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貸金業規制法改正案に思う -あの議論は一体何だったのか?-

2006-09-06 | 会計・株式・財務
こんばんわ。
ご無沙汰しております。

まずは紀子さま男児ご出産おめでとうございます。
男性皇族は秋篠宮さま以来41年ぶりですか・・・・・・
まっ、何といいましょうか、「皇族の意地」のようなものを感じました。
個人的には、雅子さまへの鞘当てにならなければ・・・・・・と思った次第ですけど。

で、このブログでも何度かコメントしてきた貸金業のグレーゾーン金利問題。
注目の金融庁の改正案が出てきたのですが・・・・・。
まずは朝日新聞の記事をご紹介。その後、コメント。
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貸金業金利、一部アップに 法改正案で区分変更
2006年09月06日03時02分
 貸金業の金利引き下げ問題で、金融庁が5日、貸金業規制法の改正案を自民党の金融調査会や法務部会などの合同会議に正式に伝えた。少額・短期の融資などに認める特例金利を年28%としたほか、利息制限法の金利区分を変えて一部の借金額だと利上げになるなど規制強化に逆行する規定が盛り込まれた。この特例への不満から、内閣府政務官として規制強化の「推進役」を務めてきた後藤田正純氏(自民党衆院議員)は同日、政務官辞任を表明。金融庁は秋の臨時国会に「貸金業法」案として提出する考えだが、議論が順調に進むかどうか不透明になった。

 金融庁案によると、貸金業界の上限金利を利息制限法の上限(元本により年15~20%)に一本化し、出資法の上限(年29.2%)は年20%に引き下げてグレーゾーン(灰色)金利を撤廃する。

 金利の引き下げは法律施行から3年後。その後に最長5年間で特例の高金利を認める。当初案にあった見直し条項は削除されたが、改正法の成立から施行までは1年程度かかるため、現状の上限金利の水準が9年以上続く計算となる。

 利息制限法の現在の金利区分は、借金額の元本が10万円未満で年20%、100万円未満で同18%、100万円以上で同15%。これに対し、金融庁案は「制定された54年以来、変更されておらず、物価上昇分を考慮した」として、区分額の10万円を50万円に、100万円を500万円とそれぞれ5倍に上げる。これで、10万円以上50万円未満で2%幅、100万円以上500万円未満で3%幅の利上げとなる。

 一方、少額・短期の特例は「元本50万円以内、1年以内」または「元本30万円以内、半年以内」の範囲内で3社から借り入れ可能とする。事業者向け融資も含めて特例金利は年28%。消費者金融大手の大半の取引を占めるリボルビング取引には特例を認めないほか、延滞客は1年程度、特例の借り入れができない。

 8月の金融庁の有識者懇では、委員からは「特例は不要という声が懇談会の大勢」「改正の目的は多重債務者の救済。今の状況で改善をめざすべきで、一部でも利上げになるのはおかしい」という意見が相次いでいた。今後、「規制強化が骨抜きになる」といった批判が高まりそうだ。

 これに対し、金融庁は金利以外の規制強化を厳格にすれば、制度の悪用は防げるとする。このため、出資法の罰則を懲役5年以下から懲役10年以下に引き上げる方向で法務省と協議し、信用情報機関の情報悪用などにも刑事罰を適用する方針。

 また、貸金業界の自浄能力を高めるため、都道府県別に設立している貸金業協会を全国の統一の認可組織に再編し、自主規制機能を強化する。

 協会は広告規制などを策定し、金融庁が認可する。相談機関や警告文言の表示を義務付けるほか、メディア側にも登録業者か確認するよう求める案が出ている。
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(コメント)
・まっ、後藤田政務官にしてみれば納得いかない内容なのでしょうが、傍目から見れば、
①グレーゾーン金利は廃止、上限金利は原則引き下げられる、
②特例金利は導入されても制約多く、定着できるか不透明、
③別に業界を擁護するつもりはないが、いくら何でも一定の激変緩和措置は必要
④この問題は米国政府からはむしろ規制緩和圧力のあったところで、
 ある程度の譲歩も必要であったはず、
・・・・・・・・・って考えますと、常識的な線ではないでしょうか。

そしてグレーゾン金利に見合うリスクの顧客層の多くは、
制度金融から締め出されて、いわゆるヤミ金に流れていく。この構図は変わらないはず。

だとすると・・・・・・・今回の改正って一体何なのか?っていう議論が
数年後湧き上がってくると思いますけどね。

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5 コメント

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Unknown (八重洲白黒)
2006-09-07 10:00:59
④だけで、必要かつ十分ですね。

叩かれるのを分かってても、ああいう案しか出しようがないのでしょう。
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個人的には (たかぴ)
2006-09-07 22:08:38
金貸しがビジネスとして成り立つのが根本的に気にくわないです。

そのための金利が、業者に不利に動くわけありませんね。

小さい頃から金なんか借りんなよって教わってきた自分には

貸金業者のCMから何から、ただの洗脳にしか見えません…。
返信する
健全な借り手の声は反映されたか (百花)
2006-09-09 00:25:50
有識者懇談会で消費者の声として反映されたのは、お金を借りたものの結局返せなくなってしまった人たちの声だったのではないか。自分が返せる金額を弁えて借り、地道に返している人の声は、誰も代弁しなかったのではないか。上限金利の低下によって、現在の利用者のうち何割かが締め出されるだろうが、結局いちばん割を食うのは、そういう地道に努力している人たちではないのか。
返信する
Unknown (kerogaso)
2006-09-09 18:50:13
はじめまして。私は消費者金融業界とは無関係ですが、おっしゃるように激変措置は必須だと思います。現在の利息制限法金利に近い線だと、中小金融業者は廃業せざるを得ないと思われますが、そこで働いている人もいるのですよね。また現在日本には多重債務者が200万人ほど存在すると推定されますが、これらの人たちはまともなところから借り入れができなくなるでしょう。自己破産者も増加するでしょうが、裁判所の処理能力が足りませんので、相当な混乱が予想されます。

今回の金利引下げの動機は、社会的な要請というよりもむしろ、大手銀行の収益源を確保することにその目的があるのではないか、と思ってしまいます。
返信する
Unknown (百花)
2006-09-10 00:36:52
三つのメガバンクのうち二つが大手消費者金融会社を持分法適用関連会社としているのですから、消費者金融会社への打撃は、メガバンクの連結収益にもマイナスに働くはず。



後藤田さんだって、今年の初めごろには、利息制限法の上限金利を出資法上限金利まで上げることも一つの考え方などと言っていたのに、何を今さらという気もしないでもありません。今回の改正がどうしてこんなに短期間で急進的な議論になったのか、私もよくわからないのですが、結局のところ、日本人は、金貸しが嫌いということなんじゃないですかね。東京都が銀行に外形標準課税を行ったときも、同じような心性が感じられましたね。



今回の改正によって、これによってヤミ金がますますうごめくようになるという消費者金融業界の言い分が正しいのか、多くの人がリーズナブルな金利で借りられるようになるということになるのか、壮大な社会実験が始まろうとしているような気がします。その結果として、財務アナリストさんが仰るように、数年後に、今回の改正の意義を問う声が沸き上がってくるということは、十分にありうることだと私も思います。
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