「渡辺」に非ず。「わたべ」に非ず。

「わたなべちぇる」が正しい読み方の人のblog

アニメ備忘録その2・学級王ヤマザキ(前)

2006-06-28 01:30:48 | アニメ
学級王ヤマザキ
(OP編曲,ED作編曲,劇伴,挿入歌作編曲多数)

 実はポケモン担当以後もそれ以外の仕事量はさほど変わっておらず、しばらく名前先行(汗)の状態が続いていたのですが、その年の秋にこの番組をやらせて頂いた事が大きなターニングポイントになりました。特にそういう営業活動をしていた訳でもなかったのですが、突然アニメの劇伴をやらせてもらう事になったのです。
 以前このブログにも書いた通り私は「ヤマト」と「太陽にほえろ!」の劇伴で音楽に目覚めフュージョンにハマってバンドを始めた人間ですから、音楽の基本も応用も常にインストゥルメンタルだったわけです。インスト曲を作る事に関しては全く抵抗なく、むしろ楽しんでやれたのですが・・・
 問題だったのは「曲を作る」以外の細かい作業部分。1曲1分強ぐらいの曲が殆どだったので、1曲の打ち込みをする実労時間は1~2時間かそこいらなのですが、シンセの音作りにかかる時間が結構膨大で、しかもそれを1曲毎にやらなければならない。3週間で50曲ぐらい作ったのですが、もうその50曲分の音作りの苦しかったこと!当時はまだ自宅の制作環境も劣悪で実質2帖程の作業スペースしかなく、その床にあぐらかいて床に置いてあるキーボードを弾きながら打ち込んでいた(笑)ような状態でしたから、まあ相当に大変でした。おまけに制作途中でスタジオやライブの仕事もあるのでその度に機材をバラし、帰ってまたセットアップ・・・体力的にも相当削られる作業で、かなりキツかったのを覚えています。データの管理も当時はかなり大変で、サンプラーのHDDは1GBくらいだから無造作にネタ入れられないし、何処に入れたか覚えておかないと大変だし、シンセの方はシンセの方で音色管理ソフトに対応してる機材はいいけどそれ以外の機材は本体のメモリーに入れなきゃならないし、でもこんだけ曲作ってたらすぐ一杯になるし・・・ともう大混乱です。パラアウトの指定したりなんだりも大変手間のかかる作業で・・・実際100%ソフトシンセになった今では1曲あたりの作業時間が格段に減っています。鍵盤弾いてる以外の時間は4~5分の1になってるんじゃないかな?という程です。外の仕事で使ってるハードシンセとは完全に別れてるから他の仕事から帰って来てもすぐ作業できるし、各ソフトシンセのウィンドウはツマミだらけだから音作りも格段に楽、そのくせ音はいいときてる。ホントいい世の中になりましたね・・・
 この経験を叩き台にしたお陰で、次の劇伴仕事からはかなり効率的に作業が出来るようになりました。音楽的にもアニメの内容がパロディ満載だったのでそれ相応の遊びもいろいろとさせられまして(^^;)大変有意義な経験でありましたが、有意義な経験という意味ではむしろ主題歌の制作の方が凄かったのです・・・

続く・・・

アニメ備忘録その1・ポケットモンスター(後)

2006-06-22 20:48:08 | アニメ
 実はポケモンのアニメの歌に限って言えば、編曲したのは3曲だけ(最初のOP/EDと「ポケモン音頭」)で、殆どの曲はキーボード&マニピュレーターという形での参加でした。作曲のたなかひろかず氏の打ち込みデータをシンセで鳴らし、手弾きの欲しい部分は弾くというスタイルで相当量の曲をやらせてもらいました。貴重な体験だったのは当時半分アマチュアみたいなものだった私が雲の上の存在だったスタジオミュージシャンの方々と一緒に演奏できた事。特に中高生時代憧れの存在であったカシオペア神保彰氏、キープ山木秀夫氏、羅麗若古川望氏らとプレイできたのは夢のような体験でした。

