一病息災〜心房細動とその周辺

心房細動の治療は日進月歩。目に留まった記事の備忘録です。
他に、生活習慣病や自分に関係ありそうな健康問題も。

新型コロナ罹患後、循環器疾患は増加する?

2023年06月25日 15時06分52秒 | 心房細動
新型コロナ罹患後に血栓ができやすくなることは有名ですが、
循環器疾患に関してはどうでしょう。
罹患率が上昇すると耳にしたことがあります。
それをデータで示した報告を紹介する記事を見つけました。

なんと、罹患率も死亡率も2倍になるとのこと、これは大変!

▢ コロナ罹患後症状患者、1年以内の死亡/重篤心血管リスク増
ケアネット:2023/03/29
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染から1年間のコロナ罹患後症状(Post-COVID-19 Condition:PCC[いわゆるコロナ後遺症、long COVID])について、米国の商業保険データベースを用いて未感染者と比較した大規模調査が、保険会社Elevance HealthのAndrea DeVries氏らによって実施された。その結果、PCC患者は心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが約2倍上昇し、1年間の追跡期間中の死亡率も約2倍上昇、1,000人あたり16.4人超過したことが明らかとなった。
・・・
 米国50州の18歳以上の健康保険会員において、2020年4月1日~7月31日の期間にCOVID-19に罹患し、その後PCCと診断された1万3,435例と、未感染者2万6,870例をマッチングし、2021年7月31日まで12ヵ月追跡してケースコントロール研究を実施した。評価項目は、心血管疾患、呼吸器疾患、死亡など。PCCの診断は、疲労、咳嗽、痛み(関節、喉、胸)、味覚・嗅覚の喪失、息切れ、血栓塞栓症、神経認知障害、うつ病などの症状に基づいて行われた。統計学的有意性はカイ2乗検定とt検定で評価し、相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)を算出した。Kaplan-Meier法を用いて死亡率を算出した。
・・・
・PCC群(1万3,435例)の平均年齢は50.1歳(SD 15.1)、女性7,874例(58.6%)。PCC群のうち3,697例がCOVID-19診断後1ヵ月以内に入院していた(平均年齢57.4歳[SD 13.6]、女性44.7%)。未感染群(2万6,870例)の平均年齢は50.2歳(SD 15.4)、女性1万5,672例(58.3%)。
・PCC群はCOVID-19を発症する前に、高血圧(39.2%)、うつ病(23.7%)、糖尿病(20.5%)、COPD(19.1%)、喘息(中等症/重症)(13.3%)、高度肥満(10.3%)などの慢性疾患を有する人が多かった。
・PCC群の追跡期間中によく観察された症状は、息切れ(41%)、不安(31%)、筋肉痛/脱力(30%)、うつ病(25%)、疲労(21%)だった。
・PCC群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。
 -不整脈の発症率:PCC群29.4% vs.未感染群12.5%、RR:2.35(95%CI:2.26~2.45)
 -肺塞栓症:8.0% vs.2.2%、RR:3.64(95%CI:3.23~3.92)
 -虚血性脳卒中:3.9% vs.1.8%、RR:2.17(95%CI:1.98~2.52)
 -冠動脈疾患:17.1% vs.9.6%、RR:1.78(95%CI:1.70~1.88)
 -心不全:11.8% vs.6.0%、RR:1.97(95%CI:1.85~2.10)
 -末梢血管疾患:9.9% vs.6.3%、RR:1.57(95%CI:1.48~1.70)
 -COPD:32.0% vs.16.5%、RR:1.94(95%CI:1.88~2.00)
 -喘息(中等症/重症):24.2% vs.12.4%、RR:1.95(95%CI:1.86~2.03)
追跡期間中の死亡率はPCC群2.8% vs.未感染群1.2%で、PCC群は1,000人あたり16.4人の超過死亡となる。
・COVID-19発症初期に入院を経験したPCC群において、未感染群と比較して医療利用が増加した疾患は次のとおり。
 -不整脈:51.7% vs.17.4%、RR:2.97(95%CI:2.81~3.16)
 -肺塞栓症:19.3% vs.3.1%、RR:6.23(95%CI:5.36~7.15)
 -虚血性脳卒中:8.3% vs.2.7%、RR:3.07(95%CI:2.59~3.66)
 -冠動脈疾患:28.9% vs.14.5%、RR:1.99(95%CI:1.85~2.15)
 -心不全:25.6% vs.10.1%、RR:2.53(95%CI:2.32~2.76)
 -末梢血管疾患:17.3% vs.8.9%、RR:1.94(95%CI:1.75~2.15)
 -COPD:43.1% vs.19.2%、RR:2.24(95%CI:2.11~2.38)
 -喘息(中等症/重症):31.6% vs.14.7%、RR:2.15(95%CI:2.00~2.31)

 コロナ罹患後症状に関する米国での最大規模の追跡調査において、PCC患者は死亡率だけでなく心血管疾患や呼吸器疾患のリスクが有意に増加し、とくにCOVID-19発症初期に入院した人では肺塞栓症が6倍、脳卒中が3倍以上など、さらにリスクが高くなることが示された。また、本研究はワクチン利用可能以前のサンプルを用いているため、ワクチン普及後では、ワクチンのPCC緩和効果により、個人の医療利用パターンが変化する可能性もあると著者は指摘している。


<原著論文>
DeVries A, et al. JAMA Health Forum. 2023;4:e230010.


