知り合いから「渋谷パルコでトークショーやるのでぜひ来てー」
とお誘いメール。
『モテキ』原作者の久保ミツロウさんが出られるということで
「久保さんて自画像はいつもヒゲ面だけど、実物はどんな女性なのかしらん」
と興味がわき、ちょっくらお邪魔しました。
天気がいいので自転車で向かったらば、
魔の「車道を横断させない地獄」にはまり、
(渋谷周辺の広め道路は、横断歩道のあるポイントが限られている)
大回りさせられているうちにトークショーはスタート。
着いたときは3人の自己紹介タイムが行われてました。
ぜえぜえ。
今回のスピーカーは、
ユトレヒトの江口宏志さん×お菓子研究家の福田里香さん×久保さん
の3人。
久保さんはですね、
ひらっとした森ガールっぽい服を着た、
思ったより朗らかで女性度の高い人でした。
が、トークの切れ味はシャープ。
登場時の自己紹介で
「わたし、トークショー処女なんです。
みなさんに私の処女を捧げます」
と満点のツカミです。
テーマは「マンガと上京」。
ここ最近で売れた3大少女漫画『ハチクロ』『のだめ』『NANA』は
実はすべて主人公が上京している…
という話でしたが、3人ともそのテーマにはあまり乗り切れず。
(なんでそのテーマにしたのかは謎)
印象に残った久保さんトークあれこれ。
「私のトークショーデビューは、ロフトプラスワンあたりかな~と思ってたんだけど、
うーん、相手に不足感が…と思ってたら、今回渋谷パルコさんからお誘いがあり、
これは処女を捨てる相手に不足なし、と」
「実家暮らしの作家には絶対に絶対に負けたくないと思っていました。
ハングリー精神が持ち味ですね、とよく言われるけど、
退路を絶って挑戦したほうが、おもしろいものが描けると思う」
「よしながふみさんの漫画は素晴らしいけど、自分を揺さぶられて嫌になる」
「吉田まゆみさんのアシスタントを長くしていたんだけど、
吉田さんは生粋の都会人で、なんか余裕があって、
田舎から出てきた私とは、もうポテンシャルが違うなあ、と痛感した」
「地方から上京してきた若者ばかり描いてきた。
反対に、金持ちを描いたことがない。描いたらバレてしまう、と思って。
でもこれは逃げですね」
「映画『童貞をプロデュース』に出てくる男の子が
野方に住んでるのを観て、
モテキのフジくんも野方在住にした。
けど、アシスタントに撮影しに行ってもらっただけで
私自身はまだ野方に足を踏み入れたことがない」
他に、某売れっ子作家さん(実名だった)とのプチロマンスの話や
貧乏若者ドキュメンタリーに出演してその中でマジ泣きした話や
九州人が東京人といかに相性がいいか、という話も。
トークショー相手の福田里香さんの漫画談義もおもしろかった。
「『ハチクロ』『のだめ』『NANA』は、
そのすべてが、いわゆる“勝ち負け”を書かずに終わった。
勝負という価値感から離れていることこそが少女漫画の真骨頂。
素晴らしいことだと思う」
「反対に、だからこそ『ガラスの仮面』は終われないのでは。
マヤさんとさんの勝負、という構図で始めてしまったために、
勝負の結果を描かないといけないですから」
久保さんは来年、少年マガジンで学園モノを始められるそうです。
「人と違うものを描かないといけない、とずっと思ってたんだけど、
やっと定番モノを描きたいと思えるようになった」
「少年誌から青年誌に上がって描いた作家が、
また少年誌に戻って描くのはあまりない例なんだけど、
チャレンジしてみたい」
よしながふみさんの名前がよく出てきましたね。
なにかのインタビューで、
かわかみじゅんこさんとかジョージ朝倉さんら
同世代の女性作家の描く女性像に影響を受けたと
久保さんが語っていましたが、
よしながさんといい、久保さんといい、
女性誌の繊細なエッセンスを青年誌に持ち込むやり方は
今後も増えていくのかもしれません。
(しかし、よしながさんは青年誌でも同性愛設定ママで
連載してるのでびっくりした。映画化までされてるし。
青年誌じゃないけど、やましたともこさんは設定変えてますね。
やましたさんのマンガは映像っぽいので、
なにかの原作になってもおかしくないかも)
もっともっと漫画を読みたいな~としみじみ思った一日でした。