goo blog サービス終了のお知らせ 

ハクビシンPaguma larvata の秋

2011年09月30日 | 日々のアブク
 昨日の午後,遠方にヤボ用があって久し振りに電車に乗って外出した。小田急線最寄り駅までの約3kmの道は,いつものようにバス代節約のため徒歩移動である。拙宅から秦野駅までの路程は扇状地地形の下り基調(標高差約50m)ゆえ,とくに重荷を背負っていたりせず,また適切なウォーキング・シューズを履いておれば,それこそスイスイと気持ちよく歩いてゆくことができる。昨日は陽射しもさほど強くない穏やかな日和で,道ゆく我に吹く風の心地よく,野外に体躯を晒して動き回るには まことに快適な季節になったのだなぁと実感した。

 長らくのあいだ懸案となっていたヤヤコシ事案を何とか片付けたのち帰宅の途につき,小田急線渋沢駅に降り立ったのは夜9時を少し過ぎた時刻だった。同駅から自宅まで約4kmの道のりは ほぼ平坦ないし若干の下り(標高差約15m)である。夜も遅いとはいえ別に急ぐこともない身であるからして,再び徒歩にて家へと向かった。

 それにしても,ひと頃ほどではないものの 町中の道路はいまだに街灯が消えているところが多く,全体に夜道はかなり暗くて足元は心許ない。別に郊外だとか農村地帯だとか丘陵地だとか山間部だとかを歩いているわけではなく,そこは住宅の密集した市街地の表通りであるというに,そんな状態だ。歩きながら何やら不安な気持ちになってくる。ふと,遙か昔の記憶がよみがえる。

 それは今から半世紀近くも前のこと。まだ高校生だった時分に,週末を利用して丹沢登山に出掛けることが何度かあった。当時は県東部・川崎市の市街地中心部のゴミゴミしたエリアに住まっており,自分が日々暮らしているそのような騒々しい生活圏を抜け出して県西部の鄙びた丹沢方面にまで行くというのは ちょっとした小旅行の気分だった。だいたい土曜日の夕方過ぎに自宅を出,電車を乗り継いで約2時間ほどで小田急線渋沢駅へと降り立った。国電川崎駅周辺の,それこそ朝から晩までひっきりなしに騒々しく猥雑なまでにキラビヤカな町の空気に日頃慣れ親しんでいる身にとって,丹沢山麓の秦野盆地を横切る私鉄沿線のローカルな小駅,そのノドカでツマシイたたずまいを目にすると,自分がまるで別世界に紛れ込んだかのよう,何やら田舎にやってきた都会のネズミであるかのように思われた。

 渋沢駅から大倉登山口までの道は,何分にも時間はあれども金はないといったオチコボレ&ビンボー高校生の身分であったがゆえ,バス代を浮かせるためにバス通りを1時間少々かけてスタスタ歩いた。駅の改札を出てから駅前の小さな商店街を抜け,小田急線の踏切を渡り,少し行くと国道246号(当時はまったくの田舎道路だった)を横断する。その先も道の両側には家々が立ち並んでいるのだが,周囲の様子は驚くほど真っ暗だった。家々はひっそりと闇に紛れ,道行く人の姿はなく,クルマもほとんど通らない。夜空には満天の星。知らない鳥が鳴き,ときおり何処かでイヌの遠吠えが聞こえたりもする。ああ,夜って暗いもんだなぁ,淋しいもんだなぁ,なんて,都会暮らしの高校生ネズミは地方都市の現実をシミジミと感じていたのである。。。

 はい,そんな時代もありました。んで,昔話は大概にして当市における日々の現実へと立ち返ると,昨今の状態はまさにその半世紀前に戻ったような感じなのだ。この三月に発生した東北大震災および東電福島原発事故がそのような事態をもたらしたのは周知のことであるが,それにしても唐突かつ極端な環境変化である。まったく盆暗政府ならびに木っ端役人どもは何を考えているのだろうか。電力危機だ!節電だ!省エネだ!というワケノワカランお題目のもと,アタフタと輪番停電(=無計画停電)なるものを実施して社会経済活動ならびに市民生活に対していたずらに大混乱をもたらし,その愚策をやがて翻すと,次には町の街路灯の一斉消灯ならびに店舗・商店等における省電力の徹底化ときた。それら一連の場当たり的施策を全面的に否定するものではないとしても,いかにも短絡的,一方的かつ理不尽な行政判断であることは明らかだろう。それは結果として,町の健全な環境を損ね,人々の生活リズムを損ね,何よりも暮らしの安全を損ねることになったのであるから。

 電力エネルギー需給に関する現状および将来的見通しに対して,限りなくオロカなる現政権(首をすげ替えたところでどうなるモンでもなかろう)が何~んにも考えていないことは,その氏素性からすれば自明のことである。それについては何ら期待するものはない。ここ何年かをじっと耐え忍ぶのみである。加えて,そんな悪政にさらに追い打ちをかけるように,我が地元神奈川県においては新しい知事クロイワ某というのが自然エネルギーに対する基本的な無知・無理解を背景に何やら声高に意味不明な発信を繰り返していたりする。いわゆる「カン・ソン幻想」に対するノーテンキな追従ぶり,あれは一体何なのだ。まことに気が滅入る存在である。こんな輩がこの先あと3年以上も県政のトップに立って「腹黒恵比寿」みたいなドヤ顔してアーダコーダと御託を並べ続けるのだ。県民全体が選んだ道であるとはいえ,おのがじし深く恥じ入らねばならないだろう。

 しかしながらさりながら,いつまでも嘆いてばかりいても始まらない。少なくともこの不幸な現状を少しでも打開するために,ここは各地元自治体の首長あたりが自ら積極的に裁量を発揮すべき時ではないのか。万難を排して,とにかく住民を守るのだ!という気概が求められているのではないか。実は当市における行政組織のなかには「くらし安心部・くらし安全課」などという,その名もハズカシゲな部課が存在しているのだ。当該部署に属する職員たちはいま職場内で何を考え,何を為しているのだろうか。いや,ウダウダ考えるまでもない。まずは,暗い夜道をくまなく歩き回って町の現状を十分に把握し,そのうえで自らのなすべき役割を自覚し,そして速やかに実行に移して欲しい。しかり,今まさに諸君ら一人一人が《渡辺勘治》(by松本幸四郎)になるべきなのだよ!

