読まず嫌い、なんだかなぁ~

2010-04-06 21:37:20 | Weblog
ウェイン・ショーターのテナーをよく聴く。長らくウェイン・ショーターはある明白な理由により聴かず嫌いだった。その明白な理由とやらを述べることはすまい。ハービー・ハンコックも同様の理由により聴かず嫌いである。しかし、音楽以外の理由により優れた音楽を忌避するのはあほらしいと思うようになってきた。で、ウェイン・ショーターを聴いてみると、これが、スゴクいいんです。モダン・ジャズの世界でテナー・サックスといえばジョン・コルトレーンとソニー・ロリンズが2トップというのが定説ではあるのだが、私的に申せば、これはもうウェイン・ショーターが断トツにズ抜けてるのである。ショーターのリーダー作で言えば、「Super Nova」以前のショーターが最高に好きだ。4ビートに乗ったショーター風としかいいようのないスウィング感に、心揺さぶられる。マイルスのグループでのショーターでは、ロック・ビートと4ビートが交錯する奇怪な12小節ブルース「81」が素晴らしい。ジャズ・メッセンジャーズでのショーターでは「3 Blind Mice」のソロがかなり変態的ショーター風味でニヤリとしてしまう。そんな素晴らしくも私的ストライク・ゾーンにズバッと投げ込んでくるショーターなのだが、ソプラノ・サックスを手にし始めフュージョン的世界に踏み込んだショーターは全く私の好みからかけ離れてしまう。かの「ウェザー・リポート」も、そんなに好きとは言えない。ソプラノを多用しフュージョン化したショーターより、モダン・ジャズの中で異彩を放っていたショーターが好きだ。だから、冒頭、「ウェイン・ショーターのテナーをよく聴く。」とわざわざ「テナー」を強調して書いたわけである。
本の世界で読まず嫌いというと、シドニィ・シェルダンということになろう。新聞の全面広告の仰々しさに、アレルギー反応を示した。更にベスト・セラーとなっては益々背を向けたくなるという天邪鬼的精神が災いしシドニィ・シェルダンから遠のいた。その代表作ともいえる「ゲームの達人」などいつでも読めるワイと思って読まなんだ。そして月日は流れ気が付くと「ゲームの達人」は絶版になっていた。そうなって初めて「読んでみよか」てな気分になり、アマゾン・マーケットプレイスで購入した。で、読んでみた。オモロかった。はい、オシマイ。復讐の物語は面白くなるわ、そりゃ。ついでに買った「血族」も読んでみた。これもオモロかった。だけど圧倒的じゃないと勝手に思った。「ゲームの達人」も「血族」も私のストライク・ゾーンから微妙にハズれる。パブロ・デ・サンティスの「世界探偵倶楽部」みたいな方が断然に好きなのである。「世界探偵倶楽部」買った時についでに買ったシドニィ・シェルダンの「リベンジは頭脳で」はまだ未読。読み始めよかどうしよか。阿藤快風にいえば「なんだかなぁ~」

「大菩薩峠」のキョーレツな個性を放つ奴等にノックアウトされるの巻

2010-04-05 19:18:25 | Weblog
iPadとかkindleとか、いよいよ電子書籍時代の到来なのか。紙媒体の従来型書籍は消滅の憂き目に遭うだろう。書籍が電子化されれば、絶版になった書籍も恐らく容易く読めるようになるのではないか。密かに期待している。書籍の電子化といえば青空文庫が思い浮かぶが、青空文庫もそうした端末で読めるのだろうか。これも期待している。
青空文庫といえば、ついに「大菩薩峠」を読み終えてしまった。青空文庫でこの大長編を読み切るとは快挙かもしれない。「大菩薩峠」の分けの分からない面白さに首根っこを押さえられ、逃れられずに「大菩薩峠」の世界に引き摺り込まれる。目が眩むほどの様々なキャラが登場するが、中でも異彩を放つのが宇治山田の米友である。この痛快無比のキャラが登場すると中里介山の筆致が踊りだす。執筆の途中から作者自身米友への思い入れが深くなり、主役を押しのけるくらいの役柄を与えてしまったのではないだろうか。柴田錬三郎の「眠狂四郎無頼控」にも明らかに宇治山田の米友的なキャラが登場するが、ただの異形の猛者というだけで米友のような人間的な深みはない。流石の中里介山といえども、やはり「大菩薩峠」は長すぎたのか中弛みはあるし、最後はもうグズグズだ。「大菩薩峠」の読み方としては、勢いに任せ面白いと思えるところだけ読む。ツマランと思ったらそれ以降は未練を残さずスパッと切り捨ててしまう。それが流儀だろう。

音楽活劇「バンドネオンの豹」の小説版ミステリ

2010-04-04 16:17:47 | Weblog
あがた森魚さんの「バンドネオンの豹(ジャガー)」の小説版 高橋克彦著「バンドネオンの豹(ジャガー)」(講談社文庫)が期待外れで眩暈がするほどツマランかったということは以前述べた。が、しかし。今回「バンドネオンの豹(ジャガー)」の小説版ともいうべき一冊のミステリーを見つけた。「世界探偵倶楽部」パブロ・デ・サンティス著(ハヤカワ文庫)である。ブエノスアイレス出身の作家があがた森魚さんの音楽を知ってる筈は無論なかろうが、もしや、と思わせるワクワク感がこのミステリーにはある。怪しげな館。魔術団。カルト。秘密の地下倶楽部。仕込み杖。連続殺人。そして何よりエッフェル塔建設中の巴里大博覧会が舞台とは、役者が揃いすぎではないか。

 経験は人を欺く。いまやっていることを、これは前にやったことがあるぞという気にさせる。とんでもない嘘っぱちさ。いつだってそのときが初体験なんだ。

この諧謔精神溢れるゴシックミステリーとあがた森魚さんの「バンドネオンの豹(ジャガー)」は不思議とユニゾンする。辻加護のユニゾンのような狂気のユニゾンだ。このミステリーを読みながら私の頭の中はあがた森魚さんの「誰が悲しみのバンドネオン」と「パール・デコレーションの庭」が鳴り響いていた。