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棟居が四歳の冬のことだった。この日、棟居は、駅の前で父の帰りを待っていた。
夕方一定の時間に勤めから帰ってくる父を迎えに行くのが棟居の日課である。
父は、いもやとうもろこしでつくった弁当を棟居のためにつくってから、家を出る。
夕方まで、棟居はたった一人で留守番をしているのである。当時はテレビもまんがの本もない。
暗い部屋で、ただ父の帰る . . . 本文を読む
Tell your world
白いミルクの水たまり 血が混じり合って風車
闇に駆け廻る悲鳴
カルロバッツの村はずれだった。なかば崩れた教会に、天井はなく、石積みの壁には大きな穴が開いていた。
日暮れ時で、空気は冷えていた。どうしてこんなところにセルビア人が?とイヴァンたちクロアチア人は
思ったろう、私が手引きをしたのかと。もしも私が、少し離れた闇の中に潜んでいると知ったならだ。そして
私の体内を半分流れ . . . 本文を読む