文淵の徒然なるかな

日々の徒然なるのを綴る

桃太郎 25 犬編

2017-01-25 23:40:29 | 日記
 二月程街道を歩き見えた町で宿を取る事にした。
 旅の間に壮介はカヨが寝静まった夜、酷くうなされて叫ぶのを聞いた。そして決まってうなされて目を覚ましたカヨは酷く怯え震えるのだった。
 その状態に心痛める壮介であったが、道中の言葉少なく食事をする壮介とカヨ、お互いに話題も少なくあり無言では無いが近いものであった。

 日に日に食が細くなるカヨを心配する壮介であったが食欲がないと口にして食べ無いカヨを見て、壮介はカヨがどこか悪くしたのでは無いかと心配した。
 その心配が形になったように粥を取っていたカヨが突然口元を押さえて席を立った。何事かと慌てた壮介はカヨの後を追った。カヨは厠に入り戸を閉めた。心配して戸を叩く壮介だったが大丈夫と繰り返すだけのカヨだった。
 仕方なく部屋に戻ると宿の女将が思わぬ事を口にした。

「身重て旅とは感心しないねえ。何か事情があるんだろうけどさ」
「今……なんと?」
「お腹に子がいるんだろ?感じで分かるよ」

 カヨが身籠っている事を聞かされた壮介は愕然とした。しかし女将の言葉を否定する。

「何かの間違いだろう!」
「嫌だね。あんたも男なら責任持ちなよ。あんな若い子連れて子ができたら知らないかい?最近食が細いとか吐き気があったりしたんだろ?間違いないよ」
 
 その言葉に衝撃を受けた壮介はその事実を受け止められずにいた。と刹那、激しい足音がした。いつからかカヨが女将の話しを聞いていたのであった。

「カヨ!待て!」

 走りいずこかへ去ろうとするカヨを捕まえた壮介は泣き叫ぶカヨを抱きしめた。もはや疑うまでもない事実、カヨは鬼の子を身籠ったのだ。十三の娘には重すぎる現実に壮介は心痛め涙を流した。ただ泣き叫び取り乱すカヨを抱きしめるしかできない壮介であった。

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