♪Le chat des bois♪

人生の苦しみから避難する方法がふたつある。
それは音楽と猫である。
(アルベルト・シュヴァイツァー)

華麗なるメトロポリタンオペラ 4夜連続放送

2009-09-22 | Cinema & TV
~華麗なるメトロポリタンオペラ~

4夜連続でニューヨークの歌劇場メトロポリタンオペラの舞台を紹介するシリーズ(ハイビジョン)。


トリスタンとイゾルデ(ワーグナー)
10月11日(日) 午後8:00~午前0:35

第1日目はワーグナーの超大作「トリスタンとイゾルデ」。
毒薬と思い込み媚(び)薬を飲んでしまった2人の“禁じられた愛”を描いたこの作品は、ワーグナーの中でもトップクラスの人気を誇るが、同時にタイトルロール2人にかかる負担もまた圧倒的である。
今回もトリスタン役の歌手がキャンセル、急きょベルリンからロバート・ディーン・スミスを呼んでの上演となった。
イゾルデ役はすでにワーグナー・ソプラノとして定評があるものの、METでイゾルデを歌うのはこれが最初となるデボラ・ヴォイト。

太り過ぎでオペラを解雇され、胃の縮小手術まで受けてダイエットに成功し、見事にオペラに復帰したのは超有名なハナシ。。

全編にわたって官能的な音楽にあふれているが、中でも2幕の長大な愛の二重唱が最大の聞きどころ。
演出はディーター・ドルン。三角に張られた純白の布に、鮮やかな照明が映え刻々と変化するさまを、映像ディレクターがマルチ画面を駆使して多方向から切り取る画面構成も見どころのひとつ。
幕間のインタビュアーはメゾソプラノ歌手のスーザン・グレイアム。
歌手の本音やキャスティング事情など、めったに知る機会のない裏方の世界を楽しく案内してくれる。


ボエーム(プッチーニ)
10月12日(月) 午後10:00~午前0:35

数あるオペラ作品の中でも特に高い人気を誇る「ボエーム」。
今回は、現代最高のオペラ演出家の一人、フランコ・ゼッフィレルリによる豪華けんらんの舞台をお楽しみいただく。
第1幕、パリの屋根裏部屋に集う貧乏な芸術家たちがクリスマスを迎えようとしている。
階下に住むお針子のミミは、ロウソクの火をもらいにやってきて、詩人ロドルフォと出会う。
今回の演出では、ミミが愛らしさの中に少しちゃっかりしたところもある女性として描かれており、意外と積極的にロドルフォの気持ちを受け止める。
ここで二人が引かれ合う様子はほほえましい。
うっかり手が触れあってロドルフォが歌う「冷たい手を」とミミの「私の名はミミ」は、聞き逃せない名アリア。
この曲を目当てにこの作品を見る人も多いかもしれない。
ミミは人気ソプラノ、アンジェラ・ゲオルギウ。持ち前の演技力で見る人を引き込む。

ラモン・ヴァルガスの歌うロドルフォもミミへの思いが暖かい歌唱の中に表現されている。
そして第2幕、歌の魅力もさることながら舞台転換は圧巻。群衆が2階建ての大がかりなセットで歌う様は、メトロポリタンならではのものだろう。
イタリア人指揮者のルイゾッティが大きな流れの音楽を聴かせる。


マノン・レスコー(プッチーニ)
10月13日(火) 午後10:00~午前0:50

イタリアの巨匠プッチーニの歌劇「マノン・レスコー」。
美しいメロディ―が随所にあふれているこの作品は、プッチーニの出世作とも言われている。
聴き所はさまざまだが、なんといってもファム・ファタールの典型であるマノンを演じるカリタ・マッティラの情熱的な表現だろう。


幕開けは18世紀後半のフランス。マノンが修道院入りしようとするところから舞台は始まる。
美しいマノンに心奪われた騎士デ・グリューは、マノンを連れて逃げようとする。第2幕では、マノンはすでにデ・グリューとの貧乏な暮らしに飽きて財務官の愛人となっているが、ぜいたく三昧(ざんまい)の日々もまた、空しいものだった。デ・グリューとのささやかではあっても幸せだった生活に思いをはせていた時、マノンはデ・グリューと再会する。
しかし裏切りの先に待っていたのは、遠い地アメリカへの流刑であった。
第3幕と第4幕では悲惨な運命をたどるマノンとデ・グリューが描き出されている。
ストーリー展開こそ完成度は高くないが、カリタ・マッティラとデ・グリュー役のマルチェルロ・ジョルダーニの情熱的な歌が胸を打つ。
ジーナ・ラピンスキーの演出もアメリカの荒野すら美しいと感じさせ、見ものである。


ピーター・グライムズ(ブリテン)
10月14日(水) 午後10:00~午前1:00

イギリスの作曲家、ベンジャミン・ブリテンの代表作にして現代オペラの傑作。
イングランド東岸のとある架空の漁村を舞台に、そこに住む村人と偏屈者の漁師の対立を軸にしながら、貧困や児童虐待といった社会問題、あるいは集団と個、故意と過失、博愛精神とエゴイズムといった抽象的で深刻なテーマを扱った作品で、それまでのオペラとは異なる、重い感銘を見る者に与える。
タイトルロールはかなりの難役で、歌唱もさることながらそうした重いテーマを背負うに足る存在感や演技力が必要とされる。
この「グライムズ」でタイトルロールを演じるアンソニー・ディーン・グリフィーは、自ら「この役をやるために生まれてきた」と言うほどのはまり役で、グライムズになり切った熱演を見せている。


指揮はオペラのスペシャリストで、今シーズンからベルリン・ドイツ・オペラの音楽監督に就任したドナルド・ランニクルズ。
独特のうねりと情景描写力のあるブリテンの音楽をドラマチックに表現している。
幕間には、ソプラノ歌手ナタリー・デセイによる歌手、演出家、指揮者へのインタビューのほか、この作品が生まれるに至った経緯をミニ・ドキュメンタリー形式で振り返る場面もある。

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