トランプ新大統領誕生!

就任演説全文(英語)

「国家の破綻が近い」福田元首相が安倍政権を痛烈批判      2017年8月3日

2017-08-03 19:10:04 | 日記
福田康夫元首相が2日、共同通信のインタビューに応え、「国家の破滅が近い」と語り、安倍政権を痛烈に批判した。

 加計・森友問題に関連して、福田氏が厳しく指摘したのが、安倍政権が2014年に発足した内閣人事局によって幹部官僚の人事を掌握したことだ。

「各省庁の中堅以上の幹部は皆、官邸(の顔色)を見て仕事をしている。恥ずかしく、国家の破滅に近づいている」「自民党がつぶれる時は、役所も一緒につぶれる。自殺行為だ」との認識を示し、「政治家が(官僚の)人事をやってはいけない。安倍内閣最大の失敗だ」と指摘した。

 また安倍政権の運営が安定していたのは条件に恵まれていただけだと酷評した。「(自民党内に)競争相手がいなかっただけだ。(脅かすような)野党もいないし、非常に恵まれている状況だ」と分析。「そういう時に役人まで動員して、政権維持に当たらせてはいけない」と批判した。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210731


永田町の裏を読む
大日本主義の徒花 「安倍政治」に対抗するヴィジョンとは 2017年8月3日

高野孟ジャーナリスト

1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。

 鳩山友紀夫の近著「脱 大日本主義」(平凡社新書)がなかなかの評判である。30日付毎日新聞の「今週の本棚」欄では、中島岳志が5段の大きなスペースで書評を書いていて、その結びの部分でこう述べている。

「民進党は、相変わらず迷走中である。その最大の要因は、国民に訴えかける清新なヴィジョンの欠如にある」のだが、その「ヴィジョンがここにある。民進党は、鳩山内閣の挫折のプロセスを検証したうえで、理念の再提起を行うべきではないか。鳩山内閣は確かに失敗に終わったが、その理念までもが全否定されていいわけではない。未来に向けて有効な構想や政策が多く含まれている。……いまこそ必読の一冊だ」と。

 いつも辛辣なこの評者にしては、ちょっとビックリするくらいの褒め言葉であるけれども、私は共感する。中島は言う。

「鳩山政権が長期政権になっていれば、いまの日本はどうなったろうか。……私たちは異なる現在を生きていたに違いない」

 確かに、鳩山政権はよろず下手くそではあったけれども、あんなふうに寄ってたかって叩き潰すことが、どうして必要だったのだろうかと、私もあの時代の空気をやや不気味なものを見るかのように思い返すことがある。

 タイトルが意味するのは、明治から150年、日本はずっと「大日本」を追い求めてきたが、それはもういい加減にして、石橋湛山の「小日本主義」や武村正義の「小さくともキラリと光る国」という理念の系列をくんで、中規模国家(ミドルパワー)としての成熟をこそ目指すべきだという提唱である。そこで何よりも重要なのは、時代遅れの対米従属からの脱却であり、その実体化のための米軍基地の縮減、地位協定の改定、東アジアにおける連携、そしてまた内にあっては、低成長経済の下での新たな分配政策でなければならない。

 そう考えると、安倍政権の対米従属・軍事強国路線、アベノミクスによる無理やりの成長追求路線というのは、大日本主義の最後の徒花なのだろう。とすれば、それに対抗する民進党は、鳩山ヴィジョンを座標軸として、ポスト安倍の新しい日本の生き方の提案を国民に訴えかけなければならないのではないか。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210676


また“加計ありき” 中身なし早い者勝ちで決まった国家戦略 2017年8月3日

 また新たな「加計ありき」が浮上だ。1校に限られた獣医学部の新設。京都府と京産大の提案を押しのけ、今治市と加計学園に決まったのは「国家戦略」なんて看板倒れの茶番劇だったことが改めて浮き彫りとなった。

