筆者が、現状のスマートグリッドを皮肉って、twitter上で、やたらつぶやいている「メタボグリッド」という造語ですが、一体何が問題なのか?という問い合わせがありましたので、どなたでもお分かりになるように、解説してみたいと思います。
まずは以下のURLをご覧下さい。
http://kagakukan.toshiba.co.jp/manabu/sci_tech/kaitai/circulation_j.html
これは東芝の子供向けのサイトです。まず、これを読んでいただいて、既存の電力網(グリッド)の概要を理解して下さい。尚、東芝なので肯定的に書いてありますが、筆者に言わせればこの既存の電力網(グリッド)自体に問題があるのです。
一番上の図「電力流通ネットワーク~発電所から電力需要地へ~」を見ると、何段階も電圧が降圧されて需要家へ届いているのが分かります。イメージとしてはこれで十分ですが、かなり簡略化されているので、詳しく知りたい方のためにプロセスを以下の通り解説します。
1.大規模発電所、例えば東京電力の柏崎刈羽原子力発電所での発電機の電圧は1万9千Vですが、これを長距離送電のため、50万Vまで昇圧します。上記の図には出てきませんが一旦昇圧するということを覚えて下さい。なぜ昇圧するのかというと、高い鉄塔の送電線で長距離送電するためです。
2.新潟県のHPを見ると詳しいですが、http://www.pref.niigata.lg.jp/genshiryoku/kk-poweline.html 西群馬開閉所まで99km~111kmを50万Vで超超高圧送電を行います。
3.超超高圧を特別高圧(15.4万V)に変換します。。
4.特別高圧(15.4万V)から2段階の変圧、つまり高圧、低圧に降圧してそれぞれの区間で送電してやっと家庭で使う100Vに電圧を下げるのです。
金属電線には電気抵抗があるので、送電時に一部の電力は熱として失われます。当然ですが、送電距離が長ければ長いほど電力が失われます。また変圧機による昇圧、降圧時にもロスが発生します。
この一連のプロセスで、送配電ロス率は日本全国、4%と考えられますが、これを世帯数に置き換えて計算すれば、なんと年間1260万世帯分の電気が捨てられていることになります。
バカバカしいと思いませんか?
もっと簡単に説明しましょう。長距離送電自体をメタボリック症候群と診断された人(太っている人は体を流れる血流の距離が長いですよね。)、電圧を血圧、変圧機を昇圧剤・降圧剤、電力会社を悪徳医師に例えます。すると、こういうことになります。
「悪徳医師がメタボな人に朝に昇圧剤を与えて血圧を思いっきり上げて、昼・3時のおやつ時・夜の3回わたり降圧剤を与えて血圧を下げる」
とんでもないことなのです。
つまり既存の電力網(グリッド)は超メタボなんです。なので筆者は、twitterでやたら「メタボグリッド」とつぶやいているのです。
こんなメタボな電力網(グリッド)にIT、スマートメーター、Renewable energy(太陽光等)、EVを付加してもメタボはメタボでスマートグリッドになる訳がないのです。「メタボグリッド」のままなのです。儲かるのは電力会社・業者(悪徳医師等)だけです。
さらに、このスマートグリッドもどきの「メタボグリッド」構想が実用化されると、原子力発電所の地位がさらに盤石なものとなってしまいます。原発反対運動に携わる方々は、原発と併せ現状進んでいるスマートグリッド、つまり「メタボグリッド」も併せて反対して欲しいのです。
電気は「地産地消」で、つまり発電した周辺の場所だけで、極力、昇圧・降圧させず、低圧のままで使うシステムを作ることが今後の大きな課題で、そのためには、お上や電力会社任せではなく、一般市民が主体性を発揮することが重要なのです。
すっかりブログの更新をサボっていたので、勝間和代さんと西村博之さんの「デキビジ」での対談をめぐる騒動ももはや忘れ去られてしまっている感がある。前回のブログでも述べた通り、勝間さんの西村さんに対する発言に関しては、筆者はあまり関心がない。
再度繰り返すが、筆者が問題視したいのは、コンサル経験のある勝間さんが「幸福」をきちんと定義出来ていなかったことである。筆者が「幸福」を定義することにこだわるのは、これは地球環境問題解決のための重要なベースともなるからである。
