セパ-ジュと俳優さん
平日の昼、トゥル-ズのフレンチレストランでのことでした。
ソムリエさんのおすすめでグラスワインを注文、
(ワインはちょとうるさいぞ!という感じで)グラスをゆっくり回し、
口に含んだ後、口をすぼめて空気を
いっぱい入れて、香りを楽しめるようにごくん。と。
「マズ~い !!(こんな白ワインは今まで飲んだことがない !!)」
返品かなと思ったが、そこはぐっとこらえた。
(よくあること。どうせ安物のグラスワインなんだ、、
星付きのレストランではないので仕方ない!と自分に言い聞かせた。)
そして前菜がサービスされ、先ほどのこの不味い代物に再度口をつけた 。
ところが、「なななん~と!!」
「先ほどの不味いオバケは見事な変身」
一口目が強い苦みを感じたのに、2口めは、食事の引き立て役に早代わり。
ワイン自身も大変身。
一体何物なのか?このワイン。
ソムリエ曰く、地元フランス南西部から、直納されたワイン
‘’コリウ-ル‘’らしい。
コリウ-ルの主体のアペラシオン(「原産地統制呼称」)は、
「グルナッシュ・グリ」というセパ-ジュ(ブドウの種類)。
グルナッシュ・ブランの従兄で、単一品種として、瓶詰されるのは
比較的稀だそうだ。まさに一隅の出会い。
このセパ-ジュは役者で言うと主役俳優ではなく、
大部屋の俳優さんと言えなくもない。
こうしてみると、ワイン市場と映画の世界に何らかの共通点が見いだされてくる。
映画監督はワインの生産者、映画の脚本家がワインの杜氏さん、
そしてセパ-ジュが主演俳優又は脇役、その他の出演者。という具合だ。
なぜ名もない俳優さんである、グルナッシュ・グリが主演男優として登場してきたのか?その背景には、いくつかの理由が考えられる。経済的背景、消費者心理、などなど。
近年世界でワイン愛好家が急増し、市場は分かりやすく、親しみやすく、
気軽に手軽に楽しめるワインの登場を待ち焦がれていたからだろう。
フランスワインの味表現で最もよく使われる説明に、(味の)「複雑性」
という言葉があるが、私にしてみれば この言葉は味だけではなく
ワイン産地や種類にも当てはまると考える。
ラベルを見ただけでは何が何だかよく分からない。
中国では、ここ10年でワイン愛好家が急増。
観光で来仏した彼達がお土産にワインを買い求める際、大きな字で単純に
「ボルド-」と明記されているワインを盛んに買い求めたといわれている。
当時の中国市場では「シャト-〇〇」と書かれていても何のことだか
よく分からなかったからにちがいない。
商品自体が見た目で「複雑」だったからだ。
大きな字で「フランス」「ボルド-」と書いてあるだけで十分だったのだろう。
一方でチリなどに代表される新興国ワインメーカ-はこの2文字を
使えないのでセパ-ジュをきちんと明記して、手軽な価格で販路を拡大する
しか術はなかったのだろう。そして今や世界中の人々が、セパ-ジュの知識を少しずつ得、
自分の好みのセパ-ジュが何なのか?と言った未知の世界への探訪がこうして始まっていく。
マ-ケットは「複雑怪奇な世界」から「単純明快な世界」へと変化していく。
この新興国の大きなうねりは、フランスワインメーカ-にも大きく影響を与える。
彼らに低価格で分かりやすい「セパ-ジュ」ものワインを作らせ、
更に世界的な競争力を加速させてゆく舞台づくりをさせていくことになる。
さて最後に、私がテイステイングした コリウ-ルのメーカ-の商品説明概要を
下記のようにまとめておきます。
「隠されていたものが明らかになるワイン。ワインの花の花束 シトラス(柑橘類)の調べ。
入口(1口目、業界ではファーストアタックと言います、)は表現力豊かで アロマの香りいっぱい。果物をかんだ時の感じに似ている。
シトロンの実、すなわちソフトでニガイ酸味。でもその酸味は圧倒的な苦い酸味ではなく、適度で心地よいインパクトがある。」
(フランス人ってやっぱり言葉巧みですよね!イタリア人もそうだけど、、、。この両国が、実は毎年世界のワイン生産量の1位2位を争っているのだ。)
この個性的なワインに適した料理は、ロット(タラの1種)のタジン、タイカレ-、
または香辛料がよく効いたタパス。だそうだ。
ある有名な3ツ星レストランのシェフが「私はカレ-が大好きだが、カレ-に適したフランスワインはないんだ!!!!」と断言していました。
彼はこの癖のあるワインを知らなかったんですね、きっと。
参考サイト
セパ-ジュ : https://www.terroirum.com/ja-jp/wine_term/cepage/
コメント関連 : http://vinicuest.com/wine_articles/2016/09/24-sep-2016.html
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