ぼんのうhouse

だいたい毎日妄想モード

掌の雪2

2017年02月12日 16時20分04秒 | SS(ラビユウ)
暖炉の前に座り込むラビの赤い髪の毛は,炎に照らされて更に赤く見えた。
暖かい色が,部屋全体を包み込んでいた。

ブックマンはこの近くで調べたいことがあるらしく,ラビに先に教団に帰るよう指示して部屋を出たのが2時間前だ。
自分たちの任務はラビの大活躍(破壊)によって予定より早く完了し,ファインダーは(後始末に)みな出払っている。
夜が明けて朝一番の列車に乗れば,ユウたちと合流することになっている。
今夜はよく冷えるせいか,暖炉に火をくべてもくべても背中に冷たい空気が忍び寄ってくる。
宿屋の女主人が貸してくれた厚手のブランケットを羽織ると,あの日の事が思い出される。
雨の日の任務だった。

「お前は俺の 何に興味を持っているんだ・・・」
「何って…すべてさ!」

まっすぐに見つめ返す黒い瞳には,窓を流れ落ちる雨の雫が反射して見えた。

「俺の『記録』なら読んだろ,それが全てだ」

全て…
生きているってどういうことだろう。
あのファイルの文字の中にもユウは確かにいた,でもあれは記録。
過去のユウだ,生きた証でもあるが。。。
意味もなく生きている人間なんかいないし,みんなそれぞれ歴史を持って生きている。
興味があるのは現在のユウだった。あれが全てではない。

何を考え,何を見て思い,何を探しているのか。
手を伸ばして腕を強くつかんだら,軽く払われ,更に強く肩を掴んだっけ。あの時。
力づくといえば力づくだったし,途中から同意したといえばした事になるような言葉もあった。

よく知っている原始的な感覚が体の奥で動き出す。
立ち上がるとブランケットをベッドの上に放りだした。
暖かい部屋を,そっと窓から抜け出す。
廊下から素直に行くと,残ったファインダーや宿の主人に声をかけられどこへ行くんだ何かあるのかと色々面倒くさい。
屋根を伝って2階からひらりと飛び降りる。このくらいなら楽勝だ。

月は出ておらず緑の木立が黒い塊になって身を寄せ合っている。
寒さで身じろぎできないようにも見えた。
街はずれの家並を抜け,街を見下ろすことができる場所まで出ると,襟もとからゴーレムを取り出した。

「じじい,ちょっと気になることがあるから先に行くさ」
じじいからの返答はない。
「明日ユウたちと合流だったさ?明日会おう」
ゴーレムのスイッチを切ると,ゴーレムは生き物のようにラビの回りをくるくると2・3回飛び回り,マフラーの端にきゅっとしがみついた(様に見えた)


 □◆□◆□◆□◆


月もない夜…東の空の色はまだ濃く,朝の気配は遠い。
きーんと音がしそうなくらい冷たく張り詰めた空気の中,宿にしている教会へと続く牧場沿いの並木道を歩いていると,向こうの山の稜線に不思議に動くものがあった。

「…AKUMA?」

身構えた瞬間「それ」は並木道の真上で動きを止め,派手な音をたてて何かが落ちてきた。
夜目でもわかる赤い髪の毛とマフラー。

「ラビ!?」
「いってええええええ!!でもユウに会えた~…!!!やったぜ!」

その笑顔と長かったものが短く縮んでいく支柱を見て,大体の事は瞬時に理解できた。
夜中に大きな音を立てたことや並木道の立派な木を何本か折ったことやあれやこれや,狙ったように俺の真上に落ちてきて抱きつくような形にわざとなったこととか色々理解したうえで,いつも通りの反応をくれてやろうと思った。
つまり,心置きなく拳を見舞ってやったのだ。

「愛のむち!?ユウひどいさ~!」
「手加減はしたぜ…」

服についた葉っぱをつまみながらラビは,ひょいと立ち上がる。
あんな高いところから落ちたのに,ケガ一つないこいつは大きな成りのくせに身が軽い。
もしかしたらエクソシスト1なのではないか。