心房細動アブレーションの最新状況

2023年01月22日 14時43分14秒 | 心房細動
実は私、先日心房細動に対するカテーテルアブレーションを受けてきました。
その結果、心房細動が激減するとともにほかにも出ていた各種不整脈(上室性期外収縮、心室性期外収縮)も減り、
“ざわついてちゃんと動いてくれない心臓”から“沈黙の臓器”に戻ってくれました。
めでたしめでたし。

事前に検索した記事を紹介します。

▢ 心房細動アブレーション、日本の最新状況
J-ABレジストリの中間解析
2022年07月12日:メディカルトリビューン)より抜粋;
※ 下線は私が引きました。

 日本ではここ数年、カテーテルアブレーションの件数が年間10万件を超えている。東京慈恵会医科大学病院循環器内科教授の山根禎一氏らは、全国多施設前向き観察プロジェクト日本カテーテルアブレーション(J-AB)レジストリの中間解析を実施。その結果、日本における心房細動(AF)に対するカテーテルアブレーション(AFアブレーション)の現状、施行件数と治療成績との関連、地域差が明らかになったと、第68回日本不整脈心電学会(6月8~11日)で発表した。

心房細動アブレーションは推計で年間約7万4,000件
 J-ABレジストリは、日本におけるカテーテルアブレーションの現状把握を目的とした全国多施設前向き観察プロジェクト。日本不整脈心電学会と国立循環器病研究センターの主導により2017年に開始された。今年(2022年)5月には累積症例登録数が34万5,855人に達し、世界最大規模となっている。
 山根氏はまず、日本のAFアブレーションの現状を報告した。日本循環器学会循環器疾患診療実態調査(J-ROAD)によると、2020年、2021年に施行されたカテーテルアブレーションの総件数はいずれも10万件超。J-ABレジストリでは、カテーテルアブレーションの73.8%がAFに対するものであったことから、日本では年間約7万4,000件のAFアブレーションが施行されているという試算だ。
 アブレーションの対象となったAFの内訳は、発作性が59.3%、持続性が40.5%。AFの持続期間は、1週間~1年が58.4%と最多だった。
 追加アブレーションの種類は、下大静脈三尖弁輪間峡部(CTI)アブレーションが最も多く(59.3%)、線状アブレーション(41.3%)、上大静脈(SVC)隔離術(33.3%)、非肺静脈起源(Non-PV)トリガーアブレーション(7.1%)、心房分裂電位(CFAE)アブレーション(5.2%)が続いた

RFカテ+バルーン、女性、高齢、低BMI、心疾患が合併症リスクに
 AFアブレーションによる急性期合併症の発生率は2.74%、死亡率は0.06%で、海外の報告(それぞれ2.90%、0.06%)と同等だった。
 AFアブレーションの種類は、高周波(RF)カテーテルが67.8%、バルーンが21.9%、RFカテーテル+バルーンが10.4%だった。

 ロジスティック回帰モデルを用いて複数の因子を調整し、AFアブレーションによる合併症の危険因子を抽出した。
 解析の結果、合併症リスクとの間に有意な関連が認められたのは、RFカテーテル+バルーン〔調整オッズ比(aOR)1.58、95%CI 1.42~1.77、P<0.001〕、女性(同1.37、1.26~1.49、P<0.001)、高齢(70~74歳:同1.20、1.05~1.37、P=0.007、75~79歳:同1.42、1.24~1.62、P<0.001、80~84歳:同1.37、1.16~1.63、P<0.001、85歳以上:同1.63、1.23~2.15、P<0.001)、BMI 18.5未満(同1.28、1.09~1.50、P<0.003)、心疾患の既往(同1.55、1.41~1.72、P<0.001)だった。
・・・
アブレーションの患者選択に地域差
 さらに山根氏は、2017~19年の基礎調査(AF患者10万7,082例)のデータを用いて、AFアブレーションの地域差について検討した結果も提示。
 患者選択における都道府県別の違いを見ると、75歳以上の割合は7.4~34.2%と幅があり、関西地区(京都府、奈良県、徳島県、香川県、大阪府)で高く、東北地区(秋田県、岩手県、新潟県、山形県、青森県)で低かった。また、75歳以上の割合と10万人当たりのアブレーション登録件数との間には正の相関が認められた〔相関係数=0.54、P<0.001〕。
 持続性AFの割合は22.6~51.4%、沖縄県、宮崎県、群馬県、徳島県、兵庫県で高く、秋田県、山形県、岩手県、青森県、福島県で低かった。
 無症候性AFの割合は4.2~52.4%、和歌山県、沖縄県、静岡県、広島県、茨城県で高く、秋田県、岩手県、山形県、佐賀県、岐阜県で低かった。

急性期合併症、退院時再発にも地域差
 都道府県別のAFアブレーションによる急性期合併症、退院時再発を検討したところ、いずれも地域差が見られた(急性期合併症:0.81~5.32%、退院時再発2.14~25.90%)。
 複数の交絡因子を調整し、AFアブレーションによる急性期合併症リスクおよび退院時再発リスクの地域差に関連する因子を重回帰分析で検討。その結果、AFアブレーションによる急性期合併症リスクの地域差と有意に関連する因子はなかった。
 一方、AFアブレーションの退院時再発リスクの地域差では、唯一、10万人当たりのAFアブレーション施行件数との間に有意な関連が認められた〔標準偏回帰係数(β)-0.04、標準誤差0.019、P=0.036〕。他には、無症候性AFの割合、10万人当たりの専門医数が関連因子である可能性が示唆された。
 山根氏は「今回の報告はあくまで中間解析の結果である」と前置きした上で、「施設ボリュームと合併症および再発の真の関連を示すには、アブレーション施行件数が少ない施設を解析対象から除外することを検討する必要があるかもしれない」と
述べ、講演を終えた。

