東ユーラシア研究会

立教大学・上田信ゼミの部屋。東ユーラシアの歴史を語り合います*初めての方は、カテゴリー「このブログについて」をクリック。

読書の思い出

2005-06-27 17:31:23 | 本に関して
トンファンさんの先にエントリーしている記事「やめられない、とまらない……」は、なかなか切実なものがありますね。本は家を壊します。私の知人は、下宿の床を本の重さで抜いてしまいました。別の知人は、ダンボールに入れた本を運ぼうとして、ギックリ腰になりました。私の母は、その父親が蔵書家、結婚した夫が本好き、そして息子が本を買わなければならない職業ということで、一生、自分が読みもしない本と格闘する人生だったわけで、しばしばその運命を嘆いています。
私の読書歴は、子どものときで終わったようにも思われます。父が読書家だったため、自分で本を選ぶよりも先に、面白い本を見つけてくれました。そのため、選書眼が養われなかったのでしょう。
子どものころには児童文学をいろいろ読みましたが、肌に合った作品は、結局、すべてイギリス人が書いたものでした。
なかでも今の私の知性を形作っているものは、『ナルニア国物語』シリーズ、『ドリトル先生』シリーズ、『ツバメ号とアマゾン号』シリーズです。『ナ』は私が歴史に興味を持つようになったきっかけを与えたシリーズです。特に、シリーズ第1巻の『ライオンの魔女』で、雪の森の中に立つガスの街灯がなぜそこにあるのか、そのなぞが『魔術師のおい』で解き明かされたときの衝撃は、いまでも忘れられません。キリスト教の歴史観に基づく物語で、そのガス灯は、聖地イェルサレムのイメージなのでしょう。これが契機となり、時間の層を貫く場所、という問題に眼を開かされました。私が中国史を研究していても、常に村落や都市、森、海、港といった場所にこだわるのも、その起点は『ナ』シリーズにあります。
『ド』シリーズは、回顧的に見ると、『トラが語る中国史』の原点となっています。
『ツ』シリーズは、私のフィールドワークへのあこがれの原点です。このシリーズで、テントを張ったり野宿をしたり、冒険をしたりということに憧れを持ち、大学に入ったときに山登りのサークルに入った動機につながりました。山歩きが嵩じて、中国でのフィールドワークに発展していきました。
いま思うと、小学校のときに読んでいた本の範囲から、いまも一歩も出ていないようですね。
その後にもいろいろと本を読みましたが、これらのシリーズで味わった感動をもう一度、といった感じで探していたようで、それは感動した本もありましたが、子どものころのようなときめきを覚えることはありませんでした。
それならば自分でそんな本を書いてみよう、と、これまでも文章を連ねてきましたが、やはり目的には到達できませんね……。
新鮮な感動をもちながら本を読めるトンファンさんは、私にはとても輝いて見えます。
これからも、本の紹介をよろしく。

うずまき


両班とは?

2005-06-24 21:55:10 | ユーラシアの西と東と
上田ゼミ個別発表で明、清代の朝鮮半島について考察……ということで、両班について取り組みました。今回はここから両班の定義について抜粋したいと思います。
そもそも両班とは何だろうか。
『民衆エッセンス韓日辞典』(安田吉実・孫洛範共編、ソウル・民衆書林刊、1973年)に依ると、
①(身分)両班
②東班(文官の班列)と西班(武官の班列)
③礼儀正しく善良な人
④婦人が第三者に対して自分の夫を指して言う語
……とあります。①・②は歴史用語、③・④は普通名詞化しています。今回は①および②の意味で取り扱います。つまり、〈社会階層としての両班〉と〈官僚としての両班〉です。そして、この二つは完全に重複するわけではありません。以下にみていきます。
*官僚としての両班
両班という言葉の本来の意味は、朝廷で儀式などが行われる際に、そこに参席しうる現職の官僚たちを総称するものであった。高麗時代・李朝を通じて、国王は(中国歴代王朝の皇帝に倣って)南を向いて儀式に臨み、国王に向かって右に文官=東班、左に武官=西班……と並ぶ習わしがあった。ここから両班という名称がうまれた。両班の「班」とは列の意味である。
*社会階層としての両班
上記①の意味での両班というものを定義することがきわめて困難である。何故ならば両班は、法制的な手続きを通じて制定された階層ではなく、社会慣習を通じて形成された階層であり、したがって両班と非両班との基準点がごく相対的であり、主観的なものであった。しかし、きわめて明確な基準によって画定される階層でもあったというのが注意点。
※文章がだいぶ長くなってしまったので、社会階層としての両班についての詳細は次回に繰り越させていただきます。

参考
高麗時代(918~1392年)←中国は宋、元代。李朝(李氏朝鮮・1392~1910年)←明、清代。
(文責 ホマチ)

エジプトだけど、中国・・・

2005-06-24 21:51:57 | エジプトについて
 今回は、先日ゼミで発表を行ったので、その内容について簡単に
紹介したいと思います。なので、『エジプトだけど、中国・・・』なわけです。

テーマ:明代における宦官専権の過程(主に、エリート宦官の登場)

