「闇は深く...」
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Blind Wille Jonson
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ライ・クーダーが「単なるプレイヤーを超えた天上界のミュージシャンの一人」と称賛(もはや信仰の域)するブラインド・ウイリー・ジョンソンです。 誠に僭越ながら『God Moves on the Water』は、お願いランキング阿呆烏が選ぶカッコよいブルース・ナンバーNo.1!!
...歌詞を除いて...
そう、彼の曲はブルースではないのです。
なぜなら、彼はエヴァンジェリスト(福音伝道師)だから。
1920年代、彼が辻で歌ったのは、酒や女や痴話ではなく、聖歌なんですわ。 世俗的なブルースやなく、ゴスペルなんですな。 十字路で悪魔に出くわしても、魂を売るんじゃなく、「おお、主よ、どうか悪魔を遠ざけてください」と救いを求めるひとなわけ。
とはいえ、(過酷な環境で育ち、辻で歌い続け、)しゃがれ切った声でガナるボーカル・スタイルと、重厚かつピップにリズムを刻むフィンガー・ピッキング、シャープかつ正確無比なスライド・プレイは、直系のフレッド・マウダウェル(傍らにソプラノ女性シンガーを伴うスタイルもいっしょ)始め、多くのブルース・マンに影響を与え、融合しているので、偉大なブルースの先駆者であることは確かですわ。
同じ底知れぬ闇を心に抱え、酒と女を逃げ場にしたロバート・ジョンソンと、神の言葉に救いを求めたブライド・ウイリー・ジョンソン...奇しくも、共に活躍できた年数が短かったため、後世に与えた影響の大きさの割に、残された音源の数が極めて少ないという残念なトコが似ちゃいました。