テストステロンの真実 〜謎多き男性ホルモン〜

2019年11月10日 12時38分45秒 | 加齢現象
 NHK-BS1で2019.9.25に放送された番組です。

 少し前に、同じNHKの番組で夫婦の危機に関する内容を見たことがあります。
 その時に印象的だったのは、妻の方が経済的優位に立ち、家も仕切っている夫婦の血液中テストステロン値を測定したところ、なんと妻の方が多かった、という衝撃的事実。
 確かに、その妻は草食系のおとなしそうな夫を叱り飛ばしていて、一般夫婦のイメージと逆になっていました。

 女性でも男性ホルモンであるテストステロンが分泌されていることは知っていましたが、微量であり、男性を上回ることがあることは知りませんでした。

 今回番組を見て、世界中の研究者がテストステロンの正体を見極めようと現在進行形で研究中であることがわかりました。
 研究者のコメントは断定的ではなく、「こういうデータがある」と紹介するパターンが多く、煮え切らない印象がありました。
 様々な可能性を検証しつつ、結局「テストステロンの作用は単純ではない」というどっちつかずの結論でした。

 ・・・その中でもとくに「!」と感じたのは・・・

「内臓脂肪はテストステロンをエストロゲンへ変えるので、テストステロン値は低下する」

 とりあえず、肥満はよくない、ということは確定。



内容紹介
 ドーピングで話題になるテストステロンだが、実は複雑な働きをしていることがわかった。筋肉だけでなく精神面にも作用するという謎の男性ホルモンに、最先端の科学で迫る。
 筋肉隆々のボディと結び付けられるテストステロン。男性ホルモンの代表で、スポーツ界のドーピングでも話題となるが、実際には、肉体だけでなく精神や行動に複雑な影響を与えることがわかってきた。テストステロンが多いと、気前が良くなるという実験結果も!しかしそれは善人になるわけではないらしい。さらに、脳の発育や言語能力にも関係するなど、欧米の最先端の科学的知見から、テストステロンの真実に迫る。



 印象に残ったことをメモしておきます。


テストステロンの分泌
・男性:精巣(ライディッヒ細胞)95%、副腎皮質5%
・男性の分泌は思春期になると急増し、その後はあまり変わらない。
・正常範囲:8-12nmol/ml
・女性は男性の10%程度。

テストステロン欠乏症
・テストステロンを使ったホルモン補充療法では、精子がうまく作れなくなる可能性がある。下垂体からのFSH、LHの刺激で精子が作られるが、外からテストステロンが補充されるとFSH/LHが分泌されず、精子が作られなくなる。
・子どもを望む場合は補充療法にゴナドトロピン(FSH、LH)を用いる。するとテストステロン生成と精子形成が可能になる。

テストステロン過剰症
・攻撃性/支配欲が増す(?)。

動物の観察研究:攻撃性とテストステロン分泌の関係
①チンパンジー(オス優位の社会)
・トップのオスがより攻撃的になり、それを周囲に示すようになったときに上昇
・妊娠可能なメスが集団に突然は行ってきたときに上昇
②ボノボ(メス優位の社会)
・オスはテストステロンが少ない方がメスと出会いやすい。

ヒトではテストステロンがどう行動に結びつくかよくわかっていない。
・攻撃性と関係あるという報告と、逆の報告が混在する。
・テストステロン=攻撃性、と単純ではないようだ。
・テストステロンが男性らしさと関係するというのは俗説で、データはない。

テストステロンは社会的ホルモンである。
・投与実験において、投与群では攻撃的になるほか、気前が良くなる、行動が寛大になることが判明。
・テストステロンは社会的地位を維持する行動に向かわせる。報酬系と呼ばれる脳の部位と関係があるようだ。
・他者への信頼とそれに対する反応を調べた実験では、投与群では社会性のある行動を取る傾向がある(利他的である)。社会性の発揮は権力の行使と捉えることもできる。

テストステロンは骨の成長に関与する。
・骨はテストステロンとエストロゲンの影響を受ける。

□ テストステロンの男女差
・羊水中のテストステロン濃度は、男児の方が女児よりはるかに多い。妊娠の早い段階からテストステロンの脳の発達への影響が始まっている。
・羊水テストステロン濃度が低いほど、2歳時の語彙が少ない。

テストステロンと父性
・子どもと楽しく遊んでいるときの父親のテストステロンは低下している。
・仲のいい夫婦の男性はテストステロンが低い。

男性更年期とテストステロン
・男性は若い頃と同じレベルのテストステロンを80歳まで分泌する能力があるので、女性と同じような更年期は存在しない。
・内臓脂肪はテストステロンをエストロゲンに変えるので、テストステロン値を低下させる(ほかにインスリン抵抗性、高血圧などを引き起こす)。生活習慣を見直し、内臓脂肪を減らすと元に戻ることが確認されている。

コルチゾール(副腎皮質ホルモンのひとつ)はテストステロンの影響が行動につながることをブロックする。
・デュアルホルモン仮説。

テレビ討論、糖質制限賛成派 vs 反対派

2019年10月23日 08時13分17秒 | グルメ
 先日(2019.10.4)、BS日テレ「深層ニュース」で、糖質制限派と反対派の討論がありました。
 推進派・賛成派は夏井睦氏(医師)、反対派は幕内秀夫氏(管理栄養士)。
 偶然、途中から見ることができました。