N.B:テーマははっきりと未だ決まっておりませんが、明代宦官に研究テーマを
   設けようかと思っています。


明代宦官の大きな特徴は、強大な君主独裁体制化に常に置かれていたこと、
宦官職能機構が合法的であり制度化されていたこと、にまとめられると思われる。
ただし、皇帝の側に侍して、寄生従属していたのは明代に限ったことではなく、
宦官が登場した当初からのことである。しかし、明代は若干、その状況が他王朝と
異なる。
 例えば、同じく宦官禍が酷かった漢・唐時代の皇帝は宦官に頼らざるを得ない、宦官の
擁護を必要とした状況に置かれていた。外戚勢力や藩鎮勢力が皇帝に脅威を与えていたからである。
しかし、明代は創建と同時に、太祖洪武帝が強固な君主独裁体制を築いた。それにより、皇帝に
脅威を与える勢力は完全に一掃されたのである。よって、宦官も専制皇権の下から脱することは出来なかった。
彼等の勢力の縮小も拡大も、全て皇帝の在り様次第であったと言える。
『人主以一身統御天下』は、よくこのことを表しているのではないだろうか。
 もう一つ、明代における宦官の特徴として、エリート宦官が登場したことがあげられる。つまり、内閣大學士並みの知識を得た、学識ある宦官の登場である。ただし、洪武帝時代は、『内臣不許読書識字』を定めていたが、
宦官二十四衙門筆頭衙門司礼監の本来の役目を見ると、必然的に高い学識・品位・礼法を兼ね備えていることが任務の前提条件となってくることがわかる。彼等の役目が、宮中の儀礼全般の運営であったからである。皇帝が行う儀礼とは、
宮廷の秩序というよりも中国社会全体の秩序を表すものである。絶対に規範に反してはならず、それ故、そのような儀礼を取り仕切る司礼監太監の地位が高くなることは明らかであろう。
 宣宗宣徳帝の時、宦官学校として内書堂が設立される。ここで得た知識が、やがて批紅大権を行使する際に非常に
大きく影響し、この内書堂出身であることが結局は宦官世界で出世する必須条件であり、政界で躍進する条件となったと考える。
 しかし、明代宦官が暗躍したのは、宦官だけに原因があるのではなく、おおもとを辿れば洪武帝が宰相制度までも廃止し
全政治職務を皇帝1人で行おうとしたのに禍根があるのではないだろうか。皇帝1人で全職務をこなすのは、間違いなく
無理な話である。しかし、猜疑心が強すぎるために臣家に任せることは出来ない。そこで、常に側にいて日夜生活を共にし
気心もしれた宦官を頼ることになる。そこが、明代において宦官専権にいたった大きなポイントと考える。つまり、君主独裁
政治体制を置いたこと、と皇帝と宦官の距離間の問題ではないだろうか。
 宦官に関する記述は、常に悪の存在として書かれているが、このように見てみると一概にもそうは言えないことがよく解ると思う。
特に明代皇帝は、猜疑心が強く残虐な洪武帝に始まり、それ以降も猜疑心が強い上に淫楽や道楽であったりと、一筋縄ではいかない
皇帝の素質があるのかと疑わざるを得ない者が続いたことも併せて考察するべきだと思う。



N.B:授業で配布したネットからの資料ですが、http://www.white-collar.net/
   という中国のサイトでしたので、ここで紹介しておきます。


というような感じの発表をさせていただきました。全然、まとまっていなくてお粗末な発表でした。
課題だらけです。漢文も一生懸命やらないとなりません。夏休み明けには、どうにかなっているように
するつもりです。今度、資料の整理の仕方を実物と一緒にもう少しレクチャーしていただけたらありがたいです。

 これを呼んだ鄭得さん、もしアドバイスやご指摘がございましたら是非お聞かせください。


(文責:トンファン)

やめられない、とまらない・・・

2005-06-23 22:30:54 | 本に関して
本当のところ、やらなければならない学生としての本業が山のようにあるし、
ただでさえ脳みそがたりないから人より勉強しなければならにのに、本が・・・。
そうです、読みたい本が私を誘惑し、そして自制心が欠如している私は、その
その魔の手にまんまと導かれてしまうのです。昔は、自制心がありすぎ、とまで
言われたのに、最近は「じ」の字もありゃしない有り様。情けない・・・。
弁解かもしれませんが、全く勉強しないで本ばかり読んでいるわけではないですので。
勉強の合間に読書タイムを設けたり、勉強後の寝る前に読書したり、電車の中
で読んだりしています。多分、勉強の合間と寝る前の読書タイムをなくすと、もっと長く
勉強できる気がするけれど・・・。
 こないだは、もう本を買うのはしばらくやめなさい、と人生初の言葉を親から言われました。
確かに、本箱をこないだ追加で買ったばかりなのに、もう入りきらなくなっているし、行き場を失った
本たちはベッドの上に居座っている状態だし・・・。でもまた買っちゃいました。ごめんなさい、
お母さん。

 最近買ったのは↓
 
①諸田玲子『髭麻呂』 ②富樫倫太郎『妖説 源氏物語』 
③小暮正夫『チョコレートのたねあげます』
④石井まゆみ『キャリアこぎつねきんのもり 2』 ⑤畠中恵『しゃばけ』『ねこのばば』

③は昔大好きだった絵本で、④はマンガ、
②⑤は昨日買ったばかりで①はおととい買って一日で読破。

いやぁ、①は久々のヒットでした。彼女の本は前々から気になっていたけれど、
やっぱりよかったです。
 舞台は平安末期。主人公は検非違使庁の通称、髭麻呂。物凄い怖がりなのに、
検非違使を勤めている。世間では蹴速丸という、盗賊が出没し悪事を働いていた。
そんな中、次々と殺人事件がおきて・・・・。
って感じのお話。話の展開の運び方がとてもテンポがよく、読む者をグイグイと引き込んでいき、
展開に無理はないし無駄もない。登場人物の描写も、個性が際立ち、かといって当時の社会状況から
逸れているわけでもない。文字が映像となって、頭の中に浮かんでくるというのがよく解るのではないかと思わせる
作品です。
 もし本屋で見かけたら、手にしてみてください。多分、ハズレなしの作品ではないかと。

さぁ、今宵は誘惑に負けずに過ごせるでしょうか。

皆さんの好きな作家や作品があれば、是非教えてください。


(文責:トンファン)

“豈有此理”第4回

2005-06-16 23:51:08 | 天津通信
“豈有此理”第4回

 今回は、中国のスポーツ事情について述べてみたい。とはいえあまり詳しいわけではなく、中国のスポーツ事情に明るい別のものを読んでもらったほうがいいとは思うが、ひとりのスポーツファンとして、感じたことを書いてみることにする。

 前回、テレビ放送について触れた折、スポーツ専門チャンネルがあると書いたが、寮で見られるテレビでは、CCTV5(国営放送)の他、天津電視台の5チャンネル(TJ5)がそれに当たる。主に放送されるのが、サッカー・バレーボール・バスケットボール・バドミントン・卓球・テニスなどで、世界レベルの大きな大会や国際大会があるとたいてい放送があると言っていいだろう(テニスの人気がどの程度なのかは分からないが、少しずつ競技人口は増えているらしい。しかし、昨年のチャイナオープンでは、決勝戦の日でも満員にならず、男子ツアーのお偉いサンがもっとアピールしろ、みたいなコメントをしていた)。

