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知殿寮@Net

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現場【フィールドワーク】に根差した曹洞宗法式参究記

「大夜」か「逮夜」か!?

2006-01-12 16:29:03 | (法要全般)法要雑学&とりびあ!?
 先日某寺の開山忌随喜で「たいや」という場合の文字の表記は、「大夜」なのか「逮夜」なのかの議論が交わされました。

 早速、師寮寺に戻り辞書で調べてみたところ、以下のような記載があったので紹介したいと思います。

大  夜

迨夜、逮夜、宿夜、伴夜、贈別夜とも。
大帰夜の略。一度行き再び帰らない夜の意。
普通には葬儀執行の前日の夜を言う。
しかし死んだ日の次の夜。すなわち第二日目の夜を大夜とする説もある。
…(中略)… 一般には葬儀の前日の夜を言う。また、法要・法事の前夜をもいう。
                                   『禅学大辞典』P817~

迨(逮) 夜

荼毘に迨る〔いたる〕夜という意で、葬式の前夜をいう。大夜。
「小參了テ、山門維那、迨夜念誦アリ」(『僧堂清規』五、尊宿喪法)
                                   『禅学大辞典』P818~

迨  夜

明日の荼毘(火葬)にいたる夜のこと。
火葬の前夜のこと。今日では法要の前夜を言う(『禅林備清規』)
                                   『仏教語大辞典』P906

 このように、「逮」という字には「明日に逮ぶ(およぶ)」という意味があるらしく、「逮夜」とはその翌日の「葬儀」を起点と考えた場合、文字通り「葬儀前夜」を指して言うことが分かります。

 それが転じて「年忌」や「月忌」などの忌日の前夜を「逮夜」と称する様になったとも思われます。

 また、一説には死亡の日を「當夜」、次の夜を「大夜(逮夜)」と呼び、火葬の日の三日目を「荼毘の夜」と言う場合もあるそうです。
 
 辞書の記載だけを見ると、「大夜」か「逮夜」かは一概に是非を付けられず、どちらの表記も使用が可能ということになりましょう。
 
 そこで、敢えて注目したい記述がございます。

『禅林象器箋』(四)に

奮説曰、物故之夜曰當夜、次夜曰大夜、又次荼毘夜也、大夜者、女之婚家、謂之大帰、一住不復反也、 …(中略)…… 或世稱忌辰前夜、為大夜者非也

とあり、ここでは明確に「或世稱忌辰前夜、為大夜者非也」(回忌の法要の前夜を大夜というは非也)と謳っております。

 我々はこの部分は見過ごす訳にはいかないでしょう。

 その記載から、葬儀前日の夜については「大夜」・「逮夜」といった両表記を用いることは許されても、年回や月忌の前日の法要、つまり正当特為献湯や献湯諷経の法要に関しては「大夜」と言わないコンセンサスはあっても良いものかと思われます。

 つまり年回や月忌の前日の法要の場合は「逮夜」という呼称のみ用い、所謂「大夜」は葬儀執行前日のみの法要に用いるということです。

 また、ここでの記載から、その当時は亡くなった当日を「當夜」、次の日を「大夜」、そのまた翌日を「荼毘夜」と称していたことが分かり、既述もした一説「死亡の日を當夜、次の夜を大夜【逮夜】と呼び、火葬の日の三日目を荼毘の夜と言う場合もある」は『禅林象器箋』のこの部分を論拠に成り立つということが分かります。



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