端と底を行き来するRPG

そのとき、きっと誰かの中心blog。
アーカイブにある作品は人事を尽くした盛者必衰の入れ替え制。

たまのケンカも

2012-03-22 00:00:00 | 名コンビな二人に5題
名コンビな二人に5題
- 僕と組むのは 君以外考えられない -

ある日。
あの二人が喧嘩した。

たまのケンカも

「どうしてわかんねぇかな!」

ジュネスフードコートで吼えたのは花村陽介。
エプロン着用、ネームプレート装備なのでバイト中なのは間違いない。
それでも、フードコートにやってきたところをみるに休憩に入ったのだろう。
いつものように、手元に飲み物を置いて。
いつものように、フライドポテトをつまんでいるのは。
いつもの面々…マイナス1だ。

「まーまー、落ち着きなさいって」
「そうそう、ポテトが散らばっちゃう」
「食い物の心配っすか?」
「帽子持ってくればよかったぁ」
「クマかぶる?」
「暑そうだからパス」
「聞こうっ!?人の話!!」

若干涙目になった花村を、仕方ないといった風に里中たちは向き直った。
自称特別捜査隊のメンバーが増えて。
全員がテレビの「中」に行くわけにもいかなくなった。
メンバーを決めるのは、リーダーである鳴上悠。
ことの始まりから関わっていて。
攻守ともに優秀なオールラウンダーは。
経験や知識に基づいてダンジョンに合わせて選抜し。
メンバーに合わせてペルソナを選択した。
あれだけコンビを組んでいた花村も例外ではなく。
相性が悪いダンジョンには、絶対に連れていかなかった。
そのことが彼にはよほど悔しかったらしい。

「俺がいなかったら、誰が回復すんだよ!」
「薬とかで適当に」
「戦闘中の雰囲気の癒しは!?」
「そこは、クマがカバーしてるクマよー」
「誰が背中護んだよ!」
「結局、それ?」

里中がわざとらしく、ため息をつくと。
慣れた様子でよしよしと頭をなでた。
気分は捨てられた子犬をなだめている感じなのだろう。

「あんたのことが心配なんでしょうが」
「分かってるよ!でも、納得できねぇんだよ!」
「もしかして、喧嘩の理由って」

聞くだけ野暮だな、と久慈川は言いかけた言葉を飲み込んだ。
二人が異様に仲がいいのを何度も目撃している。
はぁ、とため息をつくと花村はバイトに戻る、と言って去っていく。
その背中は、おどろ線を背負って哀愁が漂う。
弾かれた、と意識すると人は卑屈になってしまうことを久慈川は誰よりも理解していた。
自称回復役である花村を本当に必要とするとき、へそを曲げられては叶わない。
一応、鳴上に伝えておこうと人知れず心に決めた。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「却下」

昼休み、花村が拗ねていることを報告した。
今度の探索に花村を連れて行けば、機嫌が治るだろうとも。
それをにべもなく、鳴上は却下したのである。
考えるまでもないといった風で、真顔のままだ。

「救出には期限がある、余計な日数は割けない。
 花村の機嫌をとるためだけに一日を過ごせと?」
「そ、そうだけど…」

久慈川は、今まで見たことのない鳴上の表情に戸惑っていた。
厳しい表情を崩さず、正論を述べる。

「仮に花村を連れて行ったとして、弱点をつかれたら怪我をするだろう?
 傷薬だってタダじゃないし、リボンシトロンとかだってそうだ。
 メリットがないだろう」
「う……」

討論では勝てそうにない。
自分は精神面による材料しかないが、向こうは金銭面、期限、戦略面など材料はいくらでもある。
力になれなくてごめんね、とここにはいない花村に謝る。

「花村のご機嫌とりはプライベートでカバーするさ。
 家に呼んで、夕飯でも出して、そうだな、泊めてみるか」
「え……?」
「だから、心配いらない。
 りせ、情報提供に感謝するよ」

それじゃ、と踵を返す。
そして、風に紛れる程度の声で鳴上が何か言った。
爽やかに聞き捨てならないことを言われた気がする。
「痴話喧嘩にもなってないじゃん……」

『全然分かってないよ、陽介。
 君の体に傷がついたらどうする』

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心配するだけ、気にするだけ無駄。
だから、里中も天城も完二もスルー。
納得の久慈川であったとさ。

>『全然分かってないよ、陽介。
 君の体に傷がついたらどうする』

「鋼の錬金術師」第11巻 P24 のホーエンハイム決め顔で。
番長は、もう、本気モードだ。
陽介逃げてー超逃げてー。

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