「ユウに会いたくて空を飛んできましたさ!」
「明日になりゃ合流する予定だったろ」
「今日が特別な日だったから,今日会いたかったんさ・・・」

なーにが「トクベツ」だ。
知らんぷりをして歩き出すと,ラビが強く腕をとり牧場の中へ走り出した。
ブランコがかかった木があり,幹に隠れるようにして頬を寄せてきた。
冷たい空気を長い時間受けたラビは氷より冷たいのではないかと思うほどだった・・・手も頬も。

唇も冷たいのだろうかとふと頬を離すと,待ってましたとばかりに口づけて来た。
舌を絡めると舌まで冷たい。
息までも冷たい気がする中,かさかさの唇をペロンとなめてやると頬が緩み,微笑んだのがわかった。
あの笑顔…

「人間氷柱かよ」
「愛の氷柱…とお呼びください…」

ラビによると,今日は聖バレンタインの誕生日で愛を告白する日らしい。
男から女からプレゼントや花を添えて国によって違いはあるらしいが,大事な日だと言うんだ。
冷たい夜の空気の中,俺に抱きついたまま離れずにそんな話を始めやがった。

「誰が誰に愛の告白するんだ」
「俺がユウにさ!!」
ちょっとむっとしたようにラビは,言った。

「愛ってガラかよ」
「会いたくてたまらない,欲しくてたまらない,顔を見たい,触りたい,微笑んでほしい」
「欲情か」
「生きててほしい」
「…」
「って願うのは愛じゃね?」

「かもな…俺にはわからんがそうかもしれねえ」
「ユウはわかんなくていいさ…俺はそう決めている,それで十分だろ?」

くしゃみをし,凍えた手でもどかしげに俺の団服のボタンをはずし始める。
寒い中こんなところでおっぱじめるのは断固拒否しようと思っていたが,鼻の頭を真っ赤にして,髪の毛には薄く氷がついていたのを見つけた。
命がけだったろ…馬鹿なやつだ,ラビ。

「十分だ」

心の中で答えてやった。
雪がひとひら,赤い髪の毛の上に落ちてきた気がした。
掌を差し出すと,掌の上でとけてなくなった。

人の気持ちも,とけてなくなるのだろうか。
その時俺はどうすればいいのだろうか。
「いつまでも」と言ったアルマもいなくなったように,人の存在は不安定で儚い。

「十分だ」

もう一度繰り返し呟いた。
お前が決めてその記憶にとどめていれば,俺も変わらずにいられるんだろう。
雪は幻だったのか,空にはまだ夜の星座が俺たちを見降ろしていた。

抵抗する気も失せて,なすがままにされていたらさすがのラビも気が付いたらしく動きが止まった。
「そりゃこんな寒い中は…だめさね…」
違う。ラビが好きだといった微笑みで返してやる。

「…早くしねえと,夜が明けて人が来るぜ?ここらだったらちょっとそっと声を上げても誰にも気づかれねえぜ…?」

その言葉にラビはバカみたいに口を開けて俺を見ていたが,やがていたずらを思いついた子供のように顔をくしゃくしゃにして笑った。
まだ朝は遠い。



◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆

あけましておめでとうございます!!!
って2月だよーーー!!
遅くなってすみません。。。。ご想像通りなんですが,バレンタインが「クリスマス」の予定でした。
ホワアァ~イト・クリスマァ~ス♪だったんです・・・・すいません・
自分でも信じられません。

そしてそんなこんなしているうちにクラウン出ましたね!
久しぶりにDグレ・・・・うん。
Dグレでした。ページ数が少なくてもDグレだった。
3月にファンブック出るので楽しみにしているですよ☆ラビが出てこないとかなんとかもう,気にする段階過ぎてるもん。
泣いてないです・・・!!!!

あと,
実は寒中見舞いのイラストも描いたんだけど,データが本宅のPCに入ってて取りに行かないとあげられないんです・・・くすん。
演歌歌手のようなラビを描きましたー!
来週必ず支部かこっちにあげるですよ。

あっ,支部にずっと前に出したラビユウのエロ小説あげてます。
ラビたんもユウたんもモテモテです。アレンとかティキとか色々出てきてますが,AV並に「やってるだけ」感満載なので覚悟のあるかただけお願いします。

LOVE×3こちら

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