初めまして、黒蜜アイスです。コメントではちょこちょこ顔を出してますが、担当では初めましてです。探りさぐりですがよろしくお願いします。
今回は、先週のゼミで発表したレジュメの一部を整理して報告します。
『聊斎志異』は清初の志怪小説で、著者蒲松齢が山東省を拠点として話を集めたことから、山東省の民俗と関連のあるものが多くあります。今回取り上げたのは、巻十二「鴞鳥」という話で、要約すると、
「山東省の楊知事が、兵糧運搬用として地方の牛馬・驢馬を没収した。その際に、百頭以上の馬を取り上げられたという商人の訴えを受けて、三人の知事が楊の屋敷を訪れる。三人の追及をかわして楊は彼らを酒席に誘い、互いに歌を歌っていたが、突然若者が現われて「貪官、皮を剥ぐ」と歌った。怒った楊が下僕に命じて若者を捉えさせようとしたが、若者はフクロウに変わって逃げてしまう。フクロウは庭の木にとまると、部屋を顧みて声をたてて笑った。」
というものです。
これに対して松齢自身は、「ふくろうが来ると、人はその笑いを最もいむし、児女は不祥としてこれに唾する」と注を付しています。
そこで山東省の民俗を調べてみると、梟は死を予告する鳥とされています。もし家の上空で梟が鳴いたりすると、その家では誰かが死ぬのではないかと考え、特に家の中庭で梟が笑うのを最も忌むのだそうです。つまり、「鴞鳥」での楊知事は最悪の凶兆に当たってしまったのです。ただ、『志異』では後日談は語られず、実際楊知事がどんな凶事に当たったのかはわかりません。
さて、ここで“鴞鳥”と書かれているフクロウについて少し調べてみると、福を呼ぶなどと言われる日本とは異なり、中国では完全に悪鳥扱いです。特にその鳴き声を忌むケースが多く、『詩経・陳風』でも「此鴞聲悪」とされています。
中国北東部という場所と、特徴的な鳴き声というポイントから、フクロウの種類を絞ってみると、どうやらモリフクロウ(Eurasian Tawny Owl)、若しくはコミミズク(Short-eared Owl)ではないかと思われます。ただ、「聲悪」という表現が曖昧で、他に身体的な特徴が言及されていないために、特定はできませんでした。
※山東省の民俗については『中国山東民俗誌』を参照。
今後もこういった方向性で、志怪小説と民俗の関連を考えていきたいと思っているので、地方の民俗に関する情報の集め方、登場する動植物の特定の仕方など、ご指導いただければ嬉しいです。
この調子で一篇ずつ、もたもた載せていく予定です。瞬発力はないので、気長に見てやってください。
(文責)黒蜜アイス
今回は、先週のゼミで発表したレジュメの一部を整理して報告します。
『聊斎志異』は清初の志怪小説で、著者蒲松齢が山東省を拠点として話を集めたことから、山東省の民俗と関連のあるものが多くあります。今回取り上げたのは、巻十二「鴞鳥」という話で、要約すると、
「山東省の楊知事が、兵糧運搬用として地方の牛馬・驢馬を没収した。その際に、百頭以上の馬を取り上げられたという商人の訴えを受けて、三人の知事が楊の屋敷を訪れる。三人の追及をかわして楊は彼らを酒席に誘い、互いに歌を歌っていたが、突然若者が現われて「貪官、皮を剥ぐ」と歌った。怒った楊が下僕に命じて若者を捉えさせようとしたが、若者はフクロウに変わって逃げてしまう。フクロウは庭の木にとまると、部屋を顧みて声をたてて笑った。」
というものです。
これに対して松齢自身は、「ふくろうが来ると、人はその笑いを最もいむし、児女は不祥としてこれに唾する」と注を付しています。
そこで山東省の民俗を調べてみると、梟は死を予告する鳥とされています。もし家の上空で梟が鳴いたりすると、その家では誰かが死ぬのではないかと考え、特に家の中庭で梟が笑うのを最も忌むのだそうです。つまり、「鴞鳥」での楊知事は最悪の凶兆に当たってしまったのです。ただ、『志異』では後日談は語られず、実際楊知事がどんな凶事に当たったのかはわかりません。
さて、ここで“鴞鳥”と書かれているフクロウについて少し調べてみると、福を呼ぶなどと言われる日本とは異なり、中国では完全に悪鳥扱いです。特にその鳴き声を忌むケースが多く、『詩経・陳風』でも「此鴞聲悪」とされています。
中国北東部という場所と、特徴的な鳴き声というポイントから、フクロウの種類を絞ってみると、どうやらモリフクロウ(Eurasian Tawny Owl)、若しくはコミミズク(Short-eared Owl)ではないかと思われます。ただ、「聲悪」という表現が曖昧で、他に身体的な特徴が言及されていないために、特定はできませんでした。
※山東省の民俗については『中国山東民俗誌』を参照。
今後もこういった方向性で、志怪小説と民俗の関連を考えていきたいと思っているので、地方の民俗に関する情報の集め方、登場する動植物の特定の仕方など、ご指導いただければ嬉しいです。
この調子で一篇ずつ、もたもた載せていく予定です。瞬発力はないので、気長に見てやってください。
(文責)黒蜜アイス
聊斎志異はいろいろな読み方ができます。私の知人は、まだ発表していませんが、数字にこだわって読んでみようとしていました。怪奇な生き物などをあらわすときに、どんな数字を用いて表現されるのか、そんな読み方です。これはもう発表されることのないアイディアですので、黒蜜アイスさんがばくっても可です。
