Yuumi Sounds and Stories

シンギング・リン®️セラピスト「藍ゆうみ」のブログ。日々の覚え書き、童話も時々書いています💝

お話妖精ルーモと風さんフィリピン⑤

2020-05-15 14:05:34 | 童話 ルーモと風さんのお話
8月5日(金)三日月の夜 フィリピン

ルーモの風さんは小さな風さん。小さな風さんは大きな風におんぶされて南に南に吹いていきました。上空はどんどん暑くなってきました。ルーモが下を見ると小さな島がたくさん並んでいます。
「風さん、あそこはなんて国?」
「フィリピン、小さな島々からなる国だよ」

その中でも光ゆらめく街へと風さんは降りていきました。そこはマニラという大都市でした。大きな街で人もたくさんいるようですが、少し変な匂いがします。それは、こんもりとした山のあちこちから無数に登る細い煙から漂ってくるようです。風さんが教えてくれました。

「この山はスモーキーマウンテン。マニラ中のゴミが集められたゴミの山さ。そこに貧しい人が住み始めてもう何十年にもなる。人々はゴミの中から必要なものを広い、ここで生まれ死んでいく。煙は、いつでもゴミの中で何かが燃えて煙を出しているんだ」

ゴミの山のあちこちには細い生活道ができていて、道沿には小さな掘っ立て小屋が並び立っています。ルーモはその道に降りました。ガタガタして転んでしまいそうな道です。

もう暗い夜でしたが、少し歩くと、ルーモよりも小さな女の子が道の隅にしゃがんでいます。ルーモがその子の前に立ち笑いかけると女の子も可愛い笑顔で微笑みました。女の子の顔も体もひどく汚れていました。お風呂に入ることもないのでしょう。女の子は、まるでそれがおもてなしのように、ルーモの手を取って自分の家に連れて行ったのです。

ルーモは妖精なのでその姿は普通の人間には見えません。ルーモを見ることができるのは、心の寂しい人だけでした。

女の子の家はすぐ近くでした。小さな小屋にはお母さんとお姉さんが一人、弟が二人いました。掘っ立て小屋ですが、中には小さなテレビや冷蔵庫もあって、いろんなものがごちゃごちゃと置いてあります。お母さんは、子どもたちに無関心で、お姉さんも小さな弟たちも女の子を気に留めませんでした。ここでは、おやすみ前のお話はないようです。

女の子は寝床のような部屋のすみっこに潜り込みました。ルーモのことをゴミの山から見つけたぬいぐるみのように思っているのでしょうか。ルーモを固く抱きしめていました。

今夜はルーモが語り手になることにしました。
ルーモはこの旅で見てきたものをちょっとづつ話してあげました。

日本のお母さんが話していた猫と犬のありがとうの話、ロシアで見たマトリョーシカの人形のこと、モンゴルのお話の相撲自慢の怪物のこと、中国の二胡という美しい音色の楽器のこと、その音色も女の子の頭の中で鳴らしてあげました。

ルーモのお話は、女の子の心の中で虹色の夢となりました。おそらく、その寂しい胸の中に初めて見るような夢と希望のイメージになったことでしょう。女の子の頬に一すじ虹色の涙が流れました。

「この子が空に虹を見るたびに、幸運が訪れますように…」
ルーモが何かを願った時、それは必ず天に聞き届けられます。
南国の島、フィリピンには虹が多いはずです。
この子はきっと幸せになるでしょう。
ルーモは女の子の安らかな眠り顔を見て空へ飛んでいきました。




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