 来中当初に辟易したのは、CCTV5が中国人選手がアテネオリンピックで金メダルを取った場面を毎晩繰り返し放送していたことである。だいたい春節の前ぐらいまで続いただろうか。それが終わると、今度は2008年の北京オリンピックに向けたプロパガンダ番組が始まり(週1回程度か)、会場準備がどうとか、競技の強化がどう進められているか、あるいはオリンピックの歴史などが放送されている。アトランタオリンピックあたりから、私はオリンピック否定派寄りな意見を持っているので、どちらかというと見ていて何とも言えない感情を覚えてしまう(選手に罪はない?が、肥大して競技の面白さよりも興行性が優先される現状を訝しく思っている)。

◆中国でサッカー見るなら天津?
 サッカーは、主に“本場”のリーグ戦を中継していて、CCTV5とTJ5を合わせるとイギリス・スペイン・ドイツ・イタリアのトップリーグが見られ、2005年6月半ば現在では、ワールドユースやコンフェデレーションズカップが生放送されている。さらに、ワールドカップ予選やヨーロッパのチャンピオンズリーグ、南米のリベルタドーレス杯(いずれも各国リーグ戦上位数チームのみが争う大会)も放送され、注目度はかなり高いようだ。しかし、理由は分からないが、CCTV5は国内リーグをほとんど放送せずにドイツやイタリアのリーグ戦を土日の夜に中継し、毎週月曜夜には「天下足球」という世界のサッカーを特集した番組があったりする。
 
 国内リーグは2部までがプロリーグで、1部は今年14チームが参加している。3月後半に開幕し、11月までというスケジュールで1シーズンを進めているようだ。天津にも1部リーグのチームがあり、TJ5が毎試合生中継している。昨年(2004年)に来中した当初、天津は12チーム中の最下位だったが、10月のワールドカップアジア予選のために中断した後、怒濤の快進撃を見せ、一時は5位まで上がるほどの変わり身を見せていた(最終的には6位)。今シーズンは開幕戦で大勝した後、まずまずの試合を見せ現在は6位というポジションである。毎回失点するのを何とかすれば(完封試合が10試合中1試合しかない)もう少し上に行けるだろうが…。攻撃面では于根偉という代表で背番号10を背負っていた選手がおり(今は外れているがそのあたりは後述)、かなり得点力がある。彼が累積警告で出場停止になった時、中国のレアル・マドリー(と新聞の見出しで見た、誰が言い出したんだろう?)山東にコテンパンにされた。

 全くの余談だが、私はスポーツファンを自認しているものの、世界のサッカーをまともに見るようになったのは大学に入ってからである。日本の地上波ではほとんど放送されないため、中田英寿らがイタリアに進出後、たまに彼らのチームの試合を見ていた程度だった。天津に来てヨーロッパ各国のリーグ戦を見て、私はかなりイングランドのプレミアリーグがお気に入りとなっている。各国のトップチームはレベル差はないと思う(みんな多国籍軍で各国の代表選手のかたまり)が、守備的でせこさ満点(すぐ倒れて笛が鳴る)で中盤を飛ばしがちのイタリアが一番つまらないように感じる。その点、プレミアリーグはあまり笛が鳴らず目まぐるしく展開が変わり、下位チームでもあまり守備的という感じはしない(同様の傾向にあるのがスペインで、この2つのリーグは比較的点が多く入るように思う)。0対0の引き分けをスコットランド人の友人が“Balling Game(ボールが転がっていただけ、という意味か?)”と言っていたように、やはり点を取ってこそという意識が強いようである。イタリアは代表チームからして1対0で勝つことが基本のようになっていて、その辺の意識差が上の方で勝てない理由かもしれない。チャンピオンズリーグの準決勝で、結果はACミラン(イタリア)が勝ったが、私は相手のPSVアイントホーフェン(オランダ)が決勝に進む価値のあるチームだと感じた。もっとも、決勝戦(イングランドのリバプールが優勝)はものすごい試合だったが。

◆人気のあるスポーツ
 バスケットボールはアメリカのNBAが見られ、2005年6月半ば現在はNBAのプレーオフ・ファイナルが生中継されている。特に、ヒューストン・ロケッツに姚明という中国人選手のセンタープレイヤーがいることもあって注目されているものと思うが、中国の国内リーグや大学リーグもCCTV5が中継しており、一過性のブームということはなさそうである。南開大学内のコートでプレーしている学生?も結構多い。
 
 バレーボールは女子ばかりが中継され、国内リーグ中継はもちろん、国際大会(先日日本が4位に入ったスイス国際など)もきちんと生中継。幸か不幸か日本代表の試合も流してくれていた。日本バレーボールの凋落がいわれて久しいが、こちらで改めて見ると、日本の女子選手は完全に体格負けしている。身長だけでなく、単純に線が細い選手ばかりに見えた。私の目が中国の国内リーグを見ることで慣れたのか、日本で見ていた時にはあまり感じなかった体格差が明らかだった。かつての日本バレーボールは、体格をテクニックやプレーの正確さなどで補ってきたが、各国がそれを真似るようになるともはやどうしようもない、というところか(批判はあると思うが、あくまで私の見方ということで勘弁して欲しい)。

 意外と人気があるなあ、と思うのがビリヤードで、国際大会がかなり放送され、いつぞやはCCTV5がチャイナオープン(18歳の中国人選手が決勝戦を延長の結果制する場面)をきっちり生中継し、F1放送が延長されたことがあった(F1ファンの私は、じりじりしながら終わるのを待っていた)。街中でもかなりビリヤード場は多いようで、あちこちに“台球”の看板を見かける。私はビリヤードをしたことはないし、細かいルールもよくわからないのであまり興味が湧かないが、国際大会を放送している、というのは日本では考えられないことだ。

 街を歩いていると、道端で座り込んで何かしている人たちをあちこちで見かける。じっくりとのぞいたことはないが、たいていはトランプを使った博打(コインを積んでいるので一発で分かる)、麻雀、将棋である。中国では、麻雀や将棋、囲碁もスポーツに分類され、将棋や囲碁の対局がCCTV5で中継されたりしている。また、北京オリンピックの公開競技に麻雀を入れるように本気で運動しているらしい。
 他に街でよく見るのは、卓球台やバスケットのゴール板、毬球(羽を足で蹴り合う競技)をしている人などで、先日保定を訪れる際には、長距離高速バスに乗るために朝6時半に寮を出たのだが、あちこちで太極拳や剣舞をしている人を見かけた。剣舞をしていた人は、通り道でやってくれていて、私が横を通る時も止めてくれなかった。ちょっと恐かった。

