□本日落語一席。
◆四代目三遊亭金馬「地見屋」(寄席チャンネル)。
国立演芸場、令和2(2020)年3月18日(三遊亭金時独演会「金時、金馬になる会」)。
これは聞いたことのないネタだ。たぶん。少なくとも、2006年以後の鑑演記録にはまったく出てこない。そんなわけで、さっそく川戸貞吉『落語大百科』と『増補 落語事典』を確認してみたが、なんと!博覧強記の川戸の著にもこの項目はなかった。しかし、ありとあるゆる速記から項目を収録した『増補 落語事典』だと、これは載っていた。さすがである。
◆四代目三遊亭金馬「地見屋」(寄席チャンネル)。
国立演芸場、令和2(2020)年3月18日(三遊亭金時独演会「金時、金馬になる会」)。
これは聞いたことのないネタだ。たぶん。少なくとも、2006年以後の鑑演記録にはまったく出てこない。そんなわけで、さっそく川戸貞吉『落語大百科』と『増補 落語事典』を確認してみたが、なんと!博覧強記の川戸の著にもこの項目はなかった。しかし、ありとあるゆる速記から項目を収録した『増補 落語事典』だと、これは載っていた。さすがである。
噺の内容は、長屋の大家が店子吉兵衛の地見屋という職業に疑いを抱き、吉兵衛のあとをただただつけていくという単純なものである。
ちなみに、地見屋というのは、往来の地面を見て歩いて、金目になる何か落ちているものを拾ってそれで糧にするということを生業したものである。大家はそんなことで、仕事になるはずがない、真相は盗人か何かではないかと思って尾行するのである。
ちなみに、地見屋というのは、往来の地面を見て歩いて、金目になる何か落ちているものを拾ってそれで糧にするということを生業したものである。大家はそんなことで、仕事になるはずがない、真相は盗人か何かではないかと思って尾行するのである。
噺は単純だが、眼目は長屋のある神田から江戸中全体を隈なく歩きまわる描写の言いたてにある。そういう意味では「黄金餅」と同趣向だが、「黄金餅」よりはずっと行動範囲が広い。そのかわり、「黄金餅」で語られるような、深みのある人間ドラマはまったくなく、「地見屋」のほうは、本当にただただ歩きまわる描写のみが信条の落語といってよい。
ばかばかしいと言ってしまえば、それまでだが、そんなばかばかしさを楽しむのにはおもしろい落語である。
件(くだん)の『増補 落語事典』には、梗概を記したあとの注記に「よくできた話で、最近は四代目三遊亭金馬がやっている」とあった。
件(くだん)の『増補 落語事典』には、梗概を記したあとの注記に「よくできた話で、最近は四代目三遊亭金馬がやっている」とあった。
この注記が、もし初版から書かれていたものなら、昭和44(1969)年の記事ということになる。もし増補版時だとしても、四年後の昭和48(1973)年である。四代目が小金馬から金馬を襲名したのが昭和42(1967)年である。古くから、四代目金馬はこれを演っていたようだ。そして、他にほとんど演り手がなかったのではないか。
おもしろい話だから、今年の秋に襲名して五代目金馬になるという金時にも、ぜひこの噺を演ってほしいものだ。いや、ぜひ他の落語家にも。