十五年ほど前に立教大学院を出た学生は、志怪小説からキツネの話をすべて取り上げ、キツネにまつわる地名を地図に落として、物語が伝播するルートを検討していました。
聊斎志異は「神話」ではありませんが、漢族の宇宙観を探る手がかりを与えてくれるはず。物語が膨大にあること、その採録者と再構成者の素性が、あるていど明らかになること、山東という空間で生まれた物語群であることなど、歴史としても扱いやすさを持つ素材だと思います。
発表で取り上げられた「音」にこだわって読んでみるのもいいかもしれませんね。
とにもかくにも、方向性が見えてきたようで、フラフラ・オロオロして暗いトンネルに迷い込んでいる私からみたら非常に羨ましいかぎりでございます。
アイスクリームですから、夏の暑さに溶けないように気をつけてお勉強してください。
鳥は多くの文化のなかで、天の意志、神の意図を伝えるものとして登場しています。『詩経』にも、鳥が多く出てきますね。それが、時代が下るとともに、中国ではあまり鳥が活躍していないようにも思われます。
いったいなぜでしょう。
『トラが語る中国史』の姉妹版として、
『鳥が歌う中国史』もいいかも知れませんよ。
それは、基本的には日本における夢信仰をテーマにしたものですが、中国のことにも若干触れていました。以下、当時のノートを簡単にまとめてみます。
凶夢と思われる内容を吉兆として読み替える夢占いがあった。「夢」という字の意味の中心は「夕」にあり、「夕」は半月を模したもので日暮れを意味する。一方、この字の読み方は「瞢」、即ち「ぼう」となる。また、同時に「めが見えない」という意味も持っていた。総体的に、視界が暗くボーっとしてよく見えない、という状態、現実実界の事物ほどハッキリしていない状態を意味する。古代、周王朝には既に占夢官という夢占いを職掌とする役人がいた。古代中国において、夢占いは天帝や祖先からのお告げの場であり、国政を左右するほどの意義を有していた。占夢官を中心に、悪夢の贈や吉夢の献という宮廷儀礼も執り行われていた。しかし、時代が進むにつれ、未来を知る手段として占夢は易占などに取ってかわっていった。そして、脱魂の夢観は主として道教思想の中で展開するようになった。道教思想そのものにおいて現実を相対化するために夢が用いられたが異境へ神遊するモチーフが六朝時代に志怪を生み出した。こうした中国の夢信仰の影響を受けつつ王朝期に日本の夢信仰が花開いていった。
以上、凄く簡単にまとめるとこんな感じの内容です。志怪というのがもともとは夢信仰と関係があるということのようです。
もし参考になればと思い、勝手ながらコメントさせてもらいました。見当違いかもしれないけれど・・・。
これを教えてくださったのは、河東仁という先生で、確か講義をまとめたのが「日本の夢信仰」という本になったと思います。その本が評価され、サントリー文学賞か芸術賞か、そのような名前の名誉ある賞を受賞されておりました。
順番にお返事させていただきます。
うずまきさま。数字に着目するという方法、とても面白そうです。中国でも日本でも、数字は吉凶判断と関係してますし、何らかの意味づけがあると思いますので。古代神話でも、身体器官の数的な異常を特徴とする妖怪や神様も多かったですし。パクり許可も頂けましたので、ちょっと統計をとってみたいと思います。
それから『鳥が歌う中国史』、いいですね♪冒頭は「私は鳥である。フクロウである」で。みんなでひとつずつ書いて、シリーズ化します?
砂かぶりさま。お久しぶりです。去年は本当に色々とありがとうございました。お陰さまで、今年もこうして上田ゼミに参加することができました。
フクロウの声についてですが、私も、笑うという表現はナゾです。あの独特の鳴き声が笑っているように聞こえたのかなぁ、などと勝手な解釈をしていましたが…。私には声よりもフクロウの顔の方が、人面に見えて怖いです。あの顔で振り返られたら…;;
トンファンさま。ご心配頂いたとおり、溶けております。気温30℃越えの日は、大いにぐったりです。
私は、フクロウが嫌われる理由を、人間と接触する頻度と関係あるのじゃないかと思っているのですが。特に具体的な被害が書いてあるものはないようなので…。フクロウ被害についてご存知の方いらっしゃいますか???生息域の問題と併せて要チェックですね。あと、夢占の本も興味津々です。図書館で漁ってみます。
遅い上に大雑把な返事で申し訳ないです。懲りずにコメント送ってやって下さいませ。
Sorry Rocker back with Braves
http://www.rollingstone.com/reviews/movie/_/id/5947383
龠龠龠
Sorry Rocker back with Braves
http://www.rollingstone.com/reviews/movie/_/id/5947383
龠龠龠
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