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The Clarinet

クラリネットなどを扱います。

Alfred Buerkner その4

2008-05-17 14:55:20 | アルフレート・ビュルクナー
○今回はアルフレート・ビュルクナーの、「問題の多い」モーツァルトの協奏曲を取り上げます。

○世に、ビュルクナーのK.622といわれる録音は二枚あります。まずその二枚の概要を示します。写真だと左が①、右が②です。

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1.Mozart / Clarinet concerto K.622/ 伊Melodram MEL216 mono 1952rec.

Hans Knappertsbusch(cond)
Berliner Radiosinfonieorchester
Alfred Buerkner(cl)


2.Mozart / Clarinet concert K.622/ 伊Longanesi Periodici GCL48 / 1956.3.18.Berlino

Hans Knappertsbusch(cond)
Orchestra Filarmonica di Berlino
記載無し(cl)

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○結論から申し上げてしまうと、ビュルクナーが吹いているのは1のみで、2は全然違う奏者、オーケストラの演奏です。2の盤がビュルクナーじゃないという根拠は色々ありまして、少し並べ立ててみます。

・第一楽章の終結部をクラリネットが弦に重ねて吹く。(←変)
・第二楽章の長前打音が装飾音符になっている(下品)
・上昇音階を吹くとき、最初の音を思い切りテヌート、その後急加速(下品)
・第三楽章、変なところでタイを切って演奏。(一人で練習しているようだ…)
・第三楽章、終結部直前の難所で大ミス(途中からラ・ソ・ファ・ミだけに。)
・オーケストラの明るい音色、軽いリズム。

とにかく2はビュルクナーの音とは似ても似つかぬものです。クナッパーツブッシュ/ベルリン・フィルというのも適当な話でしょう。ただ、ビュルクナーだと思って聴くと腹が立ちますが、そう思わなければ、ただの「変な演奏」として楽しめます。


○そもそも何故、2の盤にはクラリネット奏者名の記載がないのに、ビュルクナーの演奏といわれているのでしょうか。実際、私の所有する2の盤にも、前の所有者がAlfred Buerkner(cl)と青ペンで書き込んでいます。
正確なところはわかりませんが、おそらく、1の盤を所有していた誰かが、2の盤に記載がある、「クナッパーツブッシュ、ベルリン・フィル、K622」という三つの情報から、クラリネットはビュルクナーと決め込んでしまったのではないでしょうか。とにかく、2の盤についてはこれ以上問題にしないことにします。

○1の盤のクラリネットはビュルクナーです。それは音を聴けば知れることですが、ライブ盤ということもあってか、この録音はビュルクナーの最高のものとはいえません。結構小ミスもあります。(ちなみに最後の難所はオクターブ下で演奏。雰囲気からその場で変えたと思われる)又、常よりもリードが薄いように思います。ただ、スタジオ録音で示すような完璧な演奏でない分、別のビュルクナーの姿が見える。と価値判断すれば(ほとんどアイドル)、やはり持っておくべき一枚でしょう。

○1の盤にはベルリン放送響との記載がありますが、Paul Geffen氏はベルリン・フィルではないかと推理しています。これは考えられることです。この頃ベルリン放送響にはゴイザーがいましたから、ビュルクナーを呼んでコンチェルトを吹かせるということが少し考えづらいのです。又、Geffen氏は「クナッパーツブッシュ・ディスコグラフィー」の中で、1の演奏を「非常に疑わしい演奏」の中にくくっています。これはおそらく日本クナッパーツブッシュ協会の「Hans Knappertsbusch Concert Register」を根拠にしているものと思われます。しかし、氏は2の盤は所有されていないようで、(the same as above?(←1の盤))と紹介するにとどまっています。

