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~グリーンとデジタルから垣間見える未来社会~

なぜ、地域通貨・エコマネーは失敗するのか?

2007年05月05日 | 1.スマートシティを創る
1. 地域通貨・エコポイントの挑戦

 「地域通貨」は、「法定通貨」の流動性不足の際、地域内で生産できる物やサービスに関しては地域独自の交換手段を用いることによって自給自足を高めるために考案された「LETS」(Local Exchange Trading Systemの略)が元祖である。失業問題や地域経済の活性化に効果があるとされる。LETSは、1980年代にカナダのバンクーバー近郊の寂れた炭鉱の町、Commox Valleyではじまり、都市からお金が巡ってこなくなり、スキルがあるのにもかかわらず、流動性がないためだけに、地域経済が停滞してしまったという切実な用途(必要性)から始まった。町にお金が巡ってこないのなら、町だけ通用するお金を作ればいい、とマイケル・リントンによって開始された。お金の「流通量調整機能」の補完である。カナダから、英国や豪州や欧州各国に広がった。アルゼンチンでは、最大600万人が活用したり、スイスの中小企業向けの協同組合WIR銀行では、中小企業同士の取引のための清算道具としてWIRを、スイスフランと等価のものとして融資している。(※ 概要は、Wikipedia「地域通貨」の項目を参照:
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E5%9F%9F%E9%80%9A%E8%B2%A8
日本では、そのほとんどがNPOが提案し、地域から導入してゆくボトムアップの企画である。「地域通貨」は、徳留佳之氏(http://www.cc-pr.net/list/)の調査によると2006年12月までに600を超える地域で試みられたことがあるという。きっかけは、NHKは、「エンデの遺言」という特集番組でミヒャエル・エンデの「死ぬお金(マイナスの利子のあるお金)」という思想を紹介し、その事例として「地域通貨」を、「お金の未来への可能性」として放送したことにあった。日本人は、多様な代替通貨の考え方の中で、LETSのような流動性の危機による代替通貨でも、「お金」に対する危機意識に基づくエンデによる代替通貨でもなく、むしろ、「地域コミュニティを活性化させる意図的で流通させる通貨」として代替通貨に、注目をした企画が多いようだ。
換金可能な地域通貨あるいはエコポイントを定義することは、「債務」として計上する必要があるから避けられることが多い。
筆者も関わったことのあるボトムアップからの地域通貨の事例として、東京都の渋谷地域からはじまった、アースデイ・マネー(http://www.earthdaymoney.org/)がある。アースデイ・マネーは、渋谷地域でゴミ拾い(スカベンジャー)を行ったり、農作業を手伝うと発行され、渋谷地域の特定の喫茶店でコーヒーが割引で飲めたり、「アースデイ・マーケット」という朝市で現金として使える。NPO法人 アースデイ・マネーアソシエイションは、スローでオルタネティブな社会のあり方、働き方を提案しており、この考え方に共鳴する活動同士が連携し、この通貨を受け入れるネットワークが徐々に広がっている。すなわち、アースデイ・マネーを「受け取る」ことでコーヒーを振舞う喫茶店は、自ら環境に良い活動をしない代わりに、いつものコーヒーをアースデイ・マネー分だけ「おまけ」するのである。この通貨は、渋谷で始まったこともあり、ファッション性を大切にしており、アースデイ・マネーは、その「お金」を通じて、あたらしい世界への冒険と出会いがある、コミュニティをつなげる通貨になる、そう思わせる雰囲気づくりに成功している。こうしたネットワークの広がりは、創設者の嵯峨 生馬氏の信念と、地道な営業活動の成果でもある。(※ その他、具体的な地域通貨の具体的な導入や運用の事例については、福岡県NPO・ボランティアセンター「やってみようよ!地域通貨~地域通貨導入の手引き(2004年3月: http://www.nvc.pref.fukuoka.lg.jp/topics_osusume/chikituka_dounyu/dounyu.htm)に詳しい。)」
日本では、政府の地域再生本部が中心となって実施する地域再生施策の一環として、「地域再生推進のためのプログラム」(2004年2月27日)が決定され、この施策の中で、「地域通貨モデルシステムの導入支援事業」が選定され、2004(平成16)年度では、千葉県市川市、福岡県北九州市、熊本県小国町の3地域、2005(平成17)年度では、千葉県銚子市、島根県の雲南市と海士町、大分県別府市、熊本県阿蘇市の5地域が選定され、電子地域通貨の情報システム一式が無償提供されている。
 このような地域通貨の派生として、地域の環境保全に関わる活動にのみに的を絞ったものが、「エコポイント」と考えられる。そして、エコポイントは、地球環境問題が市民権を獲得するにつれて、今後、企画が増えてくると想定される。この本格的な事例のひとつとして、北九州市では、「地域通貨モデルシステムの導入支援事業」の2004年度の認定の中で、「環境パスポート」事業の展開を行っている。[このプロジェクトと名古屋のEXPOマネーのプロジェクトは互いに連携して、全国のエコポイントプログラムがはじまろうとしている。]

(北九州市の環境パスポート事業について
 概要 :http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/pdf/t_model_sys_1_s05_01.pdf
 図版 :http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/pdf/t_model_sys_1_s05_02.pdf

 この活動を紹介した、地域再生本部の紹介「第7回 市民力が創る「環境首都」北九州-福岡県北九州市:http://www.wagamachigenki.jp/saisei/02_07.htm 」によると、概要は以下である。
実証実験の参加総数:1,127人(延べ参加人数総数3,672人)
ポイントの発行状況: 110,189P (1p=10円相当)
地域通貨が入手できるエコ・プログラム数:112個
※人気エコ・プログラムトップ3(動員数ランキング):
  1位: グリーンコンシューマー(1,251人・2,516P)
2位: 地域清掃活動(881人・25,815P)
  3位: 資源回収(835人・18,155P)
北九州市では、全市を挙げて平成20年度から本格導入を目指している。
 また、エコポイントを付与する際には、LCAとの関係付けによる説得力の付与や、結果のビジュアルかが求められる可能性もある。このため、北九州の環境パスポート事業では、北九州産業学術振興局とNPO里山の会、早稲田大学 環境総合研究センター吉田徳久教授らは、「地域通貨を活用した環境ネットワークの構築に関する包括的研究」として、「市民との年環境情報のあり方や持続可能な都市構築に役立つ意思決定ツールとしてのサステイナビリティ指標の開発
http://www.waseda.jp/weri/cluster/contents/clus-chiikitsuka.html)」を合わせ行っている。

2. 地域通貨・エコポイントの課題

 地域通貨・エコポイントの課題を一言でいえば「限定だからこそのサービスは何か?」が明らかではないことである。
 多くの活動が生活の一部に深くささっている「ドミナント」を形成するまでに到っていない。その原因として以下の点が考えられる。

(1) 独自の魅力ある「用途」が足りない
 地域通貨やエコポイントは、「独自の流通ネットワークのデザイン」、すなわち、この「お金」を貯めると、どんなサービスが期待できるか?の用途開発が不十分である。用途を明確に設計した結果、広く受け入れられた好事例としては、「図書カード」がある。子供の進学の贈答用や学校での賞品などとして、現在も流通している。地域通貨やエコポイントは、流通業者が提供する商圏に顧客を囲い込む為に日常的に行われている、割引制度である「ポイントカード」や商店の「スタンプ」と同類であるため、もっと戦略的な構想力が欠かせない。人がポイントカードを持ち歩いてしまうときは、ポイントが溜まると景品があたったり、ポイントの値が、現金として使えるなどのメリットが付与されているからだ。また、そもそも財布のキャパシティは限られているから、この狭いスペースを狙って、流通業者は競合他社の同類のポイントカードと差別化する。例えば「ANAマイレージ」が「Edy」と連携するなど、ポイントの連携を行い、より優れた魅力ある「用途」のネットワークで競っている。地域通貨やエコポイントは、目標数値を達成することによる公共サービスとゆるやかに関係づけを行われることが多い。これらは用途サービスの絞込みが甘く、地域の「触れ合い」的なサービスに留まりがちで魅力が弱くなりがちである。

(2)流動性のコントロールが難しい
 善意をベースとする地域通貨やエコポイントであっても、価値の算定が恣意的に行われたり、また監督およびマネジメントが欠けると、合理性が破綻する。ポイント発行業務は、基本的に債務発行業務であるために、その裏づけになる担保が必要である。借り方、貸し方のつじつまが合わないと、価値のインフレーションやデフレーションがおこりやすい、不安定な存在となる。
例えば、SROI(Social Return of Investment)による算定を行い、その価値が保存されているという証拠に基づき、各行為を自然資本の場合はLCAによる評価や、文化資本の場合は例えば時間価値算定での評価するなどを行い、正しく算定し、値決めした上で配布、流通させるマネジメントが必要である。

加えて、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター「ローカル通貨研究会報告書」(2003年6月:http://www.glocom.ac.jp/project/lc/LocalCurrencyReport.pdf)は、地域通貨の今後の課題として、「政府や公共自治体、商店街など既存の枠組みとの連携」を指摘している。
 ・国家の通貨発行権に対する地域通貨の除外
 ・地域通貨の流通における法的制約問題の解決
 ・対内通貨としての地域通貨の設計
 ・地域内資金循環を促進するための地域再投資法制の整備
 ・商工関係団体による地域経済の再生
 ・公民パートナーシップによる地域再生
 ・技術的な地域通貨運用上の課題解決

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