まず勝間さんがおっしゃっていた、内閣府の国民生活選好度調査結果の国民の幸福感については次のURL http://www5.cao.go.jp/seikatsu/senkoudo/senkoudo.html の通りだが、基本的に10点満点で国民に点数をつけさせただけの極めて主観的なものである。さらに、これは筆者の見解だが、マスコミ等の報道により、幸福ではないと思い込まされている可能性はないか等も考える必要がある。ちなみにに勝間さんが再三おっしゃっていて、西村さんに論破されていた「若者の起業」に関してはこのデータの調査票には載っていない。
やはり諸種のデータに基づいて、「幸福」を客観的に判断する必要がある。ましてや勝間さんのような「ロジカルシンキング」の講座を行っている方はなおさらであろう。
例えば前回のブログでも述べたが、例えば2009年の人間開発指数(以下HDIと略す。)では日本は10位でG7ではフランスに次いで2位である。詳細は以下のURLをご参照いただきたい。http://www.afpbb.com/article/life-culture/life/2650240/4725891
これは国連の補助機関である国連開発計画が出している指標で非常に有名であり、「幸福」に関する指標とも言え(ちなみに否定論もある。)、先進国の新たな基準として定着しつつある。前回のブログでも述べたが、筆者はこれを勝間さんにtwitterで質問しているが、お忙しいのかご回答は得られていない。
ちなみに西村さんはこの分野に関しては素人(失礼)であろうが、「水と安全があるだけで幸福」という発言には妙に納得してしまった。
さらにド素人の筆者であるが、地球環境問題に取り組んでいることもあり、自分なりに「持続可能」というキーワードで「幸福」を定義してみた。前述の人間開発指数には「環境」という側面がない。従い、以下のURLの資料を用いることにした。
http://assets.panda.org/downloads/lpr_2006_japanese.pdf
twitterでも何回か紹介しているのだが、これはWWFが出している「生きている地球レポート」2006年版である。この資料の19ページを見ていただきたい。横軸にHDI、縦軸にHDIにはない「環境」という側面からエコロジカルフットプリント(以下EFと略す。)を取っている。ちなみにEFを簡単に言えば、日本並みの生活をすれば地球がいくつ必要になるかということであり、単位はグローバルヘクタール(gha)である。これを見ると、HDIとEFのバランスがとれている持続可能な国家は、キューバしかない。このマトリックスには詳細な国名は載っていないがG7の中でもイタリアと日本の数値が他のG7国家、北欧よりも優れている。詳細な具体的数値は28ページ以降を見ていただきたい。
但し、このマトリックスの欠点はデータが2003年のもので少し古いあることである。「生きている地球レポート」は2008年度版も出ており、これは2005年のデータが使用されているが、筆者は、以下の理由から敢えて採用しなかった。
1.2006年版のマトリックスが採用されていない。
筆者の推測に過ぎないが、キューバのみが「持続可能な国家」と言われては困る国がキューバのすぐ北150マイルに存在するからだろうか?
2.2008年度版のEFからは要素として原発が何故かカットされている。
これで得をしているのが、フランスとスウェーデンなのである。ちなみにスウェーデンのEFが2006、2008年版の両方でも日本より環境負荷が高いことは意外に知られていない。
尚、今年「生きている地球レポート」2010年版が出る予定である。
話を勝間和代さんに戻したい。ド素人の筆者でさえも、ここまでデーターを調べて定義できるのである。勝間さんのようにマッキンゼー等でキャリアを積まれたコンサルタントが「諸種の指標を見ても日本が幸福度で落ちる」とのコメントでは全く説得力がないし、前述の通り、西村さんの方が説得力があった。
さらに言えば、優秀なコンサルタントというのは、例えばボストン・コンサルティング・グループがPPMを作ったように、自分で指標を作れる者を言う。勝間和代さんならできると思うし、彼女の社会的影響力から取り組むことは義務とさえ言える。是非、ご自分で指標をお作りいただき、「幸福」をきちんと定義していただきたいと考える。
