秘笛 [天吹]有情

雄の娑婆は修羅場であるが
男の世界には浪漫が ある。

泣くな「天吹」・・男は辛い・・・

2013-04-06 | ◆ 晴耕雨読
 何はさておき奥様には謝せねばならなぬ。「泣くな天吹。」お前が泣けば俺は素面で人様の前に慟哭せねばならぬではないか・・男は辛いのだ。「まあ佳か正月どんしもして、一つ歳どん取んせば、良か知恵も附つもんそで。夜分遅ずい、御騒がせしもした。庵主の声にそそくさと出て来られた奥様の顔を真面に見れず深々と頭が勝手に降って呉れた。よく出来ているものだ。帰り道は心が重く遠い。人間歳を重ぬれば、益々ずるくなる奴と、いよいよ頑固になるご仁があると聞くが・・変らぬのは馬鹿か天才なのか、が俺は一体どう出来ているのだかサッパリわからない。いくら背伸びまでして頑張ってみても「いよいよ甘えがひどくなる。」と言はれるのだ。これでは差し引き“零”(ぜろ)ではないか・・・。
 他人様の分まで歳を貰っても“良か知恵”な付きそうにもないのだ。何を考えているか分らんと言われるが、それはお互い様だ。それこそ今夜みたいに“天吹”かかえていそいそとついて来たのだ。側杖喰らった「天吹」こそいい面の皮だ。
門札を見たら分ったろうに、と思はれようが当時の中学生には悪戯者が多くて教師の門札コレクションなど可愛いほうなのだ。キョロキョロ見廻す奴は、余程の薄馬鹿野郎だ。ところで俺は頑固な横着者か、それとも天才的な馬鹿なのか、と新仮説を点てている時に前を歩いている庵主が、「限界か」とつぶやくではないか。今頃物理の『適用限界』でもあるまいから「公案」と観た。が だ、俺は未だ春秋に富む身だから、早々と見切りを付けられたら困るのだ。


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