◆その他の競技
 TJ5では、天津野球チームの試合を4月から放送してくれているが、レベルはいいところ日本の大学生か、というところで、守備ではかなりミスも多い。全国レベルの日本の高校生には負けそうである。中国代表レベルなら、札幌ドームで巨人の上原からホームランを打つ選手がいる(アテネオリンピックの予選を兼ねた2003年秋のアジア選手権)くらいだから、それほどレベルが低いというわけではないのかもしれないが。
 TJ5はアメリカのメジャーリーグも録画放送してくれたことがあったが、昨年秋のプレーオフの時期にバリー・ボンズの700号ホームランの試合を流していたり、春節の頃にワールドシリーズの最終戦が流れたりして、できるだけ新鮮な情報が命のスポーツでは致命的なやり方をしている。中国での野球人気がうかがわれる。
 ラグビーは全く見たことがないし、アメリカンフットボールはシーズン中に週1回くらいは録画中継があったろうか。それも朝8時くらいからというものだった。

 F1については、CCTV5が毎回のグランプリをほぼ完全に生中継し、予選も決勝も国際映像をきちんと流してくれる。日本の某局のアナウンサーのうるささに慣れてしまったのか、昨年秋のブラジル、先日のカナダなどは船を漕ぎながらの観戦になってしまった。そのぐらい盛り上がりに欠ける実況と解説である。
 それはともかく、日本の地上波に比べてかなり恵まれた内容には違いない。その上、今年のF1はかなりの混戦で、見ていて面白い。2004年のようにフェラーリのひとり勝ちで、シーズン半ばにはチャンピオンが決まってしまうような展開ではどうしようもない。その辺はヨーロッパ各国の視聴率にも出ているようだ。

 競馬放送はゼロに等しい。昨年の国慶節の折、たまたま午後3時くらいにCCTV5に入れたら武漢で全国大会をやっていたが、見ていて各馬のレベル差に愕然とした。1000メートルという国際的には一番短い距離でぶっちぎって勝つ馬がいたり(しかもその馬が斜行したのに審議にもならなかった)、10000メートルの長距離戦(世界的にはもはや冗談のような距離設定)では、優勝した馬は2位以下を周回遅れにしていた。よくわからないが、どうやら各省の代表が集結して戦うという形のようだった。馬がサラブレッドかどうかも怪しい。

 香港にはシャティンとハッピーバレーという2つの競馬場があり、毎年12月には一日に国際G1を4レース行う香港国際デーがあるが、2004年にはその日の国際レースだけが録画放送(CCTV5)されたくらいだろうか(ちなみに、サッカーのトヨタカップが裏番組だった。ひどい試合だったが)。もうひとつ、4月のクイーンエリザベス2世カップという国際レースもある。こちらは、中継どころかニュースさえもなかったが。
 香港にはデビューから17連勝という、20世紀以降のタイ記録を作ったサイレントウィットネス(沈黙的証人)という現役馬がいる。先日、日本の安田記念にも挑戦して3着だった。しかし、彼(実は去勢されたせん馬なのだが)でさえも新記録を作った時、連勝記録が止まった時にしかニュースにもならなかった。個人的には、1000メートルとか1200メートルという短距離ばかりで作られた記録なので、同じ記録を持つリボー(17戦全勝で引退。ヨーロッパチャンピオン決定戦である凱旋門賞2連覇など)と比較してはいけないと思っているが、一方競馬で負けないことがいかに難しいかという部分では、一応は評価しないといけないとも思う。

◆困る放送内容
 各国のサッカーが放送されていると書いたが、CCTV5では試合中、ほとんど字幕が現れない。国際映像ならそのまま流れてくれるのだが、得点や現在の時間も表示されず、交代する選手が誰なのかすら分からない場合もあったりする。TJ5の野球中継では、ボールカウントやアウトカウントがたまにしか表示されない。
 また、球技ではいいプレーが出るとだいたい“好球”(あるいは“漂亮”)といい、サッカーやバスケットボールでパスを通してもいいディフェンスをしても、ビリヤードでポケットしても、ゴルフのパットでも、バドミントンのスマッシュが決まっても“好球”である。これには未だに違和感が消えない。便利といえば便利、理に適っていると言えばそうなのかもしれないが…
 全体に、実況が控えめなのは好感が持てるが、TJ5でESPN(アメリカのスポーツ専門チャンネル)の映像を流している、サッカー中文実況のアナウンサーはかなりうるさい。F1だと夜が遅いので、眠くなるほど静かで、黙っている瞬間もある。
  
◆基準は「世界一」?
 バレーボールのスイス国際では、決勝でブラジルに敗れると、2セット先取から逆転負けということもあってか、かなり批判されていた。トップの競技はそれを続けないと批判されるし(アテネオリンピックの体操もそうだった)、中国の人々の目はなかなか厳しい。私は、中国のサッカーは悪くはないと思うのだが、世界のトップではないためか、たいていの人が“不太好”という。何でも世界一じゃないとダメなのか。上を目指すのは悪いことではないと思うが、それはどうかと思ってしまう。中華思想はこんなところに生きているんだろうか。

 現在開催中のサッカーのワールドユースで、中国は真っ先に決勝トーナメント進出を決めたが、最初の試合でトルコに勝った勝ったと大騒ぎしている。スポーツニュースも特集を組んだり、熱く語る中国人の知り合いもいた。確かにトルコ代表は2002年のワールドカップで3位の実力国だが、今回は20歳以下の若い世代だけの大会で、この騒ぎぶりは明らかに変だ。将来彼らがどう成長するか分からないではないか。北京オリンピックにつながる世代ではあるが、サッカー界ではワールドカップが最高の大会だという認識は、中国でも薄いのか(日本でもオリンピックをありがたがる傾向は強いが)。
 話をトルコに戻すと、実はトルコのワールドカップ出場歴は2回しかなかったりする。実力は認めるが、ヨーロッパの超一流国でないことも確かだと思う(現在のワールドカップ予選でも、同じ組のウクライナがあと1勝で出場権を得る、というところまで進んでいて、最低でもプレーオフに進むための2位を2004年ヨーロッパチャンピオンのギリシャと争っている状況。それだけヨーロッパは激戦区だが)。もう少し冷静な議論が必要ではないか。中国代表はこれまでそうした実績はない、ということの表れかもしれないが。