 視聴してみて、サイエンスとしては賛成派の夏井先生に分があると感じました。
 反対派は「粗食が日本人には一番」というイメージ以上の科学的反論ができないのです。
 「糖質制限は危険である」という主張も、1人のジャーナリストの死亡例にインパクトを置き、統計データが今ひとつ。

 まず基本ですが、

①炭水化物(食物線維+糖類)は消化吸収されるとすべてブドウ糖になり血糖値を上げる。
②血糖値を上げる効果は、多糖類、二糖類、単糖類に関係なく、トータルのブドウ糖に左右される。
③例えば、ご飯一杯、うどん一玉は、角砂糖(砂糖4g)に換算すると17個分である。
④砂糖とご飯の差は、血糖値が早く上がるか遅く上がるかだけで、必要とするインスリン量は変わらない。

反対派の幕内氏のコメントは、
①同意
②同意
③同意
④同意するが、「複合糖質は精製糖質より血糖値がゆっくり上がるから問題ない」とよくわからない反論に終始。だって、トータルのブドウ糖換算量が同じなら、使われるインスリンも同じでしょう?

 それから、「糖質制限でやせるのは栄養失調」と幕内氏。
 私には「?」です。
 究極の糖質制限食は、減量中のボクサーです。
 CMでよく見かけるライザップも糖質制限食です。
 彼らが“栄養失調”であるはずがない。
 栄養失調という誤解は、糖質を制限したカロリーを蛋白質で補えていないからに過ぎません。
 ご飯を食べない分、おかずを多く食べる必要があるだけ。
 すると、適正体重を保つことができます。
 ダイエット目的で糖質制限するのは肥満の方だけにすべきですね。

 最後の方に「日比野佐和子」という医師が登場しますが、科学的根拠のない自分ひとりの経験だけで“糖質制限は危険”と言っているようです。本当にそう思うなら、テレビに出たり一般書を書いたりしていないでガチンコ議論(科学的に証明した論文作成)していただきたい。世論を煽るだけなら、医師としての資質に疑問を持たざるを得ません。

 さて、皆さんの印象はいかが?


糖質制限ダイエットは安全か?…賛成派「食後の血糖値急上昇を防ぐ」 反対派「長期の低糖質食、死亡率高いデータも」
2019年10月18日:深層ニュースFRIDAY
 食欲の秋到来。「食べたい、でも、食べた分ダイエットしなければいけない」。そんなジレンマに陥っている方も多いのではないでしょうか。BS日テレ「深層ニュースFRIDAY」1回目のテーマは「糖質制限ダイエットは正しいのか」。糖質制限ダイエットの賛成派、医師で日本糖質制限医療推進協会顧問の夏井睦さんと、反対派、管理栄養士で『世にも恐ろしい「糖質制限食ダイエット」』の著者、幕内秀夫さんが激論を繰り広げました。(司会・右松健太キャスター)

夏井睦(なつい・まこと) 1957年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。相澤病院(長野県松本市)などを経て、2017年、「なつい キズとやけどのクリニック」開設。日本糖質制限医療推進協会顧問。著書に『炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学』(光文社新書)など。
幕内秀夫(まくうち・ひでお) 1953年茨城県生まれ。東京農業大学農学部卒業。管理栄養士。山梨県の長寿村・ 棡ゆずり原はら (上野原市)と出会って欧米模倣の栄養教育に疑問を持ち、伝統食と健康の研究を行う。フーズ&ヘルス研究所代表、学校給食と子どもの健康を考える会代表。著書に『粗食のすすめ』(新潮社)、『子どもをじょうぶにする食事は、時間もお金も手間もかからない』(ブックマン社)など。

◇ 繰り返すブーム

右松 夏井さん、ご自身も糖質制限ダイエットを実践されているということですね。

夏井 過去8年間、糖質はほとんど食べていないです。まずやせますね。あと頭が 明晰めいせき になる。二日酔いにならない。体力がつく。

右松 書店には、今ダイエット本といったら、「糖質制限」というキーワードが並んでいるものが多いんですが、そんな中で幕内さん、この糖質制限ダイエットに反対する理由は何でしょう。

幕内 ブームは、もう何回も繰り返しているんです。古くは40~50年前、「和田式ダイエット」というのがありまして、それが最初で、その後、「世にも美しいダイエット」とか、あるいはアメリカから来た「アトキンスダイエット」とか、みんな主張は多少違うんですが、穀類、イモ類とかご飯とか、そういうものを抜くというのは大体共通するんです。大体は「痛い目」を見た人が話題になるようになり、ブームは終わります。
 今回のブームは、京都・高雄病院の江部(康二)先生が、2005年に『主食を抜けば糖尿病はよくなる!』という本を出したのがきっかけです。そのころは、「糖尿病」という冠がついたんです。それが今、どんどん2匹目、3匹目のドジョウの情報が多くなって、糖尿病からダイエットに裾野が広がって、最近は、大人から子供、誰でもいいという話になってきている。私は電車に乗ったとき、小学生の女の子が「私、ご飯を抜いて糖質制限食ダイエットをやっているの」というのを聞いたんですよ。こんなことでいいのか、非常に危険なブームだと考えて本を書いたんです。

