文公社的考察

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『三十路過ぎてのトラベラー』【続編・ファンタジー】

2011年02月19日 01時11分52秒 | 日常考察
 ナディーンに連れられて村へと向かう途中、色々と質問攻めにあった。私も質問したが、どうにも、答えが答えになっておらず、質問するたびに謎が増えるだけだった。

 村が見えるとナディーンは走りだし「すぐに戻る」と言い残して、村へと走って行ってしまった。
一人残された私は途方にくれながら、少しずつ村へと歩き近づいていく。
 ふと辺りの景色が飛び込んできた。都会のビルの街並みでは見る事ができない景色が広がっていた。
 緑が風で一斉に揺れて波うった。私はあまりの美しさに一瞬見とれてしまい、緑の波をじっと眺めていた。
「綺麗……」
思わず口から漏れでた言葉にしみじみと感じた。
生まれた頃からコンクリートに囲まれてくらしてきた私にとって、自然は離れた場所にあるものでしかなく、こんなふうに目の前に広がっているものではなかった。
私は胸いっぱいに青葉の香りを吸い込んだ。
「うふふ、気持ち良いー」
両手を広げてぐるぐる回っている私に、いつの間にか帰ってきていたナディーンが恐る恐る声をかけてきた。
「あの……何をしてるんですか?」
全く気配に気付けずに、夜道で鼻歌全部聞かれたような気分で私は顔を真っ赤にした。
「村長が歓迎したいそうだから来てくれと……僕は何か邪魔してしまいました?」
真顔で聞くナディーンに私は言葉無く、手を振って問題ないと告げた。……恥ずかしくて顔を見れない私は、しばらく山間を眺めながらナディーンの背中について歩いて行った。
ナディーンも流石にそっとしておいてくれた。
村は学校の校庭ほどの広さに、簡素な木造家屋が建ち並んでいた。
「ようこそ風の村メルサへ」
そう言いナディーンは笑った。
「えーと、君の言うニホンと比べてどうかな?」
ナディーンは辺りを見回しながら私に尋ねてきた。「うーん、そう……素敵なところかな」
私がそう答えると、ナディーンは照れながら言った。
「良かった」
 ナディーンは照れながら言った。
「ありがとう……ええと、名前を聞いてなかったね」 ナディーンは手を差しだしながら、私の名前を尋ねてきた。
「私、木村真智子(きむら まちこ)」
私は名乗りナディーンの手を握った。握手を交わし、ナディーンに連れられて村長宅に向かう。村の住民は私を物珍しく遠くから笑顔で眺めている。
村長宅の扉が開かれ招きいれられ、私は足を踏み入れるのだった。

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