 2日の民進党・加計疑惑調査チームの会合で、内閣府は今治市だけでなく京都府側の相談も受けていたと“加計びいき”を否定。証拠として、昨年11月25日に内閣府を訪問した山田京都府知事の説明資料を提出した。<iPS細胞等再生医療の開発を推進>と記され、ノーベル賞学者の山中伸弥教授が所長を務める京大・iPS細胞研究所と連携する意向も示されたという。

■中身よりも早期実現性が決め手

 目を見張る内容だが、京都は落選。杉尾秀哉参院議員が「iPS細胞という国家戦略につながる提案をしている京都が劣っていて、今治が優れている理由は何か」と質問すると、内閣府の塩見英之参事官からは驚きの答え。

「昨年12月22日の段階で『1校に限る』となり、どちらかを選ぶ必要性が生じた。年末年始にかけて、早期実現性の観点から提案書を比較し、今治市で公募することに決めた」

 中身よりも早期実現性が決め手とは、何たる国家戦略だ。しかも、今治市の公開資料によると、内閣府は今治市とだけ「平成30年4月開学」というスケジュールを共有。だから、選定前から予定地のボーリング調査に踏み切れたわけで、スピード重視なら今治市に決まるのも当然だ。

 こんなデキレースだから、加計学園は獣医学部の学生募集パンフレットに<合格後、引き続き受験勉強を続け、一般入試でワンランク上の大学、国公立大学にチャレンジすることも可能>と明記。国家戦略を担う大学とは到底思えない。

 山本地方創生相は先月、「今治市と京都府の提案を比較して決定したが、記録は取っていない」とスッとぼけ、きのうの最後の定例会見でも「文書があることと、事の信憑性は直接の関係はない」と開き直った。

 恥ずかしくて記録に残せないようなプロセスだったのかも知れないが、改造人事で逃げ切りは許されない。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210775



加計問題で市議会への「買収疑惑」浮上…議員1人1000万円 2017年8月1日

 加計学園の獣医学部新設問題で大揺れの愛媛・今治市に再び激震が走っている。加計学園の誘致を巡り、菅良二市長や加計孝太郎理事長らが共謀して市議らにカネを配った疑いがあるとして、市内の男性住民が菅市長や市議らに対する告発状を松山地検に提出したのだ。

 7月27日付の告発状によると、菅市長と加計理事長は2015年6月4日の獣医学部の設置申請にあたり、今治市議会の国家戦略特区特別委担当の市議らに対し、1人当たり1000万円をワイロとして渡していた疑いがあるとしている。

 この問題は7月26日に市内で開かれた市議会報告会で表面化。告発状を提出した「今治加計獣医学部問題を考える会」共同代表の武田宙大氏が質疑応答の場で、「今治市では(獣医学部新設の問題で市議に)1000万円の収賄容疑がある。名誉を守るために加計、市長からカネをもらっていない人は起立してください」「立てんということはワイロをもらっとるということ」などと発言。すると、議員側から「ちょっと待て」「根拠を言え」「退場だ」などと怒声が飛び交う異常事態となった。果たして真相はどうなのか。武田氏にあらためて聞くと、こう答えた。

「カネの授受の具体的な日時はともかく、この話は加戸守行前愛媛県知事や菅市長の選挙を手伝った支援者から直接聞いた話です。告発状を提出後、ある市議から電話があり、『私はカネをもらっておらず、起立したかったが、周りにためらう雰囲気があった』と明かしました。これは議会内で無言の圧力があるということ。疑惑があるのだから、検察にきちんと調べてほしいと思います」

 加計学園に広大な市有地をタダで差し出し、県と一緒に100億円近い施設費もくれてやる――。賛否が真っ二つに割れてもおかしくない市の重要政策なのに、なぜか議会では「全会一致」で可決だ。市民が「議員は怪しいカネをもらっているのではないか」と疑念を抱くのも当然だろう。検察が告発状を受理して捜査に着手するかどうかは不明だが、仮にワイロが事実で、市長や市議が芋づる式に逮捕されれば、獣医学部開設は間違いなく吹っ飛ぶ。超ド級の大スキャンダルに発展するのは間違いない。

政界工作のためのワイロが1人1000万円とすれば、議員に広く配るため億単位のカネが必要になる。経営状況が芳しくないといわれる加計学園が、多額の使途不明金を経理処理するのは難しいと言わざるを得ない。

