。
最後の一人になるまで戦う究極の決闘劇「聖杯戦争」
これが実に四回目であることはあまり知られていない。

「うおおぉお!!」
「どうしたぁ! 俺の心臓はここだぜ!?」

ランサーが二槍を振るう。
それは間違いなくセイバーに向かっているが。
躱されたり、刃に受け止められたりと攻撃が一切届かない。
その代わりとばかりにセイバーも攻撃を繰り出してくる。
その一進一退の攻防は、まるで剣舞。
お互いの攻撃が一撃ずつ掠めると。
距離を置いて、息を整える。

「小十郎、回復してくれ」
「はっ」

セイバーは振り返って己のマスターに声をかけた。
黒いコートに黒いスーツ、皮手袋をはめた男だ。
小十郎と呼ばれた男は静かに念じる。
するとセイバーの傷口が僅か光り、みるみる傷が塞がっていく。

「Ha, 感謝するぜ小十郎」
「奴は強いですか?」
「Yah, ぞくぞくするねぇ」

セイバーがにやりと笑う。
三日月を模した前立てに青い甲冑。
腰には六振りの刀を帯びている。
彼の目には刀鍔の眼帯。
隻眼、と言われる類であるがそれを感じさせない。

一方のランサーはと言うと。
こちらは、赤い鉢巻に赤い皮ジャケット。
赤い二槍を持ち、ダイヤモンドのような目を向けていた。

「主、傷を治していただきたく」
『次は決めてくれよ、遊びじゃないんだ』
「御意」

どこからか冷たい声が響く。
ランサーの傷口が僅かに光ると同時に傷が塞がっていく。
右手を握り、力が正しく入ることを確かめる。
槍を握る両手は攻撃の命綱である。

『宝具を用いることを許可する』
「有り難き幸せ」

言うが早いか、ランサーの持つ槍が炎を纏う。
二槍を回転させ、軌跡で炎の輪を作り出す。
セイバーは目を細めて、その様子を見つめる。

「……いいねぇ」

これは、彼の本心であった。
彼は、いつでも真剣勝負を求めていた。
だが自身が強すぎて、満足できる相手がおらず。
恐れ慄いた者たちに毒を盛られて死んだ。
本気になることも出来ず、戦場で死ぬことも出来なかった。
目の前のランサーに戦場で会えていたら…。

「俺も六爪で相手しなくちゃ失礼だな」
「……っ! 宝具を使われるので!?」
「不満か?」
「いえ…、存分になされませ」

腰にある六振りの刀は酔狂で帯びているわけではない。
これが彼の正式な武器であった。
刀を引き抜くと雷が刀身を覆う。
今度、目を見張ったのはランサーであった。
彼はいつでも全力で勝負に臨んでいた。
同時に仲間思いであり、お人好しと言われる気性の持ち主であった。
それが仇となり、傷の手当てをしているところを銃で撃たれて死んだ。
戦場で死ぬこと叶わず、不完全燃焼で人生を終えた。
目の前のセイバーに戦場で会えていたら…。

「準備はいいか?」
「そちらこそ」

お互いの表情が緩む。
真剣勝負の最中だというのに、嬉しさが先行する。
武器を構え、相手の出方をみる。
そして、今まさに打ち込もうとしたその時。
ガリっと異質な音が二人を襲った。
まるで場を割くように、黒い何かが割り込んできたのだ。
第二撃はセイバーにのみに向けられて、彼を吹っ飛ばした。
追撃するために「黒」が合わせて跳んでいく。

「ぐ…っ!!」

とっさに身を捩って躱すも、セイバーは先程の攻撃で腕を負傷してしまった。
打ち返すこともままならず、防戦一方である。
それでも何とか「黒」の武器を弾き、吹き飛ばす。
攻撃が止むかと思いきや「黒」はおもむろに鉄パイプを拾い上げ、さらに襲ってきた。
受けた攻撃がやけに重い。

「なっ…!! 手にしたもんが何でも宝具になるのか!!」
「……」

緩急つけての攻撃に、腕がついていけなくなってきた。
小十郎は必死に回復を施してくれているが、疲れまでは取り除いてくれない。
足がふらついてしまったのだろう。
目の前が大きく傾ぎ、片方しかない視界が「黒」から外れた。
それを見逃すはずもなく、相手は勝負を決めるべく打ち込んできた。
やられる…!と絶望が襲う。

「邪魔を、するなぁあ!!!」
「……!!」

炎が、槍が「黒」の得物を斬って捨てた。
怒りに打ち震え、セイバーの目の前に立ち塞がる。

「セイバー殿を討ち取るのは某だ。邪魔立てせんでもらおう!」
『何を言っているんだい?
 どうせ殺し合うんだ、倒してもらえばよかったのに』
「主!!聖杯は必ずや捧げてみせましょう。
 ですが、セイバー殿との戦いは…!!」
『令呪を以て命ず』
「主っ…!!!」

やっと血の滾るような戦いが出来る相手を見つけたのだ。
求めていた相手なのだ。
嫌だ、誰にも介入されたくない!!
これは私闘だ、聖杯など関係ない。
だが、主に聖杯を渡したいという気持ちもまた本心だ。
縋るように、乞うように発言するも無駄だった。

『「バーサーカー」を援護し、セイバーを殺せ』
「……!!!」

びくり、とランサーの体が僅か撥ねる。
握る槍には炎が纏う。
しかし、その炎は使い手の気持ちに反応するのか。
先程までより随分弱々しい。
英霊は魔術師の令呪には逆らえない。
気持ちと関係なく、体がその命令を実行する。

「……セイバー殿、すまぬ」

一閃。
どうにか避けることに成功したが、刀を握ることが出来ない。
もどかしい、どうして体が言うことを効かない?