 勿論鬼才・たなかひろかず氏からも様々なエッセンスの影響を受けました。実はOP/EDのアレンジ発注の時、最初は「ポケモン言えるかな?」も含めた3曲の依頼だったのです。ですがなにしろOP/EDのデモは超特急依頼だし、デモを聞いたところ当時テクノ的アプローチにはからっきし弱かった私にはこの曲は無理!と思い「たなか氏のデータでそのままやりませんか?機材等で足りない部分はマニピュレートしますから」とこちらから逆提案したのです。
 録音当日、たなか氏はMIDIデータと共に大量のフレーズサンプリングデータを持ってスタジオにやって来ました。実は私自身も「この曲の妙な雰囲気はどうやって出してるんだろう?」と興味津々だったのです。MIDIデータを開けてみるとサンプルのトリガー以外にはドラムとベースとオルガンぐらいしか入ってない。サンプルデータの方は全く違う曲としか思えないフレーズがいくつも入っている。「ま、とりあえず・・・」と思ってMIDIデータを走らせると・・・そのフレーズサンプルが絶妙に組み合わさって、デモ通りの独特なサウンドのイントロが鳴り響いたのです。「こんな音楽の作り方があったなんて・・・」他人の音楽の作り方にカルチャーショックを受けたのは後にも先にもこの時ぐらいでしょうか。
 以来私もそのテのジャンルのアレンジにのめり込み、2年後には一緒に仕事した人に超テクノマニアと勘違いされて参ったりするぐらいに成長した(笑)のですが、フレーズのもって行き方などの音楽的側面から今やクリーチャーズを束ねる社長となって久しい氏の人間的な側面にも学ぶ所は未だに多いです。

(写真は当時のポケモンの総数151種に因んで関係者に贈られた主題歌CD151万枚突破記念ゴールドディスク)

アニメ備忘録その1・ポケットモンスター(前)

2006-06-18 03:11:29 | アニメ
先日仕事仲間と「ブログって別に日記の事じゃないのにね」という話題で盛り上がったのですが、自分のブログ見たら見事に日記にしかなっていないという・・・
で、備忘録的に、これまで担当したアニメの話をつらつらして行こうと思います。
(そう言えばブログ始めたきっかけって、そういう話を自分の言葉でする為だったのですわ(^^;))

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で、私と言えばまずはこれでさあね。

ポケットモンスター
(第1期OP編曲、第1期/第3期ED編曲、映画第1作OP編曲、演奏参加多数)

 初めてOP/EDを担当させてもらったアニメであり、人生最大のヒット作。この作品がなかったら今の自分はなかっただろうと思うと、いくら感謝してもし足りない作品です。放送開始9年経ってもいまだ絶大な人気を誇っている番組の創世記に立ち会えた事はとても幸運でした。

 当時は業界のイロハも解らない状態だったのでその部分はどうとも思わなかったのですが、今思い返すとそうとう追いつめられた状態で作っていたんだなあと思います(笑)。番組開始三十数日前に、私のような無名ミュージシャンが全国ネットアニメの主題歌の編曲を任されたという事実もそうですが、当然OPの絵は作り始めていないと間に合わないので、既に作曲のたなか氏の曲デモを元に絵造りが始まっているという・・・でもデモとは結構雰囲気替えてくれっちゅう発注で・・・しかも曲デモの媒体はなんとカセット!当然正確な尺が拾えるわけもなく、それでも「明日迄に2パターン作ってくれ」と言われ大慌てで90秒のデモを2パターン作り、バンドっぽいパターンの方が通ったんで当時サポートしていたTHE JADOESのメンツに演奏を頼み、発注の電話からほぼ1週間ぐらいでアッという間に録ってしまいました。

 後で聞いた話ですが、実は私の所へ発注の電話が来た数時間前、担当の音楽プロデューサーが初めて打合せに呼ばれてその場で「明日デモ出して」と言われ大慌て、私に電話する以前に数人のアレンジャー(結構有名な方もいたらしい)に電話をしていたらしいのです。明日までにデモを出さねばならない事を考えるとどうしても今日連絡がとれなければならないのですが、皆不在だったりつかまらなかったりで(当時まだ「携帯持たない派」という方々も結構おられた)困り果てていた所で私の事を思い出し自宅に電話したら、案の定電話の横で寝てたという・・・当時私は半ば失職状態で日々自宅でゴロゴロしていたのですが、だからこそゲットできた仕事だったというワケなのです。人生何が幸いするかわかりません。この時のギャラで早速携帯電話を繋がりにくい場所の多かったシティホンからムーバに買い替えたのは言う迄もありません。シティホンが何だかわからない人はWikipediaで調べて下さい(笑)

続く・・・