 果たして、どこからカネが出たのか。まさか官房機密費ではないだろうが……。

 次から次へと新たな疑惑が出てくる加計学園の獣医学部新設問題。やっぱり計画の白紙撤回しかない。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210535
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210535/2
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/210535/3


【アベ友疑獄】「加計学園を早くしろ」内閣府が今治市を恫喝 首相の意向か 2017年3月13日 22:14

 内閣府はこの期に及んで「加計学園を早くしろ、平成30年度(来年4月)に開校しなければ国家戦略特区を取り消すぞ」と今治市の企画財政当局に恫喝をかけてくる・・・今治市議会関係者がこう明らかにした。

 今治市が36億円の市有地を無償譲渡し、さらに校舎などの建設費の半分(=64億円)を補助する加計学園・岡山理科大学獣医学部。理事長の加計孝太郎氏は安倍首相の大親友である。

 今治市の急ぎようは常軌を逸している―

 3月定例市議会の初日(3日)に、いきなり先議で「無償譲渡」を採決したのである。採決から約1週間後には、着工式もないままに建設工事が始まった。国家戦略特区を担当する今治市企画財政部が議員に配布したスケジュール表によれば、着工式は3月上旬とされていたにもかかわらず。

 加計学園をめぐって内閣府が今治市をクレージーなまでに急がせたのには背景があった。安倍首相自らが国会でそれを披露するとは驚きだった―

 参議院予算委員会できょう、社民党の福島みずほ議員が質問した。「総理は加計学園が今治市で獣医学部を作りたいと思っているのを知っていたか?」

 安倍首相は気色ばんだ。友人の加計孝太郎氏を守りたいのだろう。恫喝口調だった。

 「福島さんね、特定の名前を出している以上、政治によって歪められたという確証がなければ、その人物に対して極めて失礼ですよ・・・あなた責任とれるんですか」。首相は周章狼狽し早口になった。

 安倍首相は聞かれてもいないのに、国家戦略特区で獣医学部を作るスキームについて話し始めた。語るに落ちるとはこのことである。

 首相いわく「遊休地で地方自治体が困っている時、一番いいのは大学誘致なんです」、「若い人が来て、町が形成される」、「業界団体の反対があるから、特区でやるんです」。まるで加計理事長からレクチャーでも受けたかのようだった。

 筆者が銚子で聞いた、加計学園の大学を誘致した元市長とほとんど同じセリフである。元市長も安倍首相も、加計理事長とは20年以上の付き合いであることも共通する。

 内閣府の役人が忖度して自治体に恫喝をかけたりするだろうか? 加計理事長に便宜を図ろうとする安倍首相本人か側近が内閣府に圧力をかけたと見る方が妥当である。

 ~終わり~
 
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【今治発】市民「加計学園からカネをもらっていない議員は立って下さい」2017年7月28日 23:30

 加計学園の誘致をめぐって贈収賄があったとして、今治市の男性が27日、加計孝太郎理事長、菅良二市長、市議会議員を松山地検に告発した。

 告発状によると加計理事長と菅市長は、誘致に反対しないようにと市議会議員13人に1人当たり1,000万円を渡した。

 もしこれが事実で、金の出所が官房機密費だったりしたら、一発でアウトだ。

 アベ友案件で大揺れの今治市で26日と28日の両日、市議会議員による報告会が開かれた。市内の2つの公民館が会場となった。

 議会報告会は毎夏の恒例行事なのだが、今年は加計疑惑追及の場と化した。

 「お金をもらってない人(議員)は立って下さい」(30代男性)

 「(上物の費用負担)96億円の根拠となる図面を公開してください」(地元自治会長)

 「文科省の認可が下りていないのに、なぜ工事が進んでいるんですか? 認可が下りなかったら更地にして返してもらえるんですか?」(50代主婦)

