久しぶりに自転車を輪行袋に収納して浅草から電車に乗り込み栃木駅で下車する。
目的は、(蔵の街)と呼ばれる栃木の街並みを見る事と佐野に行き(佐野ラーメン)を食べる事。
そして翌日から宇都宮で2日間に渡って開催される(
ジャパンカップサイクルロードレース)にてオープンレースに参加する友人たちの応援と今回初めての試みとなる宇都宮中心部を周回するレース「クリテリウム」にて世界トップクラスの選手の走りを観戦する事。
そして宇都宮ときたら(餃子)である。
栃木駅前で下車し、自転車を組み立てているとお約束である地元のおじいさんの質問を受ける。
「どこから来た?」
「競輪選手か?」
「わしも昔は・・・」
などが大体の定番質問パターンだ。
こういう時は、街の生き字引である、おじいさんの情報力に頼るのがスマートな旅人である。
これが上手く活用出来れば観光案内所もインターネットも必要無いのだ。
僕「ねえねえ、お父さん、この街は蔵の街って言われてるけどどの辺に行ったらいい?」
おじいさん「あっちだべ」
僕「・・・・・」
OK、情報は、そんなもので十分。
自転車を組み立て終わり、走りだしてほどなくすると古い街道沿いの雰囲気を持った街並みが次々に現れた。



蔵をバックに巴波川の写真を撮っていると船頭さんがポーズをとってくれたり、おばちゃんたちが「やだ~撮られてるわ~」などとケタケタ笑いながら手を振ってくれる。
栃木の人は、人懐っこくて温かい。



虫干しもかねて雛人形を飾る「後(のち)の雛」という風習。
街のあちこちの軒先で雛人形がお披露目されていて道行く人を楽しませている。


一軒の家の前に
「あまい柿です よろしければどうぞ」
と書かれた紙とともに箱の中に柿が入っていたのが目に入る。
その優しい文章と心遣いに感心していると家の中から柿を抱えた家の人が出て来て
笑顔で「どうぞ、どうぞ、好きなだけお持ちください」と声をかけてもらったので一つだけ柿を貰って走りだす。


栃木の街並みを堪能した後は、佐野を目指して自転車を走らせる。
知らない街の風と秋の匂いを感じながらのサイクリングが爽快である。

佐野といったら(佐野ラーメン)でしょう。
という事で代表格である老舗の「森田屋総本店」を探し当ててチャーシューメンにありつく。
独特な手打ち麺で昔ながらのスープの味が旨かった。
腹ごしらえをすませて佐野厄除け大師などを見たりしていたら日も暮れてきた。
当初は、宇都宮まで走ろうと思ったが60km近い距離があったので再び自転車を収納して佐野駅から電車で宇都宮まで移動。
格安のホテルにチェックインした後は、宇都宮の街に繰り出して
宇都宮といったら(餃子)でしょう。
という事で代表格である老舗の「宇都宮みんみん」本店の行列に並ぶ。
(焼き)と(水)の二種類を食べたがあっさりとした宇都宮の餃子は、何度食べても感動的に旨い。


腹ごしらえをすませてジャパンカップに出場する選手たちの泊まっているホテルに行くと運よく
翌日は、いよいよジャパンカップ・オープンレースとクリテリウムである。
翌朝は、会場に到着しメーカブースなどを見ているとファンとコース内を走る(フリーラン)に参加する選手が続々と現われた。

コース脇で営業している屋台にて餃子の朝食。
看板犬を眺めながら外で焼きたての餃子を食べたがこれがまた旨い。
宇都宮ならではの朝食に舌鼓を打つ。

山岳コースの観戦ポイントに移動するため、急峻な林道を自転車で登っていると試走している日本人プロ選手たちが登ってきたのでお互い「おはようございます」と挨拶をする。
こういう事が出来るのもジャパンカップの楽しみの一つだ。

TEAM KATUSHAもやってきた。

フリーランとチャレンジレースが終了し男子と女子のオープンレースが始まる。
このクラスになると緊張感も相当なもの。



オープンレースが終了しクリテリウムを観戦するために宇都宮市大通りに戻ると既に沿道には何万人もの人がつめかけていてコース内を観るのも困難なほど。
公道を交通規制してヨーロッパのサイクルレースのようなクリテリウムを実現させるとは宇都宮の勢いを感じずにはいられない。
PRも徹底したもので街ぐるみでの応援や各メディアへの露出、地元プロチームである
宇都宮ブリッツェンへのバックアップ体制も見事なものだった。
クリテリウムにはブリッツェンのメンバーとして片山右京も出場する事になっていて普段レースにあまり関心の無い人たちへのアピールも十分。
しかし純粋なサイクルレースファンにとっては海外チームの選手への期待が大きい。
宇都宮競輪場から出発し宇都宮市大通りに大集団がパレード走行で入ってくると通り全体に大きなどよめきが起こり鳥肌が立つほどであった。
レースは1.55kmの周回コースを23周し最初の3周はパレード走行が行われる。

各チームの顔見せである3周のパレード走行が終了し、いよいよレースがスタートする。
世界トップクラスのレーサーたちのスピードにあちこちから溜息が聞こえてくる。

3名で形成され逃げ集団に別府史之(レディオシャック)が入ったので会場が盛り上がる。
一番の注目を集めるロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)や新城幸也(Bboxブイグテレコム)などは集団の中でポジションを徐々に上げていく。
特別出場である片山右京も集団についていく驚きの走りを見せた。
さすがに終盤になると集団から千切れてしまったが諦めずに集団を追いかける走りに会場から大きな声援が起こったのが印象的な場面だった。


終盤になると逃げ集団も吸収されて大集団が一気にペースアップ。
会場は、興奮のるつぼと化した。
ラスト一周でトーマス・パルマー(オーストラリア、ドラパック・ポルシェ)がスプリントを制して優勝。
日本人選手にもう少し頑張ってもらいたかったが世界の壁は、少々厚いようだ。
レース終了後は、優勝した3人と(宇都宮ブリッツェン)のレースジャージを着て、ロードレーサーに乗った市長がパレード走行。
宇都宮は、とことん街全体をサイクルシティに変える環境にあるようで実に羨ましい。
この翌日が、いよいよ森林公園のコースを使ったジャパンカップのレースなのだがこれは、観る事が出来ないので後ろ髪引かれる思いで宇都宮を後にする事にした。