 今の中国は2008年の北京オリンピックに向けて一直線という感じで、天津もサッカーの会場になっているとかで、新しいスタジアムはオリンピックスタジアムという名前になっている(物議を醸した2004年のアジアカップの会場でもあった)。単純に人口比でいうと強くて当たり前という気もするが、あまり長期的展望に過ぎるのか、あるいはその逆なのか、ちょっと変だと思うことも目にする。
 先日アジアのワールドカップ代表が決まった(残り0.5枠はまだ)が、中国は1次予選で敗退している。その後、2006年のアジアカップに向けた準備をしているが、ワールドカップ予選を戦った代表選手たちがほとんど再選されず、若い選手だらけになっているのである。確かに将来を見据えているといえばそうかもしれないが、極端すぎやしないかと感じてしまう。日本にいた頃に触れた情報や、こちらで聞いてみると他の競技でもそういうことが多いらしい。経験が重視されないのはおかしいのではないだろうか。敗れた選手たちは必要ないのか。

◆スポーツと「国家」
 歴史を勉強している人間としては、スポーツを見ている時に何となく湧き上がるナショナリズムに疑問を感じたりするが、これって何なんだろう、といつも思う。ヨーロッパのサッカーのように、お金のあるクラブチームが、ひょっとしたら世界のトップクラスの国の代表チームより強いんじゃないかというメンバーを集めてしまうと、国籍という分類にますます意味はなくなるような気がする。しかし、代理戦争的な性格をスポーツが持ち、一部の不満が発散されたりするのならば、それはそれでアリ、というところかもしれない。イタリアのサッカーはまさしくその図式で、リーグ戦は各地域の代理戦争そのもの。90年のイタリアワールドカップの際には、準決勝のイタリア対アルゼンチンが行われたナポリでは、マラドーナが当時ナポリに所属していたこともあり、北部に不満を持つナポリ市民がアルゼンチンを応援しまくり、イタリアが敗れたというすごい話もある(イタリアの南北対立はこんな形で発現したこともあった、という例)。
 日本と中国、韓国がサッカーの試合をする時はかなり微妙だし、2004年のアジアカップの際も国歌斉唱さえ邪魔する中国サポーターの態度が問題化したが、ある意味ではそのくらいで済んでよかったのかも。まとまりとしては国家、という枠はわかりやすいのだろうが、将来的には何か別の枠組みを考えてもいいかもしれない。国威発揚や経済開発の道具として使われるスポーツには面白みを感じない。マネーゲーム化したスポーツビジネスもいかがなものか、と思う。その意味では、自動車メーカーのショーの場と化したF1もどうかと思わずにはいられないが…。
 
 中国でのスポーツ観戦ライフはもうすぐ終わる。日本とはまた違うのだが、帰国した後に恐らく物足りなさを感じるのではないか、余計な心配をする今日この頃である。(文責 鄭得)

“豈有此理”第3回

2005-06-16 23:42:31 | 天津通信
今回は、テレビ、電話、インターネットなどについて触れてみたい(スポーツ放送については別項で)。

◆専門別のチャンネル構成
まずはテレビ放送から。南開大学誼園では、中央電視台(CCTV、国営放送)、天津電視台を中心に、各省の衛星放送チャンネルが見られる。中央電視台だけで15チャンネル以上あり、そのうちいつもお世話になっているのが新聞(ニュース)、CCTV1(総合)、CCTV5(スポーツ)で、他には経済や芸術、音楽、軍事など専門別に分かれている。天津電視台も7チャンネル持っている。寮では全部で50チャンネルほど見られるのだが、問題はプログラムが分からないこと。具体的に何時から何が始まるのかは専門の新聞を買うか、各放送局のURLで確認するしかない。しかも、当日になって変わることもままある。
 CCTV1を見ていると「中国は一つ」CMと西部地域開発を訴えるCMが時々流れる。他のCMでは、それは大丈夫か、と言いたくなるようなものもある。例えばある薬のCMでは、どうして青い瓶の薬じゃないのよ、と母親に言われ、えいっと娘が透明な瓶の薬を瓶ごと1本(というにはあまりにも小さいが)金魚のいる水槽に投げ入れる、というものがある。日本と同様、タレントやスポーツ選手が出てくるものもあり、サッカー選手のロナウド(ブラジル)やフィーゴ(ポルトガル)、ベッカム(イングランド)が起用されたりしている。地団駄を踏むジダン(フランス)よりはマシかもしれないが、疑問の残るCMもある。
 個人的には朝にニュースを見て、あとはスポーツの試合がないか探し、それ以外はザッピングして何かないか探す、という感じである。ザッピングしていると、現代劇はもちろん、かなりの数の歴史ドラマが放送されている。清代を舞台にしたものがかなり多く、他にも明の正統帝時代、土木の変をきっかけに起こる皇位争いを描いたドラマや、『三国志演義』や『水滸伝』、『隋唐英雄伝』をドラマ化したものなどなど。たいていのドラマには中国語字幕がついていて、それを追いかければ聞き取れなくても何とかなったりする。

◆歴史ドラマはかなり大胆なつくり
 私が結構気に入ってDVDまで買ったのが『鉄歯銅牙紀暁嵐』。乾隆年間に編纂された『四庫全書』の総編集である紀暁嵐(暁嵐は字で、本名は日+)が、和シン(王+申)が絡む汚職を暴いていくストーリーである。彼のトレードマークは長く大きいキセル。本当にタバコ好きだったかどうかは分からないが、天津市博物館に行った時に、彼が硯のコレクターだったというのが紹介されていて、劇中でもそれを匂わせるシーンが登場する。
 いきなりおかしいところだらけで、第1部のはじめに「乾隆二十年(1755年)」という旗が出るが、その時にはまだ和シンは10歳に満たないはずなのに、見た目は紀暁嵐と同じか年上。しかも、福康安という人物が出てくるが、彼はさらに若く、乾隆二十年当時は1歳のはず。さらに、和シンを悪役にしたいためだろうが、典型的な悪役面(乾隆帝は聡明で見た目のいい若者を周りに置くことを好んだという)。実際の紀暁嵐は、弁が立つ(鉄歯銅牙)どころかどもる癖があったというし、実際に都御史(監察官)に任命された時には、法律に通じていないので役に立たないと乾隆帝から叱責されている。他にも、先日放送された第3部では、紀暁嵐が出身地の直隷省河間府(現在の河北省滄州市河間市)に、欽差大臣として汚職を暴くために派遣される話が出てくる(これもどうかと思う)が、知府は彼の親戚、つまり本地人で、廻避制度が適用されていないのである。知府や知県レベルで、廻避制度の例外が適用される例は寡聞にして知らない。実際はどうなのだろうか、と思ってしまった。一方で、彼の親戚の若い連中が生員資格を買った、という場面にはニヤリとしてしまった(乾隆年間に売官が多かったかどうか…?)。