 市議会側は事前に対策を練っていたようだ。議員たちはニヤニヤしながらまともに答えなかった。

 国家戦略特区・特別委員長の寺井政博・市議の回答がふるっていた。

 「(詳細な図面は)セキュリティーの問題で全て公開することはできないと聞いている。市議会は文科省に詳細な確認をお願いしたいと意見を出している」。

 「詳細な設計を精査したのではない。その必要もない」。

 寺井委員長は、市議会は確認する意思がなく、国と加計学園まかせにすることを明らかにしたのである。

 おまけに「高くないか? という事だが、他の大学と比較して決して高くないと説明を受けている」と加計学園の説明を繰り返した。

 特区・特別副委員長の岡田勝利市議もひどかった。

 「(校舎建設などの費用負担)96億円の根拠は何ですか?」と質問されると「十分、分からないので調べます」とイケシャアシャアと答えるのだった。

 出所が公金であるため我が身は痛まない。無責任な議員や市長が加計学園の言うままに金を出す。

 安倍政権がすぐに倒れなかった場合、官邸の圧力で文科省は設置を認可するだろう。加計学園に注ぎ込まれる国庫補助の原資は国民の税金である。こんどは今治市民だけの不条理な負担ではなくなる。

  〜終わり~

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ガザの子供を殺してどうするのだ? イスラエルと共同兵器開発する日本 2017年5月5日 01:10

 きょうは端午の節句。中東に「子供の日」がある訳ではないが、子供の命があまりに軽いガザに思いを馳せる。

 2014年、イスラエルの軍事侵攻で2,000人余りのパレスチナ人が殺害された。

 救急病院の遺体安置室は、小さな骸が大半を占めていた。子供の犠牲が多いことを物語る。

 爆撃の中心は空爆だ。空爆の9割以上をドローンが占める。ドローンは24時間、重低音のエンジン音を立てて上空を旋回していた。

 そして陸上の移動物体を見つけるとミサイルを放つ。

 海岸の波打ち際で遊んでいた男の子たちが対人ミサイルに直撃された。

 陸上基地でモニター画面を見ながらドローンを操縦するイスラエル軍兵士は、攻撃対象が子供であることを十二分に認識していたはずだ。

 子供たちの親もドローンで殺されている。現地医療機関の調査によると、子供たちがPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症する原因のトップはドローンだ。

 日本はイスラエルと兵器を共同開発する、という。こともあろうにドローンだ。

 パレスチナの子供たちを殺してどうするのだ? 私たち日本の納税者に突きつけられている重くて厳しい問いである。
 
   ◇
『【ガザ写真集】いとも簡単に殺される命』を発表しました。イスラエルの軍事侵攻から3年が経っても忘れてはならない、過酷な現代史を写真で振り返ります…https://note.mu/tanakaryusaku/n/n911aacf9f1e1

http://tanakaryusaku.jp/2017/05/00015776

FOMC通過で見えた「投機筋の誤算」この円高の本当の理由は何なのか?=E氏

2017-08-03 18:27:22 | 日記
2017年7月31日

7月26日に発表された米連邦公開市場委員会(FOMC)は、声明で4兆5000億ドル規模の保有証券の縮小を「比較的早期に」開始するとの方針を示したほか、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標については1~1.25%のレンジで据え置きました。

今回のFOMCでなんらかの政策変更があるという事前予想は皆無に等しかったので、決定自体はノーサプライズです。しかし、にも関わらずドル安が進行し、円高気味になっています。

本日はコンセンサスどおりだったのにドル安円高が進行している理由と、今後の円相場の方向性について考えてみることにします。(『元ヘッジファンドE氏の投資情報』)

プロフィール:E氏
国内大手生保、ゴールドマン・サックス、当時日本最大のヘッジファンドだったジャパン・アドバイザリーでのファンドマネージャー経験を経て、2006年に自らのヘッジファンドであるINDRA Investmentsを設立し国内外の年金基金や富裕層への投資助言を開始。2006年10月からのファンド開始後はリーマンショックや東日本大震災で、期間中TOPIXは5割程度下落した中で、6年連続のプラス(累積30%)のリターンを達成。運用歴25年超。

