アルツハイマーAlzheimer的な生き方について

　日頃めったに見ないテレビをたまに観たりすると，意外なモノに出会って驚くことがある。昨晩，テレビ朝日系列のニュース・バラエティー番組byフルタチイチローで《アルツハイマー病》の特集をやっていた。まんざら他人事でもないのでしばしボンヤリ眺めていたら，　な，な，なんと！　私の知った人が突如TV画面に現れた。それは御年60代半ばの保険屋さんで，最初に会ったのは私がまだ大和市に住んでいた頃だから，かれこれ20年近くもの長い付き合いになるだろうか。とは申しても，当の御本人は以前ウチで加入していた損害保険の代理店の社長兼営業マンだったのであり，年に一度，冬の季節になると決まって拙宅を訪れ，つつがなく契約更新手続きを済ませたのち，お互い当たり障りのない世間話など少しばかり交わして，ではまた一年間ヨロシクと言ってササッと退去する，といった程度のオツキアイに過ぎなかった。いかにもビジネスライクで如才ない保険屋さんという印象だった。ただ，彼にとって不幸なことには，近年の我が家における財政危機の影響を受けて当該加入保険も「仕分け」の対象となり，不本意ながら二年ほど前にキッパリ解約してしまったのである。以来，そのオジイサンとはお会いしていない。契約の切れ目が縁の切れ目，という訳だったか。

　それが昨晩のフルタチ・バラエティーでの意外な再会である。そうですか。アルツハイマー予備軍だったのですか。TVでみる限りでは大分老けたように見受けられた。もっとも誰だって年経れば老いてゆくのであって，アミロイド蛋白だとかPIB-PET検査だとか，現代医学の最先端分野に関しては当方チンプンカンプンでありますが，彼は彼なりに頑張って刻苦勉励の日々，御老体に鞭打って病気と戦っているのだなぁ，と恐れ入った次第である。そして今回のように全国ネットに敢えて自らを晒したからには，そのことを生きる励みとして今後もますます頑張ってゆかねばならないのだろうなぁ，と，ヒトゴトながら御身を案じてしまった。

　アルツハイマー病（老年認知症）とは，要するにヒトの脳細胞の老化現象の一形態に過ぎないわけだろう。ワタクシなどからすれば　Alzheimer?　C'est rien du tout!　なんて感じで，全然オッケーである。だってそうでしょう。例えば交通事故による突然の死，殺人事件による唐突な死，自然災害による不慮の死，そういったメカニカル・シャットダウン，まことに慚愧に堪えない無念の死のことを思えば，アルツハイマー病だとか悪性新生物だとかによる緩慢で悠長な死というものは生命の連鎖にとってまさに模範的で理想的なものではなかろうか　（若年性アルツハイマーの場合は少々具合悪いけれども）。　　ヒトの生と死，生命の発生と消滅，その終焉をじっくり味わうことができるなんて，人生冥利につきるとはこのことだ！　とかなんとか他人事のように言いながら，私は今　ジャック・ブレルJacques Brelの《最後の晩餐le dernier repas》のことなどを思っているのである。　ああ，今すぐにでも丘の上まで駆け上りたい。それも自転車に乗って！