右松 山口さんは、今回の議論について、どういったところが興味深いですか。

山口博弥・読売新聞編集委員 「ヨミドクター」で糖質制限ダイエットを取り上げると、かなり反響があるんです。今、幕内先生がおっしゃいましたように、確かにこれまでいろいろな低炭水化物ダイエットとか、糖質制限ダイエットが出てきましたけれども、今回のブームは、いろいろな糖質ゼロの商品が出たり、私の周りでも実際に実践している人が結構いたり、かなり市民権を得ている感じがするんですね。だからこそ、健康への悪影響がもしあるのであれば、ちょっと心配です。

◇ 脳に作用 ドーパミン分泌

久野静香アナウンサー そもそも糖質制限ダイエットとは、エネルギー源となるタンパク質、炭水化物、脂質のうち、主に糖質が多く含まれる炭水化物をカットするダイエット法です。糖尿病の患者に対して考えられたものだったんですけれども、減量効果が高いことからダイエットにも活用されることになりました。

右松 糖質、炭水化物は、そもそもどれだけ肥満の原因になっていたと分析されているんでしょうか。

夏井 軽いご飯1杯で角砂糖17個分ぐらいの糖質になっちゃうんですよ。ブドウ糖換算ですけれども。17個の角砂糖って食えないですけれども、ご飯は食えるんですよ。それが怖いんです。糖質は炭水化物の一部なんですけど、糖質を食べますと、すぐに小腸から吸収されて全部ブドウ糖になります。ブドウ糖になると、血管の中に入って血糖値が上がります。血糖値が上がるというのは非常に体に危険なんですよ。血管にダメージを与える。
 それに対応して、体はインスリンを作るんですよ。インスリンを分泌することで、糖質を中性脂肪に変えちゃいます。その中性脂肪が肝臓に行くと脂肪肝になるし、皮下脂肪に行けば当然、肥満になるんです。
 血糖値が上がったときは、脳の一部に作用して、ドーパミンというホルモンが出るんですよ。ドーパミンが出るとすごい幸福感なんですね。快楽中枢といって、たばこ、薬物、アルコールは、そこに働いてドーパミンが出るんですけれども、実は血糖が上がった場合も同じ。血糖値が下がると、今度はドーパミンは出なくなってしまう。そのリバウンドでイライラし、糖質をまた食わないとおさまらない。だから、一日中食っている。

右松 なるほど、それが糖質過多になってしまう原因といえるかもしれないんですが、食べていいもの、食べてはいけないものは具体的に何でしょうか。

夏井 米、小麦、トウモロコシ、砂糖などがだめ、それだけですね。逆にそれ以外だったら何食ってもいいじゃんと。

◇ やせるのは栄養失調だから

右松 一方で、幕内さん、いわゆる大切な栄養素、タンパク質ですとか脂質、炭水化物はしっかりとったほうがいいよということは、何となく小さいころから学習しているんですが。

幕内 そのとおりだと思います。なぜ糖質制限食ダイエットでやせるかというと、我々は糖質、脂質、タンパク質を主なエネルギー源にしているわけですね。これがどこかに偏ると、それは質的な栄養失調ですからやせます。例えば、玄米菜食主義、肉も魚も卵も牛乳も動物は一切食べないなんていうことを実践する人がかつては結構いました。みんな、がりがりにやせます。スマートじゃなくて。あるいは、今でもフルーツダイエットというのを指導している先生がいます。一日中、果物だけを食べる。だから、糖質制限食の逆で糖質過多、これもやせます。だから、一つに偏るとやせるんですね。栄養失調だからやせるんです。
 ただ、現在の食生活が糖質過多になっているというのは私も同感です。高脂肪、高カロリーも問題ですが、どちらかというと、私も高糖質のほうが影響は大きいと思っています。

右松 悪い影響が大きいということですか。

幕内 肥満の原因も。そこは同じです。ただ、違うのは、同じ糖質源でも、夏井先生は、米もそばもサツマイモも……と。私はむしろ、今の問題は、白砂糖とか異性化糖というようなジュースに入っている砂糖ですね。そういうものが過剰になったことが、最大の問題だと私は思っていますけどね。

夏井 でも、ご飯もそばも小腸で全部グルコースになりますよね。

幕内 それはそうです。

夏井 そうすると、体に入って血糖が高くなりますよね。食後の高血糖スパイク(短時間に血糖値が急上昇すること)が一番危険だと言われていますけども、危険じゃないんですか。

幕内 これは糖質の吸収速度の問題なんです。

夏井 あなたが言っている複合糖質(穀物など)を食べていると、食後の高血糖スパイクは起きないんですか。

幕内 いや、それは起きますよ。

夏井 起きますよね。危険でしょう。

幕内 穀類やいも類を食べれば血糖値が上がるのは当然です。問題なのは複合糖質に比べて、精製糖質は急激に血糖値を上げてしまうことです。

右松 先ほどご飯1杯分が角砂糖17個、当然、角砂糖を17個食べたことはないんですが、毎日のようにご飯1杯は食べるわけで、精製糖質と複合糖質、この違いは何なんですか。

幕内 要するに、水分とか食物繊維とかビタミンとかミネラルとかを含むものが複合糖質なんですね。砂糖は、ほぼ100%近く糖質なわけです。薬品並みの純度なわけです。こういうものは自然界にあり得ないんですね。その違いは大きいと思っています。

食後の高血糖スパイク 血管にダメージ

右松 なるほど。山口さん、ここまでごらんになって、いかがでしょうか。

山口 ちょっと私、お聞きしたいんですけれども、角砂糖17個とご飯1杯、どう考えても、ご飯1杯のほうが体には悪くないと素人考えでは思うんですけれども、なぜ先生は同じように害があると。