110円割れは時間の問題? 投機筋が素人より上手いとは限らない

剥落した過剰な期待

まず、相場水準のおさらいですが、昨年11月に予想に反しトランプが大統領に当選したことで、年末までドルは急上昇をしました。これは、トランプのマニフェストが過度に財政支出を伴う政策だったことで、米国経済の成長率の高まりもさることながら将来的なインフレ率上昇懸念が出たことで、長期金利が急上昇したためです。

利上げはその国の通貨価値を高めるので、インフレ期待の高まりでドルが上昇したのは自然なことですし、日米金利差拡大で円相場が売られたことも(やや行き過ぎでしたが)教科書的な流れでした。

しかし、ドルインデックスは昨年末を高値にして、年初来では下落を続けており、直近では昨年5月来の安値にまで下落しています。

この間、FOMCは昨年12月、今年3月、今年6月と3度にわたる利上げをしているので、通貨価値が上昇しても良さそうだったのに、逆にドルが売られているのは、トランプショック以降のインフレ期待があまりにも過剰だったため、実際にFOMCで利上げが決定されるたびに、材料出尽くしで下落していったのです。

つまり、昨年末のドル高はあまりにも非現実的なインフレ率や金利上昇を想定していたため、現実に利上げが続いても(インフレ率の見込みとしては)期待外れになってしまっているのです。

「緩慢な利上げ」に気づきはじめた市場

ただ、それだけではドルが昨年11月の大統領選直前の水準を下回ってまで下落する理由にはなりません。

ここまでドルが売り込まれているのは、単に米国経済に対する期待やそれに伴うインフレ率上昇見込みが剥げただけではなく、トランプによって米経済が低迷し、従って、利上げペースは(前大統領であるオバマ氏やトランプと一騎打ちを演じたクリントン氏が大統領になった場合より)緩慢になるという見方が出てきているからです。

つまり、ロシアへの情報提供問題や司法介入で政権がごたついていることによるトランプリスクですが、ドルが昨年の大統領選直前の水準を切り始めたのが、政権の不祥事が相次いで明らかになった今年5月以降ということを考えても、トランプ政権で経済が低迷するリスクを嫌気しての売りが多分に出ているということは明らかでしょう。

実際、ヘッジファンドを始めとする投機筋のドルポジションは、昨年末をピークにしてロングが解消されていき、直近データではとうとうドルショートを始めています。投機筋によるドルショートは約2年ぶりなので、長期投資家のみながら短期投資家もトランプ政権のゴタゴタで利上げが緩慢になることで、ドルの通貨価値も下落していくという見方をしているのでしょう。

しかし、今回のFOMCは、そういったハト派的な見方に合致するものだったのでノーサプライズのはずなのに、声明発表後にドル安が進行したのは、直前数日にFOMCの声明がタカ派的なモノになるという見方を取った投機筋によるポジションが米国債で大量に組まれたことによる反動です。

ヘッジファンドの「誤算」

投機筋と一言で言っても、みな同じ方向性で売買をしているわけではないし、ヘッジファンドだからといって一般投資家より上手く運用できるわけではありません。

例えば、この数ヶ月、投機筋は米金利と課なら金利との利回り格差に着目してカナダドルのショートを膨大に積み上げていましたが、先月のカナダ中央銀行による利上げで、短期間のうちにほぼ全てのショートをカバーしています。

また、あまりにもレバレッジを効かせすぎているので、直近の低ボラティリティ、低出来高マーケットでは自らの売買によるマーケットインパクトで負けることが多々あります。

このように、投機筋を「ドタバタしているけれど、決して上手いとは限らない投資家」だとすると、7月中旬にイエレンFRB議長が議会証言で予想外にハト派の証言をしたにも関わらず、今回のFOMC前に「声明でタカ派的な見方が出る」という目論見をしてもおかしくないでしょう。

イエレンFRB議長の議会証言前のFOMCメンバーによる要人発言は概ねタカ派でしたが、それは資産圧縮の時期についてのものであり、次期利上げ時期や今年の利上げ回数に対するものではありませんでした。

しかし、議会証言でイエレンFRB議長は直近の物価上昇率低下を一時的としながらも、FRBとしては無視できない存在として認識していることを明らかにしたので、米国の期待インフレ率低下をFRBも認めているという認識になっていたのです。

