舞踊批評家協会

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☆第37回舞踊批評家協会賞決定☆

2006-02-27 13:38:59 | 舞踊、ダンス、舞踏、バレエ、日舞

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         ☆第37回舞踊批評家協会賞決定☆
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★2月18日の選考会議によって、以下の通り決定しました
みなさん、おめでとうございます。4月15日に授章式を行います。

 本 賞
  森下洋子「シンデレラ」
  室伏鴻「quick silver」
  金森穣・黒田育世「ラストパイ」
  内田香「なみだ」
  花柳扇蔵「衣川弁慶」
 新人賞
  菊地研「ピンクフロイド・バレエ」
  向雲太郎「2001年壺中の旅」
  白井剛「禁色」
  花柳せいら・西川扇重郎・花柳貴代人・若柳里次朗「冒険と記憶」
昨年および過去35年間の受賞者は下記のサイトをご覧下さい。
http://dcsjp.hp.infoseek.co.jp/index.htm
http://dcsjp.hp.infoseek.co.jp/listaward.htm
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キーロフバレエ「愛の伝説」

2006-02-23 17:13:05 | 舞踊、ダンス、舞踏、バレエ、日舞
キーロフバレエ「愛の伝説」
Ballet report from Russia vol.2
                   高橋匠美

 2006年2月17日、キーロフバレエ「愛の伝説」を観た。私はこのロシアならではの作品が大好きだ。グリゴローヴィチ振付なので、ボリショイ劇場で初演されたとおもわれているが、実際は1961年にここマリンスキー劇場、当時のキーロフ劇場で初演された。このバレエは一人の男性をめぐって姉妹の葛藤が描かれているが、独特のアームスの動きは趣があり、壮大な作品に仕上がっている。
 主役のシリンは小柄な若手エフゲニー・オブラスツォーワ、その姉役をベテランのイルマ・二オラーゼが演じた。二人を悩ませるフェルハド役は、すでに日本公演でもおなじみのイーゴリ・コルプが初演した。オブラスツォーワは登場した瞬間から、とにかく愛らしい。情感がとても豊かで、それをストレートに表現するダンサーだ。このようにあたたかい雰囲気に包みこまれているダンサーは稀である。それだけではなく、彼女の脚力はとても強い。グランジュッテは男性並みに飛びあがるので驚いてしまった。しかし、あまりにも安定感がありすぎて、どのテクニックもそつなくこなしてしまうので、おもしろみに欠けて少々もの足りなさも感じた。若手ダンサーの魅力のひとつに、多少の不安定さや未完成さもふくまれることもあるだろう。
 ここキーロフバレエでは現在、若手ダンサーが主役を踊る機会を与えられているので、プリンシパルとコールドの中間ソリストダンサーが作品によって両方のパートを踊っているので、かなり肉体的にきついらしい。当然競争も激しくなってくる。このような制度は、おなじロシアでもバレエ団によって違うらしい。
 以前、ペルミバレエからキーロフにリハーサルをしにきた友人が驚いていたが、ペルミバレエでは、プリマとコールドのパートははっきりとわけられているそうだ。そういうことなのでキーロフの公演では、先日主役を踊っていたダンサーが、今日はコールドを踊るということがあるので、コールドダンサーも見逃すことができない。それに友人は、ここキーロフでは上体のつけ方がペルミよりも随分と大きいと話していた。それなので、一言でロシアバレエと言ってもバレエ団によって、システムや踊り方までさまざまなのだ。
 オブラスツォーワは、長身で線の細い他のキーロフメンバーに囲まれると、けしてスタイルが良い方ではない。以前「ジゼル」一幕のコールドを踊っていた時は、腕の長いとなりのダンサーと比較すると、少々違和感を感じたが、ソロになると彼女の個性が発揮される。ワガノワ時代から、彼女は練習の鬼として知られていた。その成果が彼女の完璧なアンディオールからうかがえた。コルプの軽やかで、キレのある跳躍には驚嘆させられた。長身で力強く、逆三角形の鍛え上げられた身体の持ち主なので、この役をもっと早くに初演していてもおかしくはないはずだ。彼は空中をあやつることができる数少ないダンサーの一人だ。少々そりぎみに踊るクセがあるので、人によって好き嫌いがあるかもしれないが。ただ、彼は「愛の伝説」を演じるには冷淡すぎた。
 そういえば、ウラジーミル・シショフが順調に腰が回復して、レッスンとリハーサルをこなしているということなので、早く彼の「愛の伝説」を観たいものだ。おそらく、大人の雰囲気がある彼なら熱く表現してくれることだろう。
 今回フェルハドの四人の友人役の一人が転倒し、そのまま舞台袖に去ってしまうというハプニングがあった。残った三人は少々動揺したようだが、なにごともなくさわやかに踊り続けていた。傾斜があり、滑りやすいマリンスキー劇場ならこういう事態も起こるだろう。
 しかし、それにしても今回の配役はアンバランスだ。オブラスツォーワはかわいいが、この物語のなかでは子供にみえてしまう。大柄のコルプと組むとまるで親子のようだ。姉役のニオラーゼとは、実際の年齢もかなりはなれている。衣装は鍛え上げられた体のラインが表われる総タイツだが、乳首の部分についている印が滑稽だ。おそらく、女性の象徴としてこのデザインにしたのだろうが、冷静にみると笑えた。だが、このコスチュームはシンプルだが、神秘的で美しい。
 この日は金曜の夜のせいか、観客がいつもに増して多かった。劇場は正装客で熱気ムンムンだった。アリフ・メリコフの音楽にも酔いしれて、みごたえがあり、ドラマティックな一夜となった。