煩的ひとりごと

定期更新型ゲーム False IslandについてPL視点から呟きます。
煩悩が人より多いらしいです。

探索3日目

2007-05-27 04:17:38 | 偽島2期日記(PC視点)
(探索3日目)

かん、かん、かん、かん………


絶え間なく響く、槌の音。


振り上げては降ろす。時折火花が散る。
薄い闇の中にランタンの光、そして不思議な光。
火花は三つの色彩に混じって溶ける。


かん、かん、かん、かん。


また火花が生まれる。
それは金属と金属とがぶつかる音。

そう、僕は今金属を補修しているところ。

それも単なる金属ではない。
ケイロンさんの身体の一部……いわゆる装甲。
材質は鋼のようだけれど、内部から不思議なエネルギーが漏れていた。
この力には覚えがある。属性霊の力の1つ、光霊の力。

不思議な感覚だった。槌を振るうたび、光霊の力と鋼が混ざりあってケイロンさんの身体になってゆく。
鋼自体に生命はない。しかし、今目の前にある金属には―――確かに生命が宿っていくんだ。

ケイロンさんは、胸・右腕・左後足に深いダメージを負っていた。
激しい戦いの痕。

でも、僕は知っている。
その胸の、腕の後ろには、守るべき存在があったこと。
傷つき倒れた歩行雑草の少女、アルクさんをかばって戦った結果の傷だということを。


幸い、アルクさんはエニシダさんの治療で大事にはいたらなかった。
エニシダさんこそ緊急の治療が必要だったのに、力を振り絞ってアルクさんの手当てをしたんだ。

女性・子供を助けるのは万人の――万機の仕事、とケイロンさんは仰った。
そうだ。誰もがそうであるべきだ。弱き者の盾として。
そしてエニシアさんもケイロンも、そう行動した。
お二人は強い。力も―――何より、心が。

でも、そうじゃない人だってたくさんいる。誰もが強いわけじゃないんだ。
だから僕には、万機――という言葉が、とても綺麗に聞こえた。
この万には、全ての、という意味と同時に万の味方に値する……
そんな誇りが詰められているんじゃないかって。
一万の人に値する機人………かっこいいんじゃないかな、って。


そのケイロンさんが、僕の目の前にいる。
深い傷を三箇所に、数え切れないほどの小さな傷と共に。
その傷一つ一つこそ、誰かを守ってきた証なんだ。

そう思うと、とても誇らしく思えた。

僕は、ケイロンさん――――万の味方に値する、万機を直す。
それが今、自分にできる最大の……そして最も幸せな仕事、だと。



いつしか陽は傾き、夜の気配が顔を覗かせる。

夕食をとった後も作業は続いた。

びり、びりと手先に痺れが走る。
知らず知らず、腕が震えてもいた。

ケイロンさんが仰る。

「少年よ、もういい。貴方は十分に役目を果たしてくれた」


僕は首を振る。

まだ、終わっちゃいない。……終わらせちゃいけないんだ。
この誇り高き鋼鉄の戦士が残した証。
それを次の戦いへの礎とする為にも。
そして、自分の誇りにかけて。


闇はいよいよ深く、静寂の中、金属音が聞こえる。
その音は随分弱くなっていた。
あちこちで火が消えてゆく。

身体が、重い。

でも、まだ。まだ、まだ――――――


そんな時。

不思議な音が聞こえてきた。

高いようで低いような、強いようで弱いような……

でも、優しい音。

リズムがある。歌、だろうか。

このリズム、どこかで聞いたことがある。

あれは……そう、母さんがよく唄ってくれた――――



そして僕は。

柔らかな温もりと共に、眠りへと落ちていった。



再び光が辺りに満ちる頃、僕は夢の中で。

でも見たんだ。

光をいっぱいに受けて、疾走する鋼鉄の戦士の姿を。

万の味方に値する戦士―――ケイロン。



僕は笑いながら、再び眠りへと落ちていった。





(番外編)

僕はもうひとつ夢を見た。

夜。

炎が煌煌と燃えている。

その横に座るのは、4名。

エニシダさんが緊張した面持ちで煙草を吸い、その横でアーヴィンさんがふてくされている。
ナミサさんと言えば、妙に汗をだしてしきりに拭いている。
変だな、いつもは汗なんて滅多にかかないのに。

なんて思ったら、ケイロンさんまで横で俯いていた。はじめて見る。
そういやアーヴィンさんも落ち着きが無い。エニシダさんも、何度も灰を下に落としている。
共通しているのは、皆さん黙っていることだ。
アーヴィンさんが黙っているなんて珍しい!


ちゃらちゃらー。


なんだか妙な音が聞こえた。
見れば、炎の横、切り株の上に機械が置いてあった。
ああ、あの「らぢお」とかいう、音のでる機械。


「次は、エニシダさんの―――」


あれ、エニシダさんの名前が呼ばれた。
なんだろう、何が始まるんだろう。

すると、なんだかどこかで聞いたことのあるような文章が読み上げられた。
うーん、記憶にないなぁ。確かに知っている気がするんだけれど……

そんなことを思っていたら、いきなりエニシダさんが胸を抑えたんだ。
そして苦しそうにうめき声をあげる。汗びっしょり。
「うぉぉぉー」なんで叫んだりするんだ。初めてだ!

びっくりして駆け寄ろうとするけれど、自分の身体が動かない。
ちょっと、何してるんだ!

と自分に怒りをぶつけたとき。

「次は、エゼさんの―――」

自分の名前が呼ばれた。え?

そして、またもや文章が読み上げられた。

……あれ?これ、どこかで聞いたことが……って、昨日の日記……?!

うわぁぁぁぁぁ! ちょっと、日記がどうしてこういう風に読み上げられているんだ!
どこで誰がやっているんだよ!ちょっと、止めてよ!誰か、誰か……

僕は、生まれて初めて苦しみの涙を流した。

……なんだか違う文章の気がする。って、そんな場合じゃない、誰か止めてー!!


「次は、アーヴィンさんの―――」

そういう声が聞こえた時。ようやく僕は、体中を駆け巡る嫌な暑さや噴き出る汗から解放された。

そして気付いたんだ。 もしかして、これ皆さんの―――


それから後のことはよく覚えていない。

アーヴィンさんが「行かんでいい」と極めて不機嫌そうな顔で愚痴ったり。
ナミサさんが「やめてー」と叫んでいた気がした。
そして最後にはみんな倒れて悶絶していた。
あ、自分も寝転がっている。いつのまに?

これが噂に聞く阿鼻叫喚、だろうか。喉がカラカラだった。


気がつくと「らぢお」から音は出なくなっていた。

周りにはいつ来たのか、フォウトさんやセレナさん、アルクさんまでいた。
みんな笑いを隠しきれない様子。というか、隠してもいない。
も、もしかして聞いてたの?!



そして最後に見たものは―――――なぜか、ソニアさんの見たことのない笑顔だった。


(以上、某らぢおのとある風景でした。
 勝手に出した皆さん、すみません!でも反省はしていない)