投機筋にとってはサプライズ

今回のFOMC声明はこのように、イエレンFRB議長の議会証言で物価上昇率が目標を下回っているという点に触れていたことを考えれば、今回のFOMC声明は十分ハト派的な内容になると想定でき、実際、今回、物価動向に関しては、6月声明の「2%をやや下回っている」から今回「2%を下回っている」に変更しています。「やや」が抜けたことで、一時的と見ている物価の弱さがより持続的になる可能性を考慮しているのです。

なので、イエレンFRB議長の議会証言でFOMCがハト派的な見方になっていると判断していた大方の投資家にとっては、今回の声明は予想通りでしたが、(何を根拠にそう考えたか不明ですが)FOMCでタカ派的な声明になると見越して米国債のショートを積んでいた一部投機筋にとってはサプライズだったので、ポジションの巻き返しが生じ、コンセンサスどおりだったにも関わらず米国債利回り低下とドル安進行が生じたのです。

なぜ「緩やかな」円高なのか?

以上が先週のFOMC以降のドル安の背景ですが、こういった状況にも関わらず、FOMC直後の円高進行が比較的軽微だった理由についても触れておきます。それは、今回のFOMC声明は概ねコンセンサス通りですが、利上げに関するコンセンサスと資産圧縮に対するコンセンサスの方向性が異なっていたからです。

今書いたように、利上げはハト派的な見方でしたので、年内の利上げは微妙という向きが増えてきています。しかし、その一方で資産売却に関しては、タカ派的な見方が増えつつあった中で、予想通りにタカ派になったという意味でコンセンサスどおりなのです。

資産圧縮がタカ派であった根拠は、今回の声明文にある「委員会は現在、経済がおおむね予想通りに進展するとの想定で、バランスシート正常化プログラムを比較的早期に開始すると見込んでいる」という文言からで、この中の「比較的早期」という言葉のため、資産圧縮開始時期が早ければ9月という見方の確度が高まりました。

この数ヶ月、複数のFOMCメンバーから資産圧縮開始時期は今年9月という意見が増えていましたが、これまでのFOMC声明では資産圧縮は年内の開始という表現でした。このため、資産圧縮に関する見方は「早ければ9月のFOMC、遅くとも年内」というのが従来のコンセンサスでしたが、これに対し、今回の声明で「比較的早期」という表現が使われたのです。

「利上げ」と「資産圧縮」の方向性に齟齬

もし、イエレンFRB議長始めとするFOMCメンバーが12月のFOMCでの資産圧縮を考えていたら、今回「比較的早期」という文言は使わず、従来どおりに年内の開始が望ましいという表現になっていたはずですが、今回「比較的早期」と書きました。

今後のFOMCの開催スケジュールが今年9月、10月、12月しかないことを考えると、この文言のため、従来よりも9月での資産圧縮開始の確度が高まったと判断されるのは自然なことですから、今回の声明で資産圧縮に関してはややタカ派の判断と考えられたのです。

利上げはFFレートの引き上げですが、資産圧縮は長期債の売却を伴うので、米債の長期ゾーンの利回りが需給悪化で売られる可能性が高まります。

この時期が従来考えられていたよりは前倒し気味になると思われたので、FOMC声明が発表された直後は利上げに関しハト派とされたことで10年債利回りは急低下しましたが、すぐに10年債を初めとする長期債の利回りは声明発表前の水準より上昇しています。

この結果、(日銀の牽制で)10年債利回りが0.1%以下で留まっている日本の長期金利と比較して金利差が開いたことため、ドル安ほど円が買われなかったのです。

このように、今回のFOMCはコンセンサスどおりでサプライズがないと言いながらも、利上げと資産圧縮のコンセンサスの方向性が異なったために、ドル安と円高の動きが異なったというのがFOMC以降の為替相場の変動の原因となっており、これに(結果的にミスジャッジをした投機筋による直前の米国債ショートの巻き戻しも加わって)あたかもFOMCがサプライズだったかのような動きをしたのです。

