~青いそよ風が吹く街角~

映画(主にミニシアター映画)の感想文を軸にマイペースで綴っていきます。

『私たちの幸せな時間』・・・ ※ネタバレ有

2007-09-01 20:12:46 | 映画【韓国】
孤児・物乞い・貧富の差・・・
一昔前の韓国ドラマテイストですね。
脇役陣も韓ドラ常連メンバーが多かったし・・・

『私たちの幸せな時間』の主人公の死刑囚:チョン・ユンス〔カン・ドンウォン〕は罪の意識を常に抱え込んでいて
刑務所でキレて他の囚人に暴力をふるった後も泣いていたし、
悲運の青年と心に深い傷を抱え込んでいる若い女性:ムン・ユジョン〔イ・ナヨン〕のメロドラマだったのかな?
死刑制度を問題提起するような台詞、死刑執行人の心の葛藤を描いた場面もあり、
社会派的な要素も含まれていたけど、
基本的にはヒューマンドラマなのでしょうね。
(10年ぐらい前にシャロン・ストーンが死刑囚の役を演じていた
アメリカ映画『ラストダンス』を思い起こしました。)

ユンスが最期にユジョンの事を「ヌナ!」と叫ぶ場面が印象深かったです。
(韓国語で“ヌナ”は男性が年上の女性を呼ぶ時の言葉、日本語に訳すと“お姉さん”。)
“ユジョンさん”ではなく“ヌナ”と呼んだ事はユンスのどういう気持ちを表現しているのかなって・・・
やはり、心に傷みを抱えた者同士、恋とか愛とかありきたりの感情ではなく、
家族のようなぬくもりを得る事が出来た気持ちが表れたのかなって
私はそう解釈しました。



カン・ドンウォンは演技が硬く、いつものきめ細やかさに欠けるような気がしました。
孤児として育ち、裏の世界を見て育った役だと思うけど、裏ぶれた擦れた雰囲気がないんですよね。
雪遊びの時の笑顔なんかはベビーフェイスで素の善良さが滲み出てしまっているし・・・
ミーハー的には母性本能がくすぐられて可愛いな♪って思ったケド、
役柄には合わないような・・・。
(↑ファンの方、すいませんm(_ _)m )



私的にはイ・ナヨンの涙の演技にもらい泣きしました。
特に後半、
母を憎しみながらも赦そうとする気持ちを訴えかけるユジョン・・・
ユンスの最期を泣きながら見とどけるしかできなかったユジョン・・・
複雑な感情が心の奥から湧き出てきて涙があふれるリアルな演技が秀逸でした。

イ・ナヨンは『小さな恋のステップ』よりも
『私たちの幸せな時間』で主演女優賞を受賞してほしかったと私は思いました。
韓国で“『NANA』を演じてほしい女優”というアンケートがあった時、彼女が1位になったそうです。
“女に嫌われない女優”“アンチが少ない女優”と言われ、女性ファンも多いそうですね。
私感ですが・・・
イ・ナヨンを同年代の日本の女優に例えるならば
柴咲コウや加藤あいに似ていると思うので、
日本受けしそうなタイプのようにも思えます。




P.S.
原作小説の日本版は蓮池薫さん(下写真:左)が翻訳されています。
新潮社の蓮池さんのブログにソン・ヘソン監督(下写真:右)と共に5月に来日した
原作者のコン・ジヨンさん(下写真:中央)
とのエピソートが綴ってありますよ。


4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
私も家族だと思います・・・ (sannkeneko)
2007-07-20 16:05:19
コメントを頂きありがとうございました。

私もBCさんのようにイ・ナヨンの演技の目が行きました。
クライマックスより母の病室での叫びと赦しの方が
胸が詰まりました。

「ヌナ!」は文字通りの「お姉さん」のニュアンスではないでしょうか。
ポラロイドを観るシーンは仲のいい姉弟のようでしたし、
擬似家族のような感じ・・・その上での「ヌナ」のように思いました。
その部分では男女のラブストーリーではなくヒューマンドラマだったのかな?
誰彼にとお勧めするには重い素材の映画ですが・・・。
返信する
家族・・・ (BC)
2007-07-21 14:53:02
sannkenekoさん、ようこそ♪
コメントありがとうございます。(*^-^*

この作品は観てから一週間経つのですが今でも余韻が残っています。
そして、思い浮かべるのはユジョン〔イ・ナヨン〕が母を赦そうとする場面です。
ユジョンが従兄にレイプされた事を母に話した時に
母がああいうヒドイ態度をとったのは悪意がなかったと信じたい気持ちです・・・。
母は身内同士の出来事なだけに衝撃も大きく気が動転してしまっただけだと思うし・・・。
でも、娘にとっては母親が唯一の心のよりどころなので、
心のバランスを崩していってしまったのでしょうね。

>「ヌナ!」は文字通りの「お姉さん」のニュアンスではないでしょうか。
ポラロイドを観るシーンは仲のいい姉弟のようでしたし、
擬似家族のような感じ・・・その上での「ヌナ」のように思いました。
その部分では男女のラブストーリーではなくヒューマンドラマだったのかな?

そうでしょうね、同感です。(*^-^*
ソン・ヘソン監督も
「面会時間の場面(面会室で二人を隔てる透明アクリル板が映る場面の事かな?)で、
カメラの焦点が一人にあっても、ガラス(透明アクリル板)に反射したもう一人の姿を取り込みながら
二人同時にスクリーンに入れ込む事で
“精神的な双子”のような印象を出そうとしました。」
という事をパンフレットのインタビューで仰っていましたね。


P.S.
重厚な作品なので周囲の人達におススメしにくい作品ですよね。
私的には・・・
カン・ドンウォン、イ・ナヨンと同年代の若い人達にも観てほしいな。
(“ぬくもり”を感じとってほしい作品かな。)
返信する
こんばんは (kusukusu)
2007-07-23 22:36:19
こんばんは。
この作品のカン・ドンウォンの印象は同感。
ただ役柄には合っていないかもしれないけれども、雪合戦のシーンとか、「素」の魅力が出てしまっているような点がある意味ではリアル感があるとは思いましたけどね。役柄に合っているかどうかは別にして、雪合戦のシーン自体は好きなシーンだったし・・。

ちょっとひっかかったのは、後半に明かされる過去の事件の真相ですが、あれは話を作り過ぎているように思えました。
返信する
事件性と雪合戦。 (BC)
2007-07-25 02:16:47
kusukusuさん、こんばんは☆
コメントありがとうです。(*^-^*

後半に明かされる事件の真相(経緯)は確かに作りこんでいた感はありますね。
ユンス〔カン・ドンウォン〕が信じていた人(仲間と恋人)に見捨てられてしまった
悲壮感(絶望感)を際立たせようとしたのかもしれないけど・・・。
入り組んだ事件性として描くならば、
事件の起因となった子宮外妊娠した恋人や
ユンスに罪を全部押し付けた仲間の心理も丹念に描いてほしかった気もしました。

私的には、雪合戦の場面のユンスは徐々に微笑みを取り戻していく感じのほうが
役に合うような気がしてしまって・・・
でもまぁ、カン・ドンウォンの素の善良な笑顔に「ほっ(*^-^*」と
束の間、観ていて心が和んだので私も雪合戦の場面は好きなのですよ。(^-^)
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。