夏井 ご飯は口から食べて唾液で麦芽糖という糖にまず変わるんですよ。それが小腸でアミラーゼによってブドウ糖に変わります。つまり、食べたご飯はブドウ糖に変わっちゃうんですよ。複合だろうが、純粋な砂糖だろうが、行き先は同じなんですよ。あとは量の問題だけです。しかも、今一番怖いと言われているのは食後の高血糖スパイクなんです。食後に血糖値がぽんと上がって、それが血管のダメージを起こす最大の要因と言われている。量の多い少ないじゃなくて、食後の高血糖スパイクをまず抑えることが先決であろうと。

山口 では、ご飯を1杯食べるのと角砂糖17個を食べるのは高血糖スパイクを起こすのは同じ……。

夏井 どっちも起こします。時間が早いか遅いかだけで、ブドウ糖になる量は同じですから、結局、中性脂肪に変換される量も同じなんですよ。

幕内 多くの学者が言っているように、スピードが違う。複合糖質の場合は食物繊維やビタミン、ミネラルなどを含むので、消化吸収が緩やかなわけです。砂糖とか異性化糖というジュースに使っている砂糖なんかは急激に吸収するわけです。その差が大きいというのは、ある種常識だと思います。最終的には、おっしゃるようにブドウ糖になりますよ。両方血糖は上がります。ただ、上がり方が精製糖と複合糖質では全然違うということなんです。

◇ 「長期の低糖質食は、死亡率が31%高くなる」というデータも

右松 ここからは糖質制限ダイエットが与える体への影響について伺っていきたいと思うんですが、幕内さん、この糖質制限ダイエットが体に悪い影響を与える心配はあるんでしょうか。

幕内 短期間で減量できることは間違いないです。ただ、問題は長期的にやったときどうなるか。ところが、日本人で長期的にやった人はほとんどいないわけです。

右松 このあたり、夏井さん、いかがですか。

夏井 全く安全だと思いますけど。

右松 その根拠は。

夏井 僕は今8年間で、江部先生も20年近いと思いました。20年やって何ともなければ、20年大丈夫じゃないですか。

幕内 みんな数名の話ばかりなんですよ。大規模調査が必要です。日本ではまともな調査は一つもありません。実践者があまりにも少ないので。ハーバード大学が、何と13万人も、しかも女性は26年間、男性は20年間、糖質の多い食事と少ない食事を実践して、そのデータを発表しているんです。それによると「糖質が少ない人たちは非常に死亡率が上がる」と。これが多分、最大のデータだと思います。
 日本でいえば、国立国際医療研究センターが出しているデータも、低糖質の人は死亡率が31%高いと。ただし、これも外国の文献を参考にして解析して出したやつなんですよ。日本では、低糖質の食事をしている人がほとんどいないため、調査が難しいんです。

◇ おかず主体は塩分が心配

右松 糖質制限ダイエットというと、食べるものが相当、偏ってしまう。お米やパンを制限するということは、一方で、魚やお肉に食事が偏ってしまうということで、体に悪い影響があるのではないかな、と思う部分もあるんですが。

夏井 だから、これは、自分の体で人体実験してみたんですよ。データがなければ自分で出しますから。もちろんやりたくない人はやめればいいだけの話で、だから、僕が先頭に立って、毎年、血液検査とかやって、ストイックに糖質制限をして、体調はすごくいいということも公開している。江部先生も、年に何回か自分の血液検査のデータを公表していますよね。ほかにもそうやっている人が何人もいて、先頭に立って自分の体で実験しましょうという根性がある人が今ちょうど20年目に入っているんですよ。あと10年たてば30年のデータになる。

右松 それは確かにそうなんですが、個人の体質もあるので、これが多くの方に当てはまるかどうかが、一つの大きな問題かとは思うんですけれども、山口さん、いかがでしょうか。

山口 一つ、夏井さんにお聞きしたいんですけれども、私も本当に緩やかな糖質制限をやっていますけれども、ご飯を食べないと、どうしても、おかずをその分増やしますよね。特に外食だと、塩分がどうしても気になるんです。塩辛い、濃い味つけが多いので。私の同僚で、私よりも厳格に糖質制限をやっている人がいるんですけれども、彼はやはり血圧がちょっと上がったというんです。体重は落ちるけど、塩分過多と高血圧ということに関してはどうですか。

夏井 僕に関しては、ご飯を食べない分、食事が薄味になりますね。日本食というのは、ご飯を食べるための主食と副食という考えなので、おかず、副食の味つけがどうしてもしょっぱくなるんですよ。ご飯を食べるために塩分が増えたという側面もあると思います。

◇ 体験者「ダイエットで命の危機」

右松 糖質制限ダイエットを実践し、命の危険に陥ったと訴える方がいらっしゃいます。医師の日比野佐和子さんなんですが、お話を聞いてきたのでごらんください。

ナレーター 日比野さんは糖質制限ダイエットを行い、3か月で17キロの減量に成功、楽にやせられることに喜びを感じていたといいます。しかし、開始から3年後、体調に異変が……。

日比野 朝起きたときに右手と右足が全く動かなくて、立とうとすると、本当にふにゅっと体がこんにゃくみたいに感触すらないんですね。「救急車も呼べるのかな?」というぐらい危険な思いをしました。

右松 そのときはどのような診断を受けたんでしょうか。

日比野 一過性脳虚血発作と言われまして、要は脳梗塞こうそくの一歩手前の状態だったみたいでして、それが長く続いていると、脳梗塞という診断になって、後遺症が残っていたかもしれないですね。