「バーサーカー!何しとる!早く仕留めい!
 お主の攻撃に呪を込めとるんじゃ!弱っておらんはずがない!」
「……っ、そんなことを!!」

歯噛みするランサーと、セイバーは同じ気持ちだった。
攻撃を受ける度に呪を受け取っていたのだ。
動けなくなるのは当然の帰結。
ランサーとバーサーカーが同時に襲いかかってくる。
手は痺れ、足も動かせない。
柄にもなく、神にでも祈りたくなる。

「ぬうぉおおおおおおお!!!」
「「「!!!!!!」」」

その場にいた全員が意表を突かれた。
突然の叫び声、轟く車輪。
バーサーカーがきりきり舞いで吹っ飛ばされた。
飛び込んできたものに引かれたようだ。

「だぁあ、もう!なんてことをしてんだよ!ライダー!」
「気高き決闘が汚されたのだぞ。受けて当然の報いだ」

バーサーカーが消えていく。
魔術師はそれをみて、完全に腰が抜けてしまったようだ。
ひょえぇぇ!という声を上げながら、四つん這いで逃げていく。
ライダーと呼ばれた大男が宙をぎろりと睨む。
乗ってきた黒い馬車は、堂に入っていて、まさに王を彷彿とさせた。
同乗している男が魔術師だと思われる。
ライダーに反して纏う雰囲気がどこか軽い。

「おぉ、臆して足も動かぬか!!
 我が名は天下人、豊臣秀吉!
 此度の戦争ではライダーのクラスを得て臨戦した!
 弱き者よ、強者の決闘を汚したことを後悔させてやろう!」

びりびりと放たれる覇王の気。
なるほど、天下人とは斯様な人物であったのか。
挑発を受けて、ランサーの魔術師が口を開く。

『……僕が手に入れるはずだったのに。
 ひとの聖遺物を盗んで、まんまと召喚したわけか』
「その声…!」
『前田慶次、君は僕に謝るべきだ』
「……黙って聞いておれば。
 お前が我の主やったかもしれぬ、ということか?
 ならば、笑止!!」

ライダーが一喝する。
慶次が耳を塞いで、その大声をやり過ごす。
ランサーは立ち尽くしたまま。
セイバーに至っては、座り込んでしまう。

「ここまで来て、なおも姿を見せぬ臆病者め!
 我と共にあるべきは、堂々とせし者だ!」
『……!!』
「まだ、セイバーに危害を加えようとするならば。
 我がセイバーに加勢するが…、どうか?」
『……くっ、退け、ランサー。ここまでだ』
「…は」

ランサーの全身の力が抜ける。
握り込んでいた槍の炎が消え失せた。
終戦だ。
ランサーがセイバーを見、小さく何かを呟いた。
その姿が大気に融けていき、姿が見えなくなる。
はぁ…とため息を吐いてセイバーが立ち上がる。

「Thanks, 助かったぜ、天下人」
「いい戦いをもらったほんの礼だ。
 うぬらをいらぬ横槍で潰すのは惜しかったのでな」
「あいつ、何か言ってたな…」

今、ここにはいないランサーの最後の言葉。
それに思いを馳せたのは、慶次とセイバー。

「『ご無事で…』だとよ」
「戦う相手にか。どんだけお人好しなんだか」

思わず笑みが零れる。
ここにはもう戦い特有の緊張感はない。
ライダーがセイバーに向き直る。

「早く呪いを解き、ランサーと決着をつけよ。
 勝った者が我の対戦相手となろう」
「……受けてたつ」

にやりと笑ったかと思うと。
ライダーが来たときと同じように雄叫びをあげながら馬車を駆っていく。
残されたのは、セイバーと小十郎。

「申し訳ありません、お護りすることが出来ず…!」
「Ah, 気にすんな。どうにもならなかったさ」

腕の痺れはとれない。
やはり、バーサーカーと決着をつけなければならないのだろう。
しかし、これだけの強敵に一夜で三人も会えるとは。
高揚する気持ちが抑えられない。
そして思い出すのは目に焼き付く、鮮やかな赤。

「聖杯戦争か…、悪くねぇな…」

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Fate/zero 第5話が放送されてすぐ、滾る情熱が抑えられず。
こうやって大暴走した所存。
ランサー v.s. セイバー が蒼紅にしかみえなかったんだもん!!
立派なフラグがたったんだもん!!
自分に正直が一番いいと思います。

再構築をぶっかましているので。
第5話だと思っていると「え?」と思う展開になってます。
それなりに流れは同じにしてありますけど。
該当ポジションは以下。

セイバー:伊達政宗 アイリスフィール:片倉小十郎
ランサー:真田幸村 ケイネス:竹中半兵衛
ライダー:豊臣秀吉 ウェイバー:前田慶次
バーサーカー:風魔小太郎 間桐雁夜:北条氏政

秀吉が乗ってきたのはBASARA3で登場する「戦車天君」です。
心当たりがあるからのキャスティングですよ!
図体も重要だけど、辻褄合わないと自分がツライもん!


真名を言うと、得意な得物とか弱点が分かるとかで。
「クラス」での呼び方が徹底しているそうです。
だから、あとがきでフォローするしかないという…。
小太郎が絶対分からなかったと思います、自信がある。
秀吉だけが清々しいのは、元ネタ様が堂々と公表あそばしたからです。
「何考えてやがりますか、この馬鹿はぁ!!」は名言です、ウェイバー。
そうだよね(苦笑

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