 実在の人物をモデルにしたドラマは、このように大胆なアレンジがされている。どのドラマでもかなり自由な解釈がされていて、例えばヌルハチを描いた『太祖秘史』は、彼の妃のひとりを彼の弟も好きになってしまうとか(他にもいろいろ)、あるいは先ほどの明代のドラマ(于謙という明の功臣が途中から主人公に)では、正統帝が天順帝となる時、史書では皇位にあった彼の弟が病死したということになっているが、劇中では正統帝の側近の宦官に首を絞められて殺されてしまっていた。また、演出だろうが、いずれのドラマにも女性が重要な役として登場し、ストーリー上、かなりの位置を占めているように思う。
 しかし、ストーリーアレンジ以上に違和感を感じるのが日本語でいう「殺陣」である。ほとんどがワイヤーアクションで空を飛ぶのは当たり前、それはいいとして(?)、敵と戦っているのに踊っているようなアレがどうも…。特に、一人で剣の訓練をしている場面は、剣を使ったダンスにしか見えない。だが、それをみんな“好功夫”と褒めるのである。ストーリー以上にいただけないと思うのだが…。中国では普通なのだろう。

 日中戦争から人民共和国成立あたりを描くドラマもかなり多いが、雲南衛星チャンネルだったかで2005年2月か3月あたりに放映されていた、少年を主人公に、最終的に日本軍を追い払うドラマでは、日本軍の役をしていた人たちが“壊人(悪人、悪党の意)”という役どころで固まってエンディングテロップで流れ、ひっくり返った記憶がある。また、別の作品の番組紹介CMでは、「(女性捕虜の服を)全部脱がせろ」という台詞だけ日本語で流れたのを見たことがある。まともに見たことはないが、日本人どうしの会話は日本語で流れていたようだ。
 日本や韓国のドラマも中国語吹き替え、中国語字幕がついて放送されたりもする。

◆日本のアニメだらけ
アニメもかなりの数が放送されているが、ほとんどが日本から輸入されたものである。結構人気があるのが『頭文字D』で、あちこちの放送局が放送しているほか、香港で実写映画化されたらしい。各アニメの主題歌は、中国語の字幕がついたり、あるいは全く新しい中国語の歌が被っていたりする。先日見た『ちびまる子ちゃん』では、オープニング・エンディングともメロディーはそのままに中国語の歌詞がついていた。驚いたのがエンディングで、『踊るポンポコリン』の歌詞が、成功するためにがんばって勉強しましょう、みたいな意味の歌詞に変わっていた。他にも、『名探偵コナン』『キャプテン翼』『スラムダンク』『ドラゴンボール』『ロスト・ユニバース』『カードキャプターさくら』などが放送されていたをの見た。日本名のタイトルが分からない作品も結構多い。

 CD・DVDショップに行けば、日本のアニメや日本人歌手のCDも売っている。やはりアニメは日本のものが多く、日本語に中国語字幕をつけたものや、中国語吹き替えをつけたものなどいくつかパターンがあるようだ。歌手では浜崎あゆみとか平井堅らが結構な人気らしい。買ったことはないが、結構日本人歌手のCDが並んでいて、日本語のまま店の中で流れていたりする。いつぞやは、誰か知らないが、誰だこの下手なのは、という日本人の歌が流れた。ちなみに、私の贔屓の歌手のCDは見たことがない。まじめに探すつもりもないけれど。

◆かなり面倒な電話
 続いて電話について。入った寮にはすでに電話が設置されていて、以前にも書いたがこれがナンバーディスプレイである。従って、かかってきた電話番号が表示されるので、よくわからない電話がかかってきたらカウンターに行って問い合わせることもできなくはない(どうせ“不知道”と言われるが)。また、かける時にはテレホンカードを使う。面倒だが、201カードという天津通信局が発行しているカードを使い、201→中国語(1)か英語(2)を選択→8桁のカード番号→4桁のパスワード→電話番号の順で打つ。国際電話にはIPカードという同じく天津通信局が発行しているカードを使い、201カードと併用(201カードのパスワードのあと、17908→中国語(1)か英語(2)を選択→IPカード番号→IPカードパスワード→電話番号)すると安くかけられる。緊急事態にほとんど遭っていないので、国際電話をかけたことはほとんどないが。テレホンカードは、あちこちで売っていて、南開大学内では学食の前にいるおばちゃんや、南開百貨(小さいが一応はスーパー)の店先にいるおばちゃんが扱っている。いずれのカードも額面は50元だが、たいていは25元前後で買える。また、天津で買えるのは天津市内限定のカードである。使用期限もあり、例えば2006年6月30日まで、などと裏面に明記してある。