ナレーター こちらは日比野さんが当時食べていた普段の食事です。糖質を抜き、大好きな肉、そしてチーズが中心のメニュー、こうした糖質制限ダイエットが異変を招いたのでしょうか。

日比野 当時のドクターもそういうふうに考えていたと思います。やはり普段の食事について聞かれまして、そういう糖質制限でお肉と油を好きなだけ食べていたという話をしましたら、もうその食事自体が原因だと言われました。
右松 現在、バランスのよい食事を心がけていると日比野さんは話していたんですが、幕内さんは、この倒れた原因は糖質制限にあったんじゃないかとお考えですか。

幕内 食事の問題は、因果関係がはっきりしないんですね。ただ、あそこまで極端な食事をすれば、脳梗塞とかの危険性は当然、あると思います。「誤った方法をやった」と話す人がいるんですが、そうじゃないです。糖質制限食を本当に継続してやってしまったからです。この方は恐らく、日記を見てみないとわかりませんが、本気でやってしまった結果が出ただけだと思います。

右松 夏井さんは。

夏井 私は本気でやっていますけれども、起きていないんです。

幕内 それは個人いろいろです。九州の脳の専門のドクターがインターネットで調べたものを発表しています。糖質制限食で脳梗塞を起こした人たちを画像つきで発表しています。ただ、それでも因果関係は断言はしませんよ。

夏井 脳虚血発作というのは誰にでも起こるんですよ。あなたにも今日、起こるかもしれないし。だから、たまたまの合併だと思います。

◇ 「頭がぼーっとする」症状は?

右松 糖質制限ダイエットをしますと、「頭がぼーっとする」といった症状を訴える方もいらっしゃいます。

夏井 ブドウ糖が脳のエネルギー源とよく言われていますが、あれは半分正しくて、半分間違いなんです。というのは、肝臓で脂肪を分解してつくられるケトン体は、エネルギー体なんですけれども、こちらのほうが脳ではメーンなんです。

右松 このケトン体というものが出ることによって、体はどうなっていくんでしょうか。

夏井 特に問題はないと思います。人間の胎児を調べた先生が千葉県にいらっしゃいます。彼の出した結果では、胎児のエネルギーはケトン体だそうです。特に脳の発達に必要であると。

幕内 ケトン体に関しては賛否両論、全くわからないというのが本当のところだと思います。ケトン体だけを見れば、果物臭で異様なにおいがします。だけれども、それが糖質制限食にしたことによって、そんなにおいになったのかというと、私はわからないと思っています。

右松 ケトン体は、普段の生活の中に出てこない言葉ですが、これが体の中に分泌されていくことは全く安全という……。

夏井 全く安全です。

幕内 いや、先ほど言ったようにわからないです。ただ、かなり危険だと言っている人もいます。

右松 糖質を制限することと、頭がぼーっとすることとの因果関係は……。

夏井 ないですね。僕はないと思っています。

幕内 ただ、先ほど言ったように栄養失調なので、なくはないと思います。

◇ 自分の体と向き合って

右松 夏井さん、安心してできる糖質制限ダイエットというのは、どういったものなんでしょうか。

夏井 まず、一番最初にやりやすいのは夜。朝、昼は難しいので。

右松 確かに、どうしても朝ご飯は。

夏井 昼ご飯も難しいんですね。ところが、夜というのは、これからの時期、一番いいんですよ。なぜかというと、鍋物。大体、低糖質なんですよ。お肉が入っている、お魚が入っている、野菜は葉物が多い。締めのご飯を食べない。締めの麺類を食べない。
 まず、とにかく夜はやめてみると。そのときに重要なのは、自分の体調の変化に注意することです。人それぞれですけれども、自分で体調がよかったら、次に進めばいいんですよ。

右松 まず自分の体と向き合ってということ。

夏井 僕は自分の体を実験台にして、少しずつ始めてみたんです。そうすると、まず夜だけカットしてみて調子がいい。朝も寝起きがよくなった。次は、朝をカットしてみるんですよ。朝も自分でコントロールできますから、これはある程度できますね。ただ、難しいのは昼なんですよ。サラリーマンの昼飯は、みんな糖質ですから。

右松 確かに。

夏井 麺やカレー、丼だと。だから、昼は目をつむっちゃうんです。

右松 幕内さんはこの糖質制限の方法については、どのようなご見解をお持ちですか。

幕内 先生がさっきから「私は」とか「誰は」と言っていますが、一番忘れちゃいけないのは、ほぼ毎日糖質をとってきて100年生きてきた人が6万、7万人もいること。圧倒的に数が違うわけです。そのことを忘れちゃいけないと思います。
 私は本をたくさん書いていますが、ダイエットの本は絶対書いちゃいけないと思っています。体にいい食事を提案するならともかく、特別な病気がない限り、体重を目的にするような食事は、私は絶対に勧めません。私は診療所でも、無生理とか不妊症とか貧血とか、そういう女性をたくさん見てきました。糖質制限食に限らず、ダイエットで失敗した人たちをたくさん見てきたんです。体にいいのは、ご飯中心に、野菜、魚といった和食中心の食事をすることであって、その結果としてやせている人は体重が増えたほうがいいし、体重があり過ぎる人は減るほうがいい。体重を目的とした食事はやってはいけないと思っています。

◇ 心や体と会話をしながら

右松 さあ、番組をごらんの皆様から多くの意見が寄せられています。久野さん、紹介していただけますでしょうか。

久野 はい。「リバウンドの悪影響が、ほかのダイエットと比較して安全かどうか気になる」ということです。私も糖質制限ダイエットをやって、やめたらすぐリバウンドしてしまったんですね。そのリバウンドのしやすさというのは?