 話が思いっきりそれてしまったが,そんなわけで,夜道を自宅へと向かう私の背負うリュックの背面には点滅赤色LEDライトを括り付け,手にはしっかり小型懐中電灯を握って歩くのだ。いずれも自転車用備品である。まともに車歩道分離されていない道路を夜間歩行する際はこれくらいの装備で望まないとないと自らの身は守れない。とにかく歩行者に対する道路環境が悪すぎる。いや,ときにはクルマよりもむしろ無灯火の自転車の方が怖いこともある。

 あれは2年ほど前だったか,夜,市内某所の舗道をあるいているとき,自転車と接触したことがあった。かなり薄暗い場所で,舗道の幅は1.5m程度と狭く,先方の自転車は無灯火,歩行者たる当方も懐中電灯など持っていなかったため,直前までお互いの存在に気づかなかった。すれちがう間際,こちらはあわてて身体をかわそうとしたのだが,自転車のハンドルが当方の腕にガツンと当たった。アイタタタッ! 幸い打撲程度で済んだのだけれども,ぶつかった箇所は後に青アザとなり,そのアザは1ヶ月近く消えなかった。で,そのとき自転車に乗っていたのは女子高生で,無灯火,自転車通行禁止の狭い舗道走行,加えて両耳にイヤホンを装着しているという,ダメダメ三連発であった。これは明らかに過失割合10対0でしょう。なお接触の際,先方はヨロケテ軽く転倒し,そのあとうずくまって一方的にベソをかかれてしまった。別にこれといったケガはないように見えたが,やむを得ず被害者たる老人の方が加害者たる女子高生を宥め気遣うような状況におちいってしまった。泣きたいのはこっちの方だってのに!

 またまた話がそれたが,はい,そんな苦々しいエピソードも確かにありました。類似の事故は私自身ここ数年のあいだに他にも何度か被っており,ことほど左様に道路交通における災難というものはそんな風にして突然訪れるわけだ。男子家ヲ出ズレバ七人ノ敵アリ。常々十分に覚悟しておくべきである。ま,それはさておき。

 家の近くまで来たとき,私が歩く道路の前方を一匹のネコがゆっくりと横断しようとしていた。薄暗くてよくわからなかったが,シルエットから判断するとかなり大きなネコだ。クルマも気にせず悠然と渡っている。と,道のまんなかでそのネコは一瞬歩みを止め,やおらこちらに顔を向けた。ありゃ,なんとそれはハクビシンPaguma larvataであった。まったく物怖じする様子もなく,私の方をキッと見据えたその眼差しの鋭さ,実に立派な顔立ちをしていた。ペットとも野良猫とも違う,これは紛れもない野生動物デハナイカ!と,こちらが瞬時たじろいだ程だった。当地にも本種の生息情報があることは前々から承知してはいたが,私自身,市内で見たのは初めてのことだ。それも自宅のすぐ近くで出会うなんて,何やら嬉し頼もしい感じすら覚えたのである。

 参考までに確認場所ならびに確認状況を記載しておこう。彼我の遭遇位置は世界測地系で北緯39°23'13",東経139°12'38",の場所である。さらに具体的に示せば,そのハクビシンは多田プレス工業(株)の敷地内から出てきて,市道○○号線(番号不明)を横切り,道路反対側のスタンレー電気(株)秦野事業所の敷地内へと侵入していった。彼が入ってしまったあとでスタンレーの柵越しに伸びをして中を覗きこんでみると,広々とした芝地のうえにちゃっかり座ってノンビリとくつろいでいた。やっぱ大手企業の広々した敷地内の方が中小企業の狭苦しいソレに比べ居心地がよいのか知らん。今夜は何処で一夜を過ごすのだろうか。

 最後に一言余計を申し添えておけば,スタンレー電気(株)関係者におかれては,工場建屋内の変なところにハクビシンに潜り込まれないよう,ましてやそこに居座って繁殖などされないように,あらかじめ「害獣」駆除対策を十分に講じておいた方がよかろうと存じます。ネズミ対策をおこなっているからそれで良し,などといって済ませるわけにはまいりませんでしょう。精密機器製造メーカーにとって,対外異物混入に由来する商品品質の瑕疵ないし劣化の発生は,品質管理手法の不備,スキルの不徹底,さらにはQCレベルそのものを疑われることになり,それはひいては御社自体の技術力,格付評価といった問題,オオゲサに言えば会社存亡の危機にまで係わってくることでしょうから。 まぁ,恐らく既に対策済みのこととは思いますけどネ。

 そのような次第で,この秋になって私が家の近所で出会ったケモノ(中・大型哺乳類)としては,去る9月22日に浅間山林道でサルの群れ(それは10数頭の規模であった)に遭遇したのに次いで,このハクビシンが2例目ということになりました(シカとの出会いはあまりに多すぎるので,いちいちカウントしてはいられない)。 さてと,そろそろクマの便りが聞かれはじめてもいい頃だが。。。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ランボーの秋,マルセル・ア... | トップ | ある「自転車人」との対話 »
最新の画像もっと見る

日々のアブク」カテゴリの最新記事