「デキビジ」での勝間和代さんと西村博之さんとの対談が物議を醸している。勝間さんのブログに寄せられた意見で「ダメだこりゃ」とか「上から目線」などという勝間さんの発言に非難が集中していた。礼節を重んじる我が国の国民はこのような言葉には敏感に反応するのだが、人との相性や当日のバイオリズム等もあるのであろう。事実、西村さんは睡眠不足で楽屋で寝ていた寝起き状態で、機嫌が悪かったらしい。ちなみに筆者も寝起きは機嫌が悪い。なので、「こういうこともあるだろう」というくらいの感想だ。
むしろ筆者が問題視したいのは、コンサル経験のある勝間さんが「幸福」をきちんと定義出来ていなかったことである。
twitterで勝間さんが、国民生活選好度調査結果の国民の幸福感の現状について紹介されていた。詳細は以下URLの通りである。
http://www5.cao.go.jp/seikatsu/senkoudo/h21/21senkou_01.pdf
これを見て筆者は勝間さんにtwitterで次のように返信をした。ちなみに日付は、西村さんとの対談前の4月27日である。
「フォロープリーズ!勝間さん、初めまして。さて先行き不安な中、幸福度を再定義することは非常に重要です。しかし指標が多すぎて混乱しています。例えば2009年の人間開発指数では日本は10位でG7ではフランスに次いで2位です。勝間さんのお考えはいかがですか? RT @kazuyo_k:」
勝間さんからすぐフォローをいただき、筆者は感激した。質問のご回答はいただけなかったが、ご多忙な勝間さんのこと、やむを得ないと思っていた。
しかし西村さんとの対談で勝間さんは前述の国民生活選好度調査結果の話と、その他いろいろなデータでも日本の幸福度は低い、との旨の漠然とした話しかしなかった。対する西村さんの「水と安全があるだけでも幸福ではないか」との旨の発言の方が、説得力があった。西村氏はIT以外は、はっきり言えば素人であり、勝間さんはその経歴からプロのコンサルタントとして、「幸福」をきちんと定義し、視聴者に分かりやすく説明するべきであるのだが、この点が大変残念であった。
さて、あまりに長くなるので次回に譲るが、ド素人の筆者が「幸福」について引き続き、考察してみたいと思う。
「環境と経済の両立」に関しては、多くの方々があらゆる媒体で言及されているが、では「環境と両立する経済活動とは?」、という問いに対して答えているものを、筆者の知る限りでは見たことがない。従って、ここで言う「経済活動」という言葉を定義しておく必要がある。
例えば指標ひとつにしても、我々は当たり前のようにGDP(国内総生産)という言葉を使うが、これは地球環境に対して明らかに負の側面も計上されている。例えば戦争は大きな環境破壊と言えるが、軍産複合体が売上げた額もGDPに算入されているのである。これは明らかにここで言う「経済活動」ではない。
さらに、新自由主義経済学者第一人者であり、ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマン氏は「経営者の唯一の社会的責任は、株主のために多額の金を儲ける事、これが道徳的な義務だ。社会や環境上の目標を利益に優先する(道徳的に振舞おうとする)経営者は、非道徳的だ。企業の社会的責任が容認されるのは、それが利益追求の方便である時のみで、偽善が収益に寄与すれば良く、道徳的善意も収益に繋がらなければ非道徳だ。」とまで述べている。
とてもノーベル賞を受賞した、ノーブレス・オブリージュを発揮すべき学者の言葉とは思えないが、残念ながら、国家レベルにおいても、イギリスのサッチャリズム、アメリカのレーガノミックス以降の経済政策は、フリードマン氏に多大な影響を受けているのは事実である。
この発言を地球環境問題に当てはめてみよう。世の中に収益に寄与するための偽善が多く見られる。例えば東京電力のCMだが、「発電時にCO2を出さない原子力発電」と言っている。これはLCA(ライフサイクルアセスメント)を無視ししており、問題なのだが、さらに、この「発電時にCO2を出さない」とわざわざ断りを入れているところから考えると、東電はLCAのことは熟知した上で、確信犯で、収益に寄与するための偽善を行っていると言われても仕方がないであろう。さらにCO2の以外でも、予防原則(もし事故があった時のこと)も含め、原発が地球環境と相容れないことは自明である。
「環境と両立する経済活動」とは、「生態系と共生できる生業」と定義したい。そして「地球環境問題」とは「生態系と共生できない経済活動が引き起こす諸問題」と定義したい
上記の定義を強くインプットすることで、巷に出回っている情報が、本物なのか?偽善なのか?意識的に考えてみる習慣をつけることを強くお勧めする。