今後当面は円高基調

次に、今後の円相場の方向性ですが、需給的要因との綱引きがあるものの、当面は円高基調で見ていたほうが良いでしょう。

まず、ドルはトランプの政権不祥事による政治に対する失望感が続いているほか、従来から経済統計は決して強くなくあくまでも期待先行だったことを考えると、当面買い材料に乏しい状況です。投機筋のドルショートポジション構築は始まったばかりで、建玉残高ピークまで十分に余裕があることを考えると、当面ドルは売られやすいでしょう。

一方の円は、このところの円高にも関わらず、投機筋は円ショートを数年来のピーク水準まで積み上げていました。つまり、円高の主因はヘッジファンドなどではなく、実需や一般投資家の円買いニーズだったのです。

投機筋以外の投資家がなぜ円買いに進んだかは、円相場と連動性が高い安全資産であるゴールドとの連動性が保たれているのでも判ります。ゴールドがこのところ買われているのは、トランプ政権に対する先行き不透明感による安全資産需要の高まりなので、円相場も同様に安全資産需要で買われた可能性が高いです。

この反面、投機筋がなぜ年初来減らし続けていた円ショートを今月に入って再度積み増し始めたかは定かではありませんが、ショートポジション積み増しペースがイエレンFRB議長の議会証言以降であることや、5月以降軟調だったFANG関連に対する買いが戻ったタイミングと一致していることから、恐らくは「マーケットのリスクオンがしばし継続する」と判断してのショートポジション積み増しでしょう。

しかし、金融当局者の発言がハト派だからと言ってリスクオンになるわけはなく、経済環境や政治情勢がリスクオフ的な場合、当局者はハードランディングを避けるためハト派の発言でマーケットを落ち着かせることも十分有り得るわけです。

すでに余力一杯の円ショート筋

この数ヶ月タカ派に転じたと目されていたイエレンFRB議長が、なぜ今月中旬の議会証言で突如ハト派的発言をしたかは不明ですが、物価上昇率が目標未達の中、トランプ政権誕生を囃して期待インフレ率のみが先走って上昇した結果のリスクオフマーケットだったので、政権に対する信認が低下した以上、物価上昇率が目標に到達できないのは一時的かどうか微妙になってきたと考えてのことでしょう。

となると、イエレンFRB議長のハト派修正もこのところのトランプ政権のゴタゴタに伴う先行き不透明感に根ざしているわけですので、発言がハト派だからといってマーケットがリスクオンになるような性質ではないのは明らかです。

これを投機筋が見誤って円ショートを積み上げたとすると、円相場は早晩急激な上昇を伴う可能性が高いことを示唆しています。というのも、投機筋の現在の円ショートの建玉残高水準はこの5年ほどのピークを超えているので、これ以上の積み増し余力に乏しくなっていると思われます。

その一方で、29日未明の北朝鮮によるICBM発射での円高シフトのように、地政学的リスクからの円高リスクも依然として残っているため、投機筋のショートポジションは踏み上げられやすくなっています。

溜まりつつある「円急伸のマグマ」

北朝鮮問題の緊迫化による円高は4月にもありましたが、トランプ政権が口だけで実行を伴わなかったので、危機はフェイドアウトしたかに見えました。しかし、これは北朝鮮の事実上のお目付け役である中国に100日の猶予を与えたためという見方が強くなっています。

このところ米政権内部から北朝鮮や中国に対し厳しい論調が戻っているのは、この猶予期間が今月16日で終ったことと無関係ということはないでしょうから、北朝鮮による地政学的リスクという点でも、円相場は再び円高に向かいやすくなっています。

こういったことを考えると、円側は今はモデレートな円高で留まっていますが、潜在的にはドル安分以上に上昇しやすいマグマが溜まっているといえます。

一気の円高進展のトリガーが何になるかは不明ですが、ファンダメンタルズを見誤ってのショート積み増しが既に余力一杯と思われる投機筋にとっても分かりやすい円高材料が横たわっていることを考えると、110円割れは勿論、4月の高値を更新するのも時間の問題かと思われます。

