goo blog サービス終了のお知らせ 

keisukeの徒然草

徒然なるままに…

東京新聞と「メール脳」

2004-10-19 10:55:37 | Weblog
前回紹介した「ゲーム脳」研究の森昭雄教授ですが、各方面から叩かれて少しは反省するかと思いきや、性懲りもなく今度は「メール脳」と題する研究を発表しています。発表の内容は「携帯電話でメールを打ってばかりいると大脳の前頭前野の活動が低下し、痴呆症に似た状態になる」というもので、要はゲームをメールに変えただけです。当然のことながら、内容のトンデモぶりも前回と同じ、いや前回以上です。

「一見、メールで文章を作っているので脳が働いているように思えますが、実際は一覧表から言葉を選んで文章を作っており、ほとんど前頭前野は働いていません。指の筋肉を収縮させているだけです」と森教授は厳しく指摘する。

いったい全体どうすれば脳を働かせることなしに「一覧表から言葉を選んで文章を作っ」たり、「指の筋肉を収縮させ」たりできるのでしょうか。素人の私でも分かるほどに支離滅裂です。

もっとも、私の意図は森昭雄教授を指弾することではありません。迷惑な人だとは思いますが、ひょっとしたら世間から注目されたいだけの寂しがり屋なのかもしれません。いつの世にもおかしなことを言う人というのはいるものです。紅茶キノコでガンが治るという人もいればスカラー波で病気になると言う人もいます。憲法が表現の自由を保障している以上、こうしたトンデモ言論の出現自体は仕方のないことなのです。ひとつずつモグラ叩きのように論破していくしかないのです。それが憲法が「思想の自由市場」に期待する役割なのです。

問題は、こうした支離滅裂な主張を何の検証もなしに掲載する東京新聞です。報道機関には、世