○両盤は記載されている録音年に食い違いがあります。ところが先に紹介した、「Hans Knappertsbusch Concert Register」によると、クナッパーツブッシュがビュルクナーでK622を演奏したのは1943年の3月30日と31日のみ。どちらの記載とも違います。Geffen氏はこれを根拠に、「実は指揮者はカイルベルトじゃなかろうか」と推理していますが、これはどうなんでしょうか。結局問題はLP記載の録音年を信頼するか否かになってくるわけで、信頼するならクナ以外、しなければクナかもしれない。といった程度としかいえません。この辺クナの演奏に詳しい方に教えていただきたいものです。

○結局、1の演奏は、指揮者(決定できず。クナかも知れないし違うかもしれない)、クラリネット(ビュルクナー)、オーケストラ(多分ベルリン・フィル)

○そして、2の演奏は、指揮者(わからないが多分クナではない)、クラリネット(わからないが、絶対ビュルクナーではない)、オーケストラ(わからないが、絶対ベルリン・フィルではない)

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○両盤の併録等を以下に示します。

1.Live 50 Concerti Indimenticabiliシリーズの16。 併録はシューベルトの「未完成」とブルックナーの第9番。(共に1950rec.ベルリン放送響と記載)

2.I grandi Concertiシリーズの48。併録はセル/カサドシュ/NYフィルのモーツァルト、ピアノ協奏曲24番。

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○と、いうことで。

○次回は、ビュルクナー畢生の名演奏、レーマン指揮、ベルリン・フィルのモーツァルトのグラン・パルティータを取り上げます。

○以下は参考にさせていただいたとこです。

http://www.syuzo.com/kna-archiv/kna-concert.html
http://www.trovar.com/kna.html

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2 コメント

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ビュルクナー!!! (しゅるつ)
2008-06-21 17:42:47
お邪魔します。私にとってもビュルクナーはアイドル、
いやそれ以上の存在かもしれません。
セラフィムのモーツァルトから始まって、可能な限り彼の演奏を
追い求めてきました。

1の盤、ビュルクナーであることは明白ですね。
ただ、スペルがBirknerになっていたりしているあたり、
いかにも海賊盤という感じです。
指揮もクナではないような気がしますね。
演奏はキズがありますが、やはりただものではないですね。
自在なアゴーギクが決してあざとくならず、ロマンティックなのに
古典的な透明性を失わない、ヴィルトゥオーゾの至芸です。
K.581だったら、どんな演奏するのでしょうか・・・。

ところで、2の盤のほうは、クナの可能性が結構高いと思います。
この演奏は何種類かの盤で発売されており、
Wofgang Schroederのクラリネット、
クナ指揮ミュンヘン・フィルの演奏とクレジットされています。
(1962年1月6日)
シュレーダーはおそらくMPOの奏者でしょう。
私の持っているDISQUES REFRAINと比較しましたが同一です。

私も以前ビュルクナーかと思って購入し、がっかりしたくちです。
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これはしたり! (camel807)
2008-06-21 18:46:53
>しゅるつさん

これはなんと!実は私、クナ&MPO、シュレーダーのディスクを買いそびれており、念頭には、ひょっとすると…、とあったのですが…、CDにもなっているのに…。

シュレーダー盤を聴かれた上なのであれば、間違いありますまい。私の認識不足でした。ご指摘ありがとうございます。

どちらにせよ2の盤に記載の録音データは間違っているのですね。
しかし、MPO首席だとすると、これがライブであることを差し引いても、かなり変わった演奏家ですね。1の盤についておっしゃる事には全く賛成です。

閑話休題。

私もセラフィムのケーゲルシュタットでビュルクナーという演奏家を知りました。決して大げさでなく、最初のEsの音から仰天しました。
えっ!こんな音あるの!本当に透明で、何のストレスも無く、フレーズがずーっと先まで伸びていくのが目に見えるようです。それにハーモニーのきれいな事!

>K.581だったら…

うーん、想像するのが怖いですね。もし見つけたら気絶してしまうことは確かだと思います。

※今、取り上げているシュテールに関しても、間違いを口走る可能性大いにありますので、ご指摘いただければ幸いです…

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