ナチュラルキャピタリストのブログ

地球環境問題を切り口にした諸問題解決をライフワークとしている筆者が、独自な視点で語ります。

TPPとイタリアのエコファーム

2011-01-02 20:19:05 | 日記

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。

さて総理の年頭所感だが、時事通信によれば次の通り述べられていた。

首相は、11年を「明治の開国、戦後の開国に続く『平成の開国』元年」と位置付け、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参検討に当たり、「欧州連合(EU)や韓国、オーストラリアとの交渉を本格化させる」と表明。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011010100008

『平成の開国』だと?それを見た筆者は脊髄反射的にtwitterで、次のように思わず毒をつぶやいてしまった。

「政治とカネ」への失望を解消=税制改革、TPPに意欲-菅首相年頭所感 http://ow.ly/3wGF 一応毎年総理の年頭所感は見るが、今年ほど腹立たしい所感もない。(中略)TPPは「平成の売国」じゃねぇか!!

http://twitter.com/torrecolombaia/status/20969001932824576

元旦から罵詈雑言のつぶやきはお詫びするが、『TPPは「平成の売国」』は偽らざるものであろう。時事通信の記事を見ても、明治の開国、戦後の開国に続く」と書いてあり、これらの歴史は日本のアメリカに対する敗北(または無条件降伏)である。菅総理は年頭所感で、「アメリカへの無条件降伏」を宣言してしまっているのである。少なくともTPP加盟は今年上半期の最大の政治課題であり、かつ政局にも大きな影響を与えるポイントであることに間違いはないであろう。筆者としては、このブログを地球環境を切り口に書いている。TPPに関してもこの観点―「地球環境とグローバル経済は両立しない」―で今後とも考えていきたいと思う。

さて、正月早々である。お堅い話は止めにして、私がおととし2ケ月に渡りEUの地球環境への取り組みを視察した中から、イタリア、ウンブリア州のエコファーム「Torre Colombaia」を取り上げたい。イタリア人の「郷土愛(カンパリズモ)」と「地球環境に優しい農業」あるいは「食へのこだわり」を少しでもご理解いただき、TPPがいかにナンセンスで危険かを少しでも実感していただければ幸いである。イタリアと言えば1986年にマクドナルドがローマに進出しただけで、反対デモが起こったほど、「食の伝統へのこだわり」は強い。対する我が国だが、TPP加盟のような重要課題にも一般国民のリアクションが感じられない上、前原外相の「日本のGDPのうち、農業など第1次産業は1.5%。1.5%を守るために98.5%が犠牲になっているのでは」などというとんでもない発言にも、表だった批判さえ出てこない。

とにかくお堅い話は止めよう。エコファームの話を写真を交えてすることとする。

エコファーム「Torre Colombaia」はサッカーの中田英寿で一躍有名になったペルージャの郊外にある。世界遺産のアッシジにも近い。オーナーはアルフレッドさんといい、イタリアで一流大学を出てカトリックの枢機卿にもなれる逸材のインテリであったが、若き頃より政治活動に目覚め、イタリアの反原発国民運動にも関わったそうである。現在はこのエコファームで、ひまわり・リーノ(これらはオイルにする。)、大麦、小麦、レンズ豆等を作っている。私が視察したのは2009年の10月だったので収穫期は終わってしまっていたが、4日間の滞在で、EU各国からも取材陣が訪れるこの農場の素晴らしさを実感することができた。

まずはエコファームの全体像を次の簡単なマップで把握いただきたい。

 http://www.torrecolombaia.it/new/visitalazienda/visitalazienda.php

ここで注目いただきたいのは、総面積160haのうち農場(上記マップの茶色の部分)は60haに過ぎず、残り100haは森林(原生林)として残していることである。これによりエコファーム内の生物多様性は維持され、持続可能な農業が実現することができる。原生林の中の写真を示す。

原生林の中には湧水のある池もある(前述マップ上の番号1)。

さて、農場であるが、ヨーロッパで中世以来一般的な三圃式、いわゆるローテンション式農業であり、耕作地、休耕地、放牧地に区分されている。農場にはヤギも飼われている(残念ながら写真に撮ることはできなかった)。写真はオフィスに書いてあった区分図である。

さらに一番感心したことだが、農地が一定の区画に区切られ、その間にふんだんに樹木が植えられていることである。次の数枚の写真を是非ご覧いただきたい。

樹木の中には果物が実っていて、実際にジャムにして食卓に出されていた。


アルフレッドさんはこう言った。「敢えて森林を多く残したり、農地を一定の面積の区画に区切ることが有機農業で大切」。「鳥は有機農業で重要な役割を果たす」。さらに彼はアメリカ等の「農業風工業」をこう斬って捨てた(ここまで書くとアルフレッドさんに怒られるかもしれないが、敢えて書く)。「あいつら(アメリカ人)はバカだから、土地は全部残らず農地にするだろうね」。

さらに次のタンクの写真を見ていただきたい。

これは空気中から窒素を取りだしタンクに充填して麦を劣化させずに保存していると言う。化学的なものは一切使用していないそうである。

また、エコファームのエネルギーは全て太陽光で賄われている(筆者は個人的に最近太陽光には反対しているが、今回は述べない)。

さて、料理だが、決して高級ではないが、素朴なイタリアの家庭料理を満喫することができた。

まずは地元産のトリュフ。

次にパスタ。パスタは当然、農場で作ったもの。チーズもヤギの乳から作ったものだという。但し、肉に関して尋ねたのが、残念ながら「デンマーク産」とのこと。グローバル経済の波は、イタリアでさえも完全には防ぐことは困難なのが現実なのだ。

面白かったのは次の写真のリゾット。なんと隠し味にターメリックとさらに日本の味噌が使われているという(これは地消地産とは言えないが・・・)。アルフレッドさんはインドのヨガにも造詣が深いのと、さらに親日派である。このリゾットがなんとも言えず美味しかった。

さて今回のブログでは、私のイタリアでの経験の一つを紹介したが、今月NHKのBS-hiで「イタリア7つの輝き」と題して、イタリア特集をやっている。

http://www.nhk.or.jp/italy/

特に「郷土料理」と「トスカーナの山暮らし」は必見だと思うので、見れる方は、是非視聴するなり、録画をされることをお勧めする。