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The Clarinet

クラリネットなどを扱います。

Ulysse Delecluse その4

2008-05-07 23:07:41 | ユリス・ドレクリューズ
○フランスのクラリネット奏者ユリス・ドレクリューズを取り上げるのも四回目になりました。

○今回は彼が参加した室内楽録音、ベートーヴェンのセプテット、オクテットを取り上げます。

○Ulysse(ユリス)という名前について調べてみたのですが、ホメロスの二大叙事詩、『イリアス』『オデュッセイア』、後者の主人公であるところのオデュッセイア、英語で言うところのユリシーズのフランス語読みだそうで、ずいぶん由緒ある名前なのですね。神話が出てきたついでに、いまやもう誰もやらなくなった古臭い分類法で言うと、ドレクリューズは明らかにアポロ型の演奏家ですね。

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Beethoven / Septet op.20 / 米VOX-Polydor PLP6460 / mono

[Pro Musica chamber group]
H.Merckel(vn)
P.Ladhuie(va)
A.Navarra(vc)
H.Moreau(cb)
U.Delecluse(cl)
J.Louchez(bn)
G.Coursier(hr)

この曲は作曲当時ヒットして、若きベートーヴェンを経済的に結構潤したそうです。各楽器に耳なじみのよい旋律が次々と現れて、野村"あらえびす"胡堂は「女学生でもしっている」(←いつの時代だ…)なんて書いています。

私は第二楽章冒頭のクラリネットの旋律がちょっと"グラン・パルティータ"のアダージョに似ているので、あら、モーツァルトを意識したのかしら、ドキドキ…、と思っています。

…と、気持ち悪い話はこれくらいにして。
アンリ・メルケルはパリ・オペラ座管やコンセール・ラムルー管の団員、パリ音楽院管のコンサート・マスターを務めた後、ソリストに転身したヴァイオリン奏者で、ソリストとしての録音も多くあります。
他に参加している人で私が名前を知っているのホルンのクーシェくらいのものですが、他もおそらくフランスの名人でしょう。全体の印象としてはソリッドな音色が支配的なように思います。
ドレクリューズのクラリネット、やはりこの人は何を聴いても、テクニックを意識させます。これは、ドレクリューズが単なる技巧家である。なんて言いたいのでなくて、彼の求める音楽がそれだけの技巧を要求するものだった、という意味で言うのです。「この曲はウラッハでなくては!」という人に是非聴いてほしい一枚であります。
ちなみに先に乗せたメンバー表では訂正しましたが、ドレクリューズの名前がLPでは、N.Delecluseと誤って表記されています。実は別人だったりして。

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Beethoven / Octet op.103 / 米VOX-Polydor PL6130 / mono

Fernand Oubradous(direction)
P.Pierlot - C.Maisonneuve(ob)
U.Delecluse - J.Lancelot(cl)
J.Devemy - X.Delwarde(hr)
P.Hongne - M.Rabot(bn)

八人全員がソリストという大変贅沢な録音。それぞれの一番を吹くのは「その②」で取り上げたモーツァルトの五重奏曲の管楽器と同じメンバー。
ドレクリューズとランスロが並んで吹くというのも、豪華な話です。
ウーブラドゥスがdirectionとなっていますが、ここでは監修ぐらいの意味でしょうか。管楽器だけという編成のためか、この曲はセプテットほどの知名度がありませんが、こうしたメンバーを得ると、素晴らしく響きます。

併録は↓
Mozart / A Musical Joke KV.522
Rene Bas SQ & J.Devemy - M.Delwarde(hr)

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○四回にわたってドレクリューズを取り上げてきましたが、次回、彼の録音でもっとも手に入れやすく、又有名な『兵士の物語』を取り上げて、一度彼を離れようと思います。ミヨーやラヴェルなど重要な録音はまだあるのですが、それについてはまた触れる機会もあるだろうということで。

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