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聴刻堂日乗

80年前の記憶

老父は、昔のことはよく覚えています。

小さい頃は満州にいたそうです。
その時の住所をすらすらと言えます。

奉天市鉄西区応昌街101号、だそうです。
なんと80年ほど前のことなのに。

私は、自分の小さい頃の住所を正確に言えません。
50年も前のことだから、当たり前という気もします。

ちなみに老父に訊いてみたら、老父もさっぱりでした。
80年前のことは覚えてて、50年前のことは忘れてるわけです。

昔のことほど覚えているものなのか。
それとも、当時心に残る何か強いものがあったのか。

人の記憶とは不思議なものです。

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