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旅、文化、インテリア、温泉にまつわる日々の雑記。

ホテルオークラ東京に泊まって感じたこと1 〜建て替え工事について

2015年04月18日 | できごと

ホテルオークラ東京の本館建て替え工事が話題になってますね。
2015年8月末に閉館し、2019年春にリオープンするとか。
 

ホテルオークラ東京は、1960年代に建てられた、日本モダニズムを感じさせる建築で有名です。

 

去年に建て替えが発表され、しばらくは大きな話題にならなかったのですが、
ここを日本の定宿にしていた海外のデザイナーたちが声を挙げるようになってから、注目を集めはじめました。(日本らしい現象だなあ…;)
  

「なくならないで、私のオークラ!世界中から続々エールが。」
http://casabrutus.com/special/japanese-modern-architecture/my-memory-of-okura


「オークラの本館が取り壊されるのは悲劇」「みるみる失われつつあるモダニズムが、ここでは完璧に保たれているのに」と、建て替え工事に異議申し立てをする海外の有名デザイナーたち。
読んでみたら、想像以上にみんな熱くて、強いオークラ愛を感じますね…。
また、オークラが現存するモダニズム建築として、世界でも重要な存在なのだということがわかります。


特に、ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)は、インスタグラム上で
オークラの写真を集めるプロジェクトをスタートしています。
http://www.fashion-headline.com/article/2014/12/15/8857.html

 



もちろん私も、これら意見には大いに賛成なのだけど、
先日オークラ東京に泊まってみて(本館4階)、はじめてわかったことがありまして。



それは「設備」の問題。


たとえばトイレを使って洗浄のバーを下げたとき。
ジャーとは流れるものの、紙の一部が残っている。


たとえばお風呂で溜めた水を流すとき。
栓を抜いてベッドルームに戻ったものの、ンゴゴゴッと大きな音がするので戻ってバスタブを見てみたが、別段おかしなことはない。
どうやら、お風呂の排水にはこの音がデフォルトで付いてくるみたい。
夜遅い時間だったので、隣の人を起こしてしまうのではないかと再び栓をして、次の朝に改めて流すことに。


つまりは、配管やそれを動かす動力やらが、もうどうしようもないくらい古く、
「日本を代表する名門の」「洗練されたサービスを提供する」ホテルとしてはもう限界なのだろう、ということですね。


私は、クラシックホテルをこよなく愛する人間なので、
設備が古くて不便を感じても、まったく問題ないと思う、それどころか風情さえ感じるタイプだけれど、そうでないお客さんもたくさんいるだろうし、
なによりもオークラが自分自身を許せないと感じるのは、まあ仕方がない。それは理解できる。


また、古さを愛おしむクラシックホテルとして残すにしても、このホテルは規模が大きすぎるでしょうね。
数十部屋のプチホテルなら存続の可能性はあったかもしれないけれど、
このメガ規模で、さらにはこの立地で、このまま数十年営業し続けることは、資本原理的に難しいのでしょう。
 


(泊まったお部屋。昭和感満点の薄っぺらい浴衣に旅情を感じます) 


(窓枠のデザインも懐かしいです。年期を感じますね) 



で、問題は「どのようにリニューアルするのか」。


私のように、ある一定までは建て替えに理解を示すタイプであっても、
次にできるオークラが、つるっつるのテリッテリだったら本当に失望してしまう。
よくあるじゃないですか、和をテーマにしながらも芯をくっていない“なんちゃって和風”が…
また、外資ホテルが演出するキラキラした“モダン和風”。これからも距離を置いてほしい。
日本のホテルが「ちゃんと見とけや、これが和じゃい!」と見栄を張るような(関西弁ではないと思うが)
正統で、穏やかで、華美ではなく美しい、そんな空間を作ってほしいものです。


私の理想は、
「表面のクラシックなニッポンモダニズムは一旦引っぺがすけれど、
その下の設備面を最新に替えたところでまた上に乗っける」形なのだけど
(つまり現状のものを再利用)、
ホテルオークラ東京が発表したリリースによると、地上38階、地下6階の高層ビルになる、とのことで…
残念ながら、どうもそういった形ではなさそうだな〜。

こんなんなんだもん。


(ホテルオークラ東京の建て替え方針に関する正式文書PDF)
http://www.okura.com/files/topics/2569_ext_02_0.pdf


(施工する建築物についてもうちょっと詳しめの記事)
http://www.decn.co.jp/?p=12417 




ほのかに希望が持てるのは、リリースの中の、
「別館においては、これまでご愛顧いただいております現本館の一部施設を移設し、ホテル営業を継続します。」という箇所。
「現本館の一部施設」を別館に移す形で残すようだけど、
これは、日本古来の紋様をあしらった外装・内装・什器備品が含まれているでしょう。


(日本の紋様とホテルオークラ) 
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/special/50th_anniversary/japanese_patterns.html

 


もしかしたら、建て替え後の広大な敷地内には、新しい高層ビルホテルの横に、
今の本館と別館の素敵なところを凝縮した、小さくて上品なクラシックホテルが建っているのかもしれません。
 


オークラは、自身の本質的な価値を誰よりも理解しており、
この激化する21世紀のホテル競争の中で、その価値をなんとか残そうと策を巡らしている…
きっとそうでしょう。そうであることを切に望みます。 



次回も、オークラ東京について書きます。


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