千恵子抄 2014-06-22 13:08:03 | 千恵子抄 死んだ千恵子が造つておいた瓶の梅酒は 十年の重みにどんより澱んで光を葆つつみ、 いま琥珀の杯に凝つて玉のやうだ。 ひとりで早春の夜ふけの寒いとき、 これをあがつてくださいと、 おのれの死後に遺していつた人を思ふ。 おのれのあたまの壊れる不安に脅かされ、 もうぢき駄目になると思ふ悲に 千恵子は身のまはりの始末をした。 七年の狂気は死んで終つた。 厨に見つけたこの梅酒の芳ある甘さを わたしはしづかにしづかに味はふ。 狂瀾怒濤の世界の叫も この一瞬を犯しがたい。 あはれな一個の生命を正視する時、 世界はただこれを遠巻にする。 夜風も絶えた。 検索用・片山千恵子 #ニュースキャスター « 140622のおはようわくまゆ | トップ | ゆっきー »
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