夏井 これはもう糖質の中毒症みたいなものなんですよ。なので、やせることを目的にしちゃうと、やめるとリバウンド、これは当たり前なんです。糖質をとらない体にだんだんなれていくしかないんですよ。

幕内 肥満とか糖尿というのは、日本よりアメリカとかカナダとかオーストラリアがすごいわけですよね。やはり先生がおっしゃるように、糖質は依存性があってやめられない。それなら、100円のジュースを300円にしちゃえと。アメリカのいくつかの州やメキシコは、既に「ソーダ税」を実施しています。これは、精製糖が入った飲料水に対するものです。穀類やいも類の消費を減らすような対策が検討されている国はどこにもありません。

右松 ダイエットをするのは、健康で美しい体を手に入れたい、人生を豊かにしたいということだと思うんですが、結果的に不健康になってしまったり、リバウンドしてしまったりすると、本末転倒です。自身の心や体と会話をしながら、何がいいのかを考えていただきたいと思いました。

(2019年10月4日放送)

視力と認知症

2019年10月06日 13時36分37秒 | 加齢現象
 認知症を扱うテレビ番組で、「聴力が落ちると認知症のリスクが上がる」と解説していました。
 そのカラクリは、

・聴力が低下すると、脳の聴覚野への刺激が減り、その部位が脳萎縮をきたす。
・脳萎縮は認知症の陸スとなる。

 というものでした。

 では視力はどうなんだろう?
 と素朴な疑問を持ちました。

 それに関する記事を見つけました。
 思った通り、視力低下は認知症の発症リスクが2〜3倍上昇する、とありますね。

シニアに必要な視力の健康
ケアネット:2019/10/01
視力が弱ると認知症も増える
 講演では飯田 知弘氏(東京女子医科大学医学部眼科 教授)を講師に迎え、「人生100年時代を生き抜くための『眼の健康』」をテーマに、高齢化に伴う眼の疾患について説明した。
 これからの人生は100年時代であり、政府も「いくつになっても学び直しができ、新しいことにチャレンジできる社会」を目指し、シニアのさまざまなチャレンジを後押ししていると説明し、そのためには「健康」であることが重要と述べた。
 健康を保つポイントとして、健康寿命と平均寿命には差がある(男性9.13年、女性12.68年)ことを示し、この差を短くすることが重要と指摘した。また、シニアにとって認知症は大きな問題である。世界保健機関(WHO)が策定した「認知症予防指針」によれば、「有酸素運動」「多量の飲酒を避ける」「血圧を維持」「血糖コントロール」「体重を一定に保つ」「適度な休息」など12項目があり、わが国も認知症施策推進大綱を発表し、本格的に取り組みを開始したことを説明した。同じく、認知症の発症関連リスクとして「難聴」「高血圧」「肥満」「喫煙」「うつ」など9つの因子があり、これらの抑制ができれば発症を35%抑制できると語った1)。
 一方で、視力と認知症の関係について研究した藤原京スタディにも触れ、加齢とともに視力不良と認知症が増加し、視力不良の患者では認知症の発症割合が約2~3倍高いことを指摘した2)。
シニアは気を付けたい白内障、緑内障、加齢黄斑変性
 次に眼の働き、仕組みについて触れ、わが国の視覚障害の原因疾患は、緑内障(28.6%)、網膜性色素変性(14.0%)、糖尿病網膜症(12.8%)、黄斑変性(8.0%)、 脈絡網膜萎縮(4.9%)の順で多く、その中でもシニアの視力障害では、「白内障、緑内障、加齢黄斑変性」の3つが挙げられると同氏は指摘した。
 「白内障」は、水晶体が濁ることで起きる視力障害で60歳を過ぎると80%以上、80歳を過ぎると100%で症状が認められる。主な自覚症状として、かすみ目、明るいところで見えにくい、ピントや眼鏡が合わない、2重3重に見えるなどがある。
 「緑内障」は、眼圧が高くなり、視神経が障害される疾患。主な自覚症状として、視野が狭くなったり、部分的に見えなくなったりする。正常眼圧でも起こるケースもあり、日本人に多いという。自覚症状に乏しく、気付きにくいため、定期的な眼科受診が勧められる。
 「加齢黄斑変性」は、50歳以上で、加齢により網膜の中心部である黄斑に障害が起こる疾患。欧米では成人の失明原因の1位となっている。主な自覚症状として、視野の中心部が歪む変視症や視野の中心部が黒くなる中心暗点がある。
 これらの疾患の治療では、手術が必要となるが、白内障手術により視力が回復することで、認知機能の改善が認められた報告3) もあり、健康の維持には、視力の維持も重要であると指摘した。
 同氏は、まとめとして100歳まで健康な視力を維持するために、「病気のことをよく知る」「定期的に眼科受診」「早期発見、早期治療が大切」と3項目を示し、「『人生100年時代』生き生きとした生活を送るためには眼の健康が大切」と強調し、講演を終えた。

■文献
1) Livingston G, et al. Lancet. 2017;390:2673-2734.
2) Mine M, et al. Biores Open Access. 2016;5:228-234.
3) Ishii K, et al. Am J Ophthalmol. 2008;146:404-409.