そして、円相場がこのように急伸マグマを抱えている以上、日本株も下押しリスクが高まっています。従来、日本株は基本は円相場連動でしたが、円高気味の場合は強い米国株に連動するなど、都度都度株高の材料を探して指数を維持してきた感が強いですが、円高の進展度合いが強い場合は、常にオーバーシュートして買われていた歪みが一気に開放されることで値幅を伴っての下げになると思われます。

このように、一見するとコンセンサスどおりだったFOMCでしたが、声明を踏まえての各アセットの動きから、近い将来のマーケットボラティリティの急上昇となる兆しを感じさせることになっています。





洞口勝人の「ザッ 資産運用!」あと3カ月で始まる大円安時代に乗り遅れるな(動画付)
2017年7月30日


今、何を買い、何を売るべきか? 年間約370回の資産運用セミナーを行う人気熱血講師・洞口勝人氏の解説動画(ダイジェスト版)を特別に無料公開します。(『洞口勝人の「ザッ 資産運用!」』洞口勝人)

※本記事は有料メルマガ『洞口勝人の「ザッ 資産運用!」』2017年7月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

プロフィール:洞口勝人(ほらぐち かつひと)
ファイナンシャルプランナー。1963年生まれ、岐阜県出身。資産運用に強いFPとして、年間約370回のセミナー・講演会(受講者数約3万人)を行っている。早稲田大学エクステンションセンター講師。日本銀行の依頼を受け、全国にて金融広報活動も展開中。NHK『人材育成セミナー』講師、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』等に出演。

<2017年7月号 洞口勝人の「ザッ 資産運用!」カリキュラム>

【ポートフォリオ再構築】
・トランプノミクス 8つのポイント
・円安の方向性 9つのポイント
・米国金利の方向性
・格付け
・ポートフォリオ再構築

【マーケットを読む】
・米ドル・ユーロ・豪ドル・ブラジルレアル
・米国リート&米国ハイイールド&Jリート
・NYダウ&日経平均&インド株式
・金(GOLD)
【内容紹介(一部)】米ドルの方向性:3年・10年・23年で見え方が異なる

3年・10年・23年と期間を変えると、どのように見えてくるのか?
<米ドル3年間の動きでは、まだ円高傾向だが…>

まず、2015年6月高値(125円85銭)を境に、2014年7月安値からの円安の動きは、一転して2016年6月安値(99円09銭)までの円高の動きとなった。まさにチャートの鉄則通り、「同じ時間をかけて同じ位置まで戻る左右対称の動き」となった。

現在の米ドルの動きは、2015年6月高値(125円85銭)とトランプラリーでつけた2016年12月高値(118円66銭)を結ぶ上値傾向線を突破できておらず、3年の期間では依然、円高の方向性にある。

しかし、2016年12月高値を起点とした短い傾向線は突破してきており、半年の期間を見ると、徐々に円安の方向性に入ってきている。

2015年6月高値からの傾向線突破の水準は低下傾向にあり、現在は116円近辺だが、今秋頃には114円近辺まで下がってくる。この時間の経過とともに低下してくる傾向線を突破してくれば、円安の方向性への変化のサインとなる。

<10年間の動きでは「均衡状態」だが、円安にブレイクする直前か>

2015年6月高値(125円85銭)からの上値傾向線、一方で2011年10月安値(75円59銭)からの下値傾向線をそれぞれ結び、110円水準を挟んでの「三角保合い」を形成している。

「三角保合い」は収束してきており、どちらかの大きな方向性が出てくるタイミングが接近してきている。

数ヶ月後に予想される米国の金利上昇のタイミングに合わせて、その方向性は円安の可能性が高いだろう。

<23年間の動きでは、完全に「円安傾向」に>

これまでは1998年8月高値(147円64銭)と2007年6月高値(124円16銭)を結んだ線、一方で1999年11月安値(101円35銭)と2011年4月安値(75円55銭)を結んだ2本の平行線の間を、13年間で半分となった円高の方向性だった。

しかし2014年10月、第2回目の黒田バズーカで上値傾向線を突破し、長期の円高の方向性は完全に終了している。