SR*SEKISAWA REPORT ●●●●●

関沢隆美のカルチャー・レポート。

特別展示 田中功起「買物袋、ビール、鳩にキャビアほか」@群馬県立近代美術館 

2004-12-12 | □映像レビュー


群馬県立近代美術館は遠かった。

高崎市にあるって書いてあるから、高速道路使って
高崎I.C.で降りたら、藤岡I.C.の方が近かったのねー。(泣)
高崎市のすんごい外れにあるし。すぐそこは埼玉。
詐欺だよ詐欺!



                ■ ■ ■

田中功起氏(1975 栃木県益子町生まれ)は、
現代美術界における新進映像アーティストとして、最近注目を浴びつつあります。
2004年の夏にも、栃木県立美術館でのPiM(Picture in Motion)展にて、
他の映像作家とともに作品を展示されました。

そのときの展示映像は、「かつらが空を飛び続ける」ミニフィルムという
なんか人を食ったような作品で、タモ●や小倉◎昭への当てつけかと思いました。
ちなみにキュレイターの女性に「どれが一番面白いですか?」と聞いたら、
「かつらが…」と答えてました。かつらがどうしました?

さて、今回の群馬県立近代美術館では、田中氏の初の個展です。
美術館の特別展示ブースまるごと「田中功起」作品です。
ミュージシャンで言えば、大バコ(赤坂britzとか?)での初単独ソロライブ、
みたいな感じでしょーか。でも場所がローカルだからなあ。
県民会館ホールクラスでのツアー公演のようなニュアンス?

                ■ ■ ■



今回の特別展示についてのパンフレットが、金700円也となかなか
良心価格で買ってみたのだが、そこにあった館長からのごあいさつが
田中氏の作品経緯と今回の展示主旨をよく説明されていたので、
少々長めながらご紹介しよう。

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ごあいさつ

群馬県立近代美術館では、このたび「特別展示 田中功起」を
開催いたします。
田中功起(たなか・こおき、1975年生まれ)は、映像を中心に、
立体、インスタレーションなど幅広いメディアによる作品を発表し、
近年大きな注目を集めている作家です。倒れた缶からとめどなく
流れ出すコーラ、グラスのなかでカラカラと回り続けるサイコロ。
日常のありふれた光景を編集によって無限に反復させ、
非日常の世界を浮かび上がらせる映像作品は、国内外で高い
評価を受けています。

美術館における初めての個展となる今回の展覧会には、今年
2月から8月までのニューヨーク滞在中に撮影された10点の
ヴィデオ作品と、群馬において制作された10点のインストラクション
(言葉をもちいた作品)が出品されます。滝でサラダを作ったり、
買物袋にヘリウムガスを入れて飛ばしたり、といった行為の経過を、
最小限の編集によりそのままとらえたヴィデオ作品は、田中功起の
新たな展開を感じさせるものとなっています。

これらの作品は、壁や展示台が迷路のように建ち並ぶ展示室の
様々な場所に設置されます。ひとつの都市に見立てられた展示室を
徘徊しながら、作品との出会いをお楽しみいただければ幸いです。

最後になりましたが、本展の開催にあたり、多大なるご尽力をいただき
ました田中功起氏をはじめ、ご協賛いただきました株式会社資生堂、
ならびにご協力いただきました関係者の皆様に深く感謝申しあげます。

平成16年11月 群馬県立近代美術館
館長 中山公男

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☆☆☆KOKI TANAKA : SPECIAL EXHIBISION
"PLASTIC BAGS, BEER, CAVIAR TO PIGEONS, etc"
in THE MUSEUM OF MODERN ART, GUNMA 2004☆☆☆



●●●●○ポイント・オブ・レビュー

面白い企画でした。
田中功起氏は、なかなか遊びごころのあるアーティストです。

*空間設計について・・・

特別展示室の入り口を入ると、
うず高く積み上げられた、柱。ショーケース。パネル。机。椅子。卓球台。
などなど。

それらは、放置されているようで、
しかし周到に組み上げられた、古代の迷宮のようでもあり、
学園祭で、机や椅子だけで作られた、迷路やお化け屋敷を思わせる
悪戯な匂いも漂わせている。

色は、透明。白。カーキのような暖色系でまとめられている。
ぱっと見、無機質だが、それは暖かさを失っていない。

                ■ ■ ■

この、路地裏のような迷路のそこかしこに、
モニターや、プロジェクターが設置されており、
観覧者は、そこに映る、10の短編映像作品に「遭遇する。」

モニターの位置によっては、
モニターを座って観ている人を、
オブジェクトのような、机やらケースやらの隙間から眺められるポイントもあり、

この、見る=見られるという、複雑な眼差し(まなざし)の関係は、
カメラで撮ってる人にカメラを突きつけるような、
覗きをしてたら、盗撮犯人を見つけたような、
なんか不思議な感じ。

あるいは、さっき見かけた、挙動不審な(どっちが?)観覧者と、迷路の角で
はちあわせてドッキリ!とか。

                ■ ■ ■

そんな風に、展示室内をうろうろしていると、
振り返ったその壁に、意味ありげな「インストラクション(行為を示す言葉)」が
貼ってあったりして、例えば、

「10 水たまりに石けんを入れて泡立たせる」 や、

「6 財布の落ち方は無限にある」

などといった言葉の数々が、
「ええ?」とか、「どきっ」という、ざらついた違和感を抱かせたりして、
まるで点取占いや、言葉のロールシャッハ・テストを受けているよう。

そのうち、他のインストラクションを探してみたくなって、
もと来た道を引き返したり。

気がつくと田中氏のアートの世界に引き込まれているという巧妙な造りになっています。



*映像について・・・

ループする行為。

・空に浮かぶビニールの買物袋。
・サラダの滝流れ。
・伸びきって戻るメジャー。 
・フライパンでパンケーキ型に調理された
 トルティーヤは窓から無造作に投げ捨てられ、
・ビールはコップから溢れ、 
・かくて鳩はキャビアをついばむ。などなど…。 

よく考えると普通にあまりやらないことばかり。
行為の実験性や偶発性。結果そうなってしまったこと。
こうしたらこうなったこと。
それらを記録した短編の映像を眺めること。

それは、行為(:すること)について発見する行為。
それは、「行為そのもの」に気づく行為。
「行為」を探す行為。

                ■ ■ ■

日常の中に、無意識の中に埋もれている「何気(ない)行為」を、
迷路の中で映し出される「何気(ある)行為」の鏡によって見つけ出す行為。

子供の頃、水たまりに入って、泥だらけになりながら、
水たまりに入るとどうなるんだろう?水たまりに入るとは、どんなことだろう?
それは、水たまりに入って初めてわかった、そんな感じ。

「9 忘れたことをすべて思い出す」

遊びって、普段あんまりしないことをすることかもね。

                ■ ■ ■

田中氏によって生み出された、
この映像とインストラクション(掲示?啓示?おみくじ?)の
宝探しチックな芸術(アート)のビックリハウス、

そーいやこの空間の造り、どっかで見たことあるなあと思ったら、

思えばそれは、「ドン・キホーテ」な芸術空間(またはアートの圧縮陳列?)でした。
だけど放火はいけません。■

■展覧会情報

特別展示 田中功起「買物袋、ビール、鳩にキャビアほか」

場所:群馬県立近代美術館

期日:11月13日(土)-12月19日(日)

∞リンクの冒険∞

フジテレビ「テレビ美術館」(毎週日曜日5:30~5:45)バックナンバー


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