端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

僕もそう思ってた

2012-03-15 00:00:00 | 名コンビな二人に5題
名コンビな二人に5題
- 僕と組むのは 君以外考えられない -

「俺、クラスに居場所ないんス。
 なんで、ここに置いてください」
「夜はパスで」

僕もそう思ってた

ある日のジュネスフードコート。
この日も、各自ジュースを飲みながらミーティング。
そこに巽完二が加わってからそう日は経っていない。
テレビの「中」で起きたこと。
特に己のシャドウのこと。
押さえつけている自分自身、潜在意識、ペルソナ。
人前にさらけ出し、一度は否定したそれを。
受け入れるきっかけをくれた人物を。
彼は思うところあって観察している。

「なに?」
「いや、なんでもないっす」

林間学校中のやりとりで。
かなりノリがいい先輩であることを把握していたが。
言いようのない違和感を感じていた。
ずぞぞぞ、と音を立てて、手元のコーラを飲みきる頃。
ワリィワリィと両手にフライドポテトが乗った皿を持った花村が現れた。
山盛りのフライドポテトに完二が驚いていると、花村は訴え始めた。

「なぁ、人数が増えて全部俺がおごるのキツいんだけど。
 割り勘にしようぜ、せめて飲み物だけでも!」
「水着は買えるくせに?」
「頻度が違うだろ!頻度が!」
「今度から、飲み物は自分持ちにしよっか。
 それでいい?」
「鳴上ぃ!お前って本当にいい奴だな!」

黄色い花を飛ばしながら。
花村は鳴上の言葉に感動しているようだ。
握手をして、左腕で目を押さえ、感動を表現している。
それに応えるように、鳴上も花村の肩に手をおく仕草。
なんだ、これは?と妙な感覚を覚えた完二は、里中たちの様子を窺う。

「いつもあんなよ、気にするだけ無駄」
「はぁ」
「ほんと、もうね、空気読めって時もあるけど」
「雪子、シャドウが出てる」
「こりゃ失敬」

フライドポテトをものすごい勢いで消化していく。
山盛りだったポテトが見る間に消える。
おいしいのか、まずいのか。
おそらく、感想は持っていないだろう。

「あ!俺ら、食べてないのに!」
「お先してまーす」
「千枝、ケチャップかけるとおいしいよ!?」
「いや、そんなドヤ顔されても……」
「花村ぁ、あたし、唐揚げ食べたーい」
「無視かよ!」
「行こう、それは俺が買う」
「鳴上、恩に着る!」

またもや花を飛ばしながら。
花村は鳴上を伴って売場に向かっていった。
その一部始終をみていた完二は、ひとつの結論に至る。

「花村先輩って『犬』っすね」
「そうねー、人懐っこいし尽くすしねー」
「時々、怪しいよね」
「わかるー!鳴上くんが露骨にエロいときがあるよね」
「え、エロい……」

里中の発言に完二は顔が真っ赤になる。
その間にもガールズトークは続く。
もはや、ポテトは風前の灯火である。

「あの二人が『実は付き合ってます』って報告してきても驚かない自信があるわ」
「その自信、私もあるよ」

その言葉で完二は理解した。
自分が感じていた違和感はこれだと。
自分は「パス」されたが、花村は「受け入れられた」
そのことに、引っかかっていたのだ。

向こうから話題の二人が帰ってくる。
今度は大盛りの唐揚げ。
花村の表情筋は緩みっぱなしだし。
鳴上もふわりと笑っている。

「いつか結婚しちゃうんじゃない?勢いで」

俺もそう思います。

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お題が進むたびに仲間が増えます。
増えるたびに「諦めてるひと」が増えます。

白文のとこ。
基本、苗字呼びにしたかったんだけど。
「巽」じゃちょっと字面が悪かったので「完二」にしました。
作中の白文で、唯一の名前呼びだぞ、こんにゃろう。

> 「千枝、ケチャップかけるとおいしいよ!?」

この台詞を書いた時に、いい顔でドヤ顔してる雪子が見えた。
もうね、私の中で雪子がおかしなことになってる。

> 「あの二人が『実は付き合ってます』って報告してきても驚かない自信があるわ」
> 「いつか結婚しちゃうんじゃない?勢いで」

私は全力で肯定します。
いや、まぁ、リアルで言われたら反応に絶対困るけど。

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