 また、ある人に裏切り者呼ばわりされるかもしれないが、買ってしまった携帯電話についても書いておくべきだろう。私は、日本では携帯電話を持ったことがなかった。なぜかといえば、煩わしい上に金食い虫、ということに尽きる。また、必要性に迫られなかったことも理由の一つだろう。しかし、中国では全国共通のテレホンカードなど存在せず、電話をかけようと思えば公衆電話をかけさせてくれるところを探すしかない。場合によっては、探しても見あたらないこともある。ということで、3月始め、雲南に出かける前にあわてて携帯電話を買うことにした。
 まず、機種を選ぶ。最新のものはPDFを兼ねていたり、MP3ファイルの音楽が聴けたり、カメラがついていたりするらしいが、そんなものは必要ないので話せればいいだけのものを買った。それだけでは使えないので、今度は用途に合わせたICチップを買う。私は従量制にしたが、天津市内では1分6角、それ以外では1分8角。国際電話は1分8元+2.4元、メールは70字ごとに1角。平日の夜と土日祝日は市内通話で2角に下がる。また、電話を受けても市内通話の基本料金をとられている(ICチップはたくさん種類があり、詳しいことは分からない)。
 一人で買いに行って困ったのが、ICチップを買う際には、外国人は本地人(ここでは天津人)の仕事に就いている人の身分証と、携帯電話を買いたい本人のパスポートが必要だということである。あわてて友人を捜し、彼のお父さんに助けてもらって事なきを得たが。
 先日、携帯電話が急に使えなくなった。なぜか分からず、中国人の友人に尋ねてみると、私の買った従量制のカードは、3ヶ月間一度もお金を入れない(50元単位、電話局、銀行、郵便局などで携帯電話代を払う旨を告げると番号を聞かれ、すぐにお金が加算される)と、電話局が使用を止める権利があるのだそうだ。また、3ヶ月間の最低金額は50元で、使い切っていなくてもやはり止められるらしい。じゃ、帰国後はどうしたらいいんだ、と聞いたら、次回の滞在先で新しいカードを買うことを勧められた。やはりそうそういい話はない。当初の予定通り携帯電話を買わずに済ますべきだったか、と思わずにはいられなかった。利便性もあまり感じないので、日本に帰って購入を検討するということもないだろう。プリペイド式は犯罪に使われやすいため、廃止の方向にあるとも聞く(今の状況はどうだろうか)。必要があれば考える、というスタンスに変わりはなく、あるいは中国で実際に使ってみて、私の携帯嫌いに拍車がかかったかもしれない。

◆管理者がわかってない?
 インターネットについては、現在使っているのは南開大学内のLANになる。ダイヤルアップよりはマシという程度のスピードで、日本の重いページを見ようとするとタイムアウトしてつながらないことも多い。2004年の11月から今の形なのだが、最初の説明では月額50元だったはずが、10日ほどすると突然従量制(情報量1M=1.5角)にすると言われた。使い始める際にユーザー名(部屋番号)しか渡されず、これは問題が起こると思っていたのだが、予想通り番号を盗む(“盗号”)連中が現れ、対策のひとつとしてそうしたという。これは高い、おかしいと文句を言いに行ったルームメイトは、これは規定だ(最終的な一言)と言われてしまったそうで、これではどうしようもない。私も何度か質問に行ったが、どうも寮の管理者が分かっていないんじゃないかと思える回答をされたこともある。現在は個人で設定できるパスワードもあり、“盗号”問題は起こっていないが、突然つながらないこともあったりするので、テレホンカードでのダイヤルアップ通信(来中当初はこれだった)も併用できる体制を作っておかないといけない。

 ダイヤルアップ通信をするには、接続設定で、ユーザー名欄に96163、パスワード欄に201カードのパスワード、ダイヤル先を(201,1,201カード番号#,201カードのパスワード#,96163#,)と設定すると市内通話料金だけで使える。また、インターネット専用カード(16900カード)もあり、201カードと併用するとさらに安く使える。16900カードは、使い始めてから1ヶ月は無料、1ヶ月経過後は従量制で50元使えるというカードで、ユーザー名に帳号、パスワード欄にパスワードを入れ、ダイヤル先を201#001(または0001か00001)#201カード番号#201カードのパスワード#16900#にすると使える。これはあくまで天津限定のもので、他の地域でどうかは分からない。

 中国に来る前は、ひょっとしたら海外のURLを見るのに制限があるかも、と思っていたが、結構見られるものである。私の趣味なのでちょっと気が引けるが、JRAとか東京スポーツのページも見られたりして、不自由は感じない。
 現在の料金形態が情報量による従量制なので、写真の多いページを見たり、ダウンロードすると簡単に数元が飛んでいく。困るのは、マイクロソフトが発表するWindowsのセキュリティ・ホール対策の修正ファイルで、サイズが大きいとただの金食い虫でしかない。マイクロソフトには以前から不満があるが、まさか金額という形でダイレクトに反映するとは思いもよらなかった。

◆盗版、勢力衰えず?
 海賊版(盗版)についても述べておくべきだろう。
 噂には聞いてはいたが、ここまで多いとは思わなかった。何しろ、街のあちこちで自転車の荷台に箱をくくりつけ、映画のDVD一枚を5元程度(純正版は20~30元)で売っているのである。上映されると純正版よりも先に海賊版が発売され、また、日本でアニメやゲームが発売されると1ヶ月くらいで新作の海賊版が発売される。使うには多少の技術が必要なようだが、そのあたりの解説やファイルもネット上に転がっているという。日本のアニメの新作が放送されると、それに中国語の字幕がつけられたデータが無料ダウンロードできるページまであるという。中国人の友人には、『NARUTO』や『ガンダムSEED DESTINY』を見せられた。
 LANケーブルを買いに行った時、小売店を見て歩いたが、正版(純正版)を扱っている店以外ではほとんど海賊版を置いている。興味本位で何があるのか見ていると、これが欲しいのか、と言って日本のアダルトビデオやPC用のアダルトゲームソフトの海賊版を出してくる。これには一瞬、思考が止まった。
 また、友人の話では、ソフトを探していて、本当に動くのかというようなことを聞いたら、そこのおばちゃんはこの会社は信頼できる会社だから大丈夫だ、と言い放ったらしい。「信頼できる海賊版の会社」って…。日本政府は、意匠権なども含めてコピーできないような法律を作って欲しいという要請を中国政府にしたようだが、まだまだというところか。

 先日、中国政府が日本のアダルトゲームソフトの何本かを、表現が過激だとして禁止したという報道があった(日本のニュースサイト)。しかし、日本のアダルトゲームソフトメーカーは、使用を日本国内に限定する旨をパッケージに明記しており、むしろ海賊版を先に取り締まるべきではないかと思うのだが。この辺りの意識付けには、中国政府はかなり積極的に乗り出しているようだが、果たして効果は…?。ここのところ、留学生仲間の話では、表だって海賊版を置く店が少なくなり(中国人の友人は“越来越多”と言うが)、彼らが行くとそっと出してくるらしい。一応、取り締まりはしているようだ。
 著作権を含む知的財産権については、その適用のされ方に問題があると感じられる場合もあるが(本来は友人間の貸し借りもダメとか、中古売買の是非、著作者を保護するのではなく企業の金儲けに使われる傾向が強いなど)、かといって全てをコピーしていい、という話にはなるまい。海賊版の問題は、著作権に限らず、服や自動車の意匠権、商標にまで及び(NIKEじゃなくてNIKFとか、『クレヨンしんちゃん』の中国名がすでに登録されていたとか)、WTOに加盟した以上は、それに準ずる努力をしなければいけない状況のはずで、これからの動向に注目である。私が研究している時代の人たちは、人真似が嫌いで対外戦争に負けたんだがなあ…。それとこれとはまた違うか。(文責 鄭得) 

図書購入

2005-06-10 12:57:43 | 本に関して
亜東書店から見計らいで中国書を購入しました。
大きなシリーズとしては、長江文化研究文庫があります。
長江流域的宗族与宗族生活
長江流域的喪葬
など、興味深いタイトルのものが含まれます。

また
生態環境与明清社会経済
科挙生活撮影
なども購入しました。
しばらく上田研究室にありますが、
来週には人文系図書館に移します。

院生のみなさま、
研究書で必要なものがあったら
上田で申し出てください。

予算との相談となりますが
できる限り希望に沿いたいと思います。(うずまき)


本に関する徒然なる思い・・・

2005-06-10 00:30:13 | 本に関して
最初に徒然なる本に関する記事を書いてから、かなり経ってしまいました。
あれから、読んだ本は増えました。しかし、ふと思ったわけです。どうして自分は、流行というか
ベストセラー本というのが苦手なのだろうか、と。自分は今、本屋でバイトをしています。
最近の売れ筋は、林真理子のanego、さおやだけはなぜ潰れないのか、石田衣良のスローグッバイ、
天童荒太のあふれた愛、(映画化で復活)電車男、等でしょうか。一応、ざっと目は通しましたがどうもね・・・。
 私は、本を読むのも好きですが、文章を書くのも文才はこれぽっちもなく駄文なんですが好きなわけです。
だからというか、なんというか、ただ好きというだけで新刊本や売りたい本の宣伝ポップを書かせてもらっています。
それで、ベストセラー本とかのも必然的に書かねばならないのですが、やっぱりダメなんですよ。つまり、その本を受けつけないから、宣伝しようにもナイスなグッとくるようなビンゴな言葉が浮かばないわけ。
皆さん、論文とか書いていらっしゃるだろうから解ると思うんですけど、いい物が書ける時というのは、無意識の内に筆が進んでいませんか?空から不思議な何かが降臨してきて、一気にガガガ!!!とその何かが書いてくれてる感じです。
その感じが、苦手な本の場合、ないわけです。
 逆に、うまく書けた時というのは、やはりお客さんも手にして買ってくれます。やはり自分が書いたのを見て、手にして、買ってくれると凄い嬉しいですね。特に、その反響がすぐ出るのが児童書です。お母さん方というのは、とてもシビアですから、
この本屋は児童書が豊富だとかいう情報を常に偵察!しているんです。だから、こっちは大変ですよ。今、子供の間では何が流行っているのか、新聞や雑誌にどんな児童向け図書が載ったか、最大のポイントは、愛子様が好きな本は何か、
等いろいろなアンテナを張らないといけないのです。それプラス、長年のベストセラーの切らさず揃えておくこと。
そうして選んだ本にポップをつけると、やはり売れますね。熱意が伝わるからでしょうか。
 みなさん、今度本屋に行ったらそうしたポップを気にしてみてくださいね。
そうそう、ベストセラー本についてでしたが、別に読んで悪いということではないです。単に自分は、あまり惹かれないだけのこと。
本屋に行って、何が楽しいかというと、これだ!という本が見つかるかもしれないという期待があるような気がします。その瞬間というのは、本が『私を買って!私を読んで!』と訴えているのがはっきりわかります。いわゆる大人買いという買い方をした場合は、99%失敗しますもん。
こないだは、書評だけで判断して内容を見ずに買って思いっきりハズレました。
だから、本を買う時はまずはパラパラと見てみてください。売れているからというだけで買うのもいいけれど、でも、それでは本を選ぶという能力が養われないような気がします。受身ではなく、能動態で本と接して欲しいな、と偉そうな事を言っている感も否めないですが、思います。

 ちなみに、マンガも多少読んでいるのですが、最近のお勧めは、安達哲の『バカ姉弟』、浦澤直樹『20世紀少年』『PLUTO』、いくえみ綾『かの人や月』です。特に『バカ姉弟』は最高です。勉強に疲れた時は、一読なされることをお勧めいたします。読みたい方、貸します・・・。

 では、みなさん、よい読書ライフを。


(文責:トンファン)

『新シルクロード展』のススメ

2005-06-02 22:49:14 | ユーラシアの西と東と
5月下旬、両国の江戸東京博物館で開催されている『新シルククロード展』へ行きました。なかなかに興味深かったので、こちらで紹介させていただきます。
本展覧会は、中国におけるシルクロード遺物約130点によって構成されています。青銅器時代から唐代まで、タクラマカンや天山南路などポイントごとに貴重な文化遺産を鑑賞することができます。唐代の、壁画「如来図」(世界初公開・ダンダンウイリク出土)などは、「西域のモナリザ」とも称されるだけあって、優美な眼差しに魅かれました。
画、面、俑、服飾、容物――等々、展示は多岐にわたっているので、観覧者それぞれの関心に応えることができると思います。私は、黄金仮面など、金製の展示品の前で目が釘づけでした……まばゆかった(笑)。
東京開催は7月3日まで(9:30~17:30、木・金曜20:00まで。月曜休館、一般観覧券1300円)。詳しくは『新シルクロード展』公式ホームページに載ってます。
テレビの特集番組を見て興味をもち、実際に行ってみたのですが、「そもそもシルクロードとは何ぞや? 楼蘭とは何ぞや?」などと、名称だけからなんとなくわかった気でいたものに対して改めて考えることができたのが私にとっては良かったな~と思ってます。
皆さまも、ご興味とお時間がありましたら是非。
(文責 ホマチ)