アメシストのマツ

五十代女性、既婚、子供なし、ただいま断酒中。
もう一生で飲めるだけの酒は飲み尽くしました。

「ダイエットの科学」

2021-03-17 20:00:00 | 読んだ本
以前、アジア人にアルコールに弱い遺伝子を持つ人が多いという話題を書きました



こんな本を読みました
ボリュームの多いほんでしたが面白かったです

少し長くなりますがアルコールについて書かれていた部分の引用です


中国では、一万年前に大規模な稲作が始まると、微生物を使って米を発酵させる醸造酒などの酒がすぐに作られるようになった。たくさんの人たちが自家醸造の酒を日常的に飲むうちに、アルコール耐性ができた り、アルコール依存症になったりする人が出てきたと考えられる。そうした男性が酔っ払うと(もちろん女 性にも可能性がある)、子どもの面倒もみないで、気づくと田んぼでうつぶせに倒れていることがよくあっ たに違いない。田んぼの側溝に嘔吐物まみれで横たわっていたりしたら、異性から好ましい相手とは見ても らえなかっただろう。それに女性が妊娠中に飲酒していた場合、子どもが無事に育つ可能性は低かっただろう。そうこうするうちに、アルコール耐性のある遺伝子は絶えてしまい、ラガービールをグラスに半分飲んだだけで酔うくらい、アルコールにとても敏感な遺伝子が繁栄した。というのも、そうした遺伝子をもつ人々は、酒に依存することがなかったし、より多くの子どもが無事大人になれたからだ。

当初はこうした遺伝子変異も珍しい存在だったが、およそ6000年前から増え始めてアジア全域に広が り、あっという間に標準的な遺伝子になった。アルコール依存症の人はアジアにもいるが、まれであり、一般的にそうした人は変異していないヨーロッパ系の遺伝子をもっている。こういったことを考えれば、日本やアジア各地でカラオケバーが繁盛しているのもうなずけることなのかもしれない。そこに行けば、彼らはアルコールの臭いをかぐだけで心理的な抑制を解除できるのだから。中国でアルコール関連遺伝子がたどっ てきた歴史と進化を考えると、アルコールはこの国の住民にとってはプラスとなることばかりではなかった と言える。しかしこの遺伝子変異はヨーロッパ各国にはそれほど広がらず、ヨーロッパ人でアルコールに耐性がない人の割合は低い。


では、その遺伝子の変異がヨーロッパ人のあいだに定着しなかったのはなぜだろうかヨーロッパの女性が意外にも酔っ払った男性に魅力的を感じていたのか、それとも常習的に酒を飲む人を優位に立たせる何 かが酒の中にあって、それがアルコール依存症という明らかな問題の影響を薄めたのだろうか


酒を一切飲まない人と比べると、適度な飲酒をしている人のほうが心臓疾患のリスクが低いことが、世界中でたびたび実施されてきた大規模な観察的研究で明らかにされている。34件の観察的研究を対象とする メタアナリシスでは、男性で一日4.8ユニット、女性で一日2.3ユニットを上回らない程度の飲酒で、リスクが約18パーセント低くなることがわかっている。心臓発作や死亡率に対する保護効果が最大になるの は、一日の摂取量が一ユニット弱の場合で、これはワインを小ぶりのグラスで一杯飲むくらいだ。一方で、ロシア人のような大量飲酒者となると、心臓疾患のリスクは逆に減少から増加に転じる(こうしたリスクの 変化はJカーブと呼ばれている)


気をつけてほしいのは、こうした結果はあくまでも観察的研究によるものであり、飲酒に関連する別の因子によるバイアスが悪影響を及ぼしている可能性があることだ。一方、フランスは数十年にわたり、心臓疾 患による死亡数がイギリスの半分しかなく、この傾向は、両国で死亡率が減少し始める時期まで続いた。フランス人が主に飲むのはワインだったため、ワインをよく飲む習慣は例のフレンチ・パラドックスを説明する最も有力な説とされた。しかしフランス人のワイン好きは、肝硬変や他のアルコール関連のがんがきわめ て多いことにも表れている。つまり、アルコールによる保護効果とリスクは紙一重ということなのだ。