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小澤征爾・著「ボクの音楽武者修行」

2023年07月15日 | 読書ノート

 この作品は昭和37年4月音楽之友社より刊行され、昭和55年7月25日新潮社の新潮文庫として発行されました。著者の小澤征爾はもちろん国際的指揮者としてクラシック音楽好きの誰もが知っている小澤征爾さんのことですが、この作品の面白いのは大御所として活躍する以前(駆け出しと言ったら失礼ですが)の小澤征爾さんが昭和37年にまだ26歳の若者として自ら綴ったところです。1959年から1961年までの約2年半、その場その場でふりかかってきたことを精いっぱいやって、自分にできる限りのいい音楽をしてきたことが生き生きと語られています。



――スクーターを唯一の財産として神戸から貨物船に乗りこみ、マルセイユからパリまでたどりつき、フランス国内、アメリカ、ドイツ、そしてふたたびアメリカへと回って日本へ帰る――お話の舞台は日本ではなく海外です。1964年に日本はようやく海外旅行の自由化が始まった訳ですから、この時の“世界の小澤征爾”さんが繰り広げる体験には新鮮な驚きや喜びに溢れています。


 また、なぜ貨物船で海外旅行に出たのかといえば、それは小澤家が裕福な資産家ではなく貧しかったからです。しかし小澤家は指揮者として武者修行に行くことを望んだ息子の意思を全く否定せず応援したことが、旅先から実家宛に送る手紙に書かれた素直なやりとりから読み取れます。


 この本は小澤さんの主な行動にスポットを当てた部分と日記として生活について書かれた部分が交互に記載されており、読んでいると出来事の順番を見失うことがありました。これは自分に限ったことで全ての読者が同じとは限らないのですが、ここでこの旅の流れを時系列で大雑把ですが整理しておきますので、今後読書をすることがあれば参考にしていただければ幸いです。


1959年

(日本出発 貨物船淡路山丸による航海)

2月1日 神戸を出港

2月4日 フィリッピン エスタンシャ島寄港

2月28日 インド ボンベイ寄港

3月10日 アフリカ ポートスーダン寄港

3月12日 エジプト アレキサンドリア寄港

3月?日 イタリア シシリー島寄港

3月23日 フランス マルセイユ上陸

(ヨーロッパ スクーターや列車による移動)

4月8日 フランス パリ

9月7日 フランス ブザンソン 国際指揮者コンクール・一次

9月9日 国際指揮者コンクール・二次

9月26日 ドイツ ベルリン 音楽祭へ

10月12日~ パリ、ドナウエッシンゲン、ストラスブール

12月4日 ノルマンディの修道院

12月28日 チロル

 

1960年

1月11日~ パリ 自動車免許取得 トゥールーズで演奏会ほか 

3月29日 ロンドン、パリ

7月11日~ アメリカ ボストン タングルウッド・コンクール

9月末~ パリ、ベルリン

10月~ カラヤンによるレッスン

10月9日 ドナウエッシンゲン現代音楽祭

10月24日~ パリ、ベルリン、チロル

 

1961年

1月6日~ パリ、ベルリン

3月 アメリカ ニューヨーク・フィルハーモニー副指揮者就任

4月24日 羽田着 日本(JALニューヨーク・フィル特別機)



 私がこの本を最初に手にしたのは昭和47年(1972年)頃だったと思います。その頃若き小澤征爾はいい音楽を世の中に送り出し続けていました。NHK交響楽団の正指揮者には小澤征爾より3歳年上の岩城宏之がいて、やはり新鮮な音楽を世の中に送り出し続けていました。テレビ番組では山本直純の「オーケストラがやってきた」が放映されクラシック音楽が茶の間(今は使われない言葉!)により身近になった時代でした。この書籍をまちの本屋で見つけた時に、表紙の絵はシンプルでしたがスクーターに乗って音楽修行に行くという感覚に心がワクワクし少ない小遣いを顧みず即座に購入しました。この本のおかげで自分の人生もずいぶん豊かになった気がします。


(おまけ)

1996

タングルウッド 小澤征爾

ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」

https://music.youtube.com/watch?v=pBw3Cnwnwqs&si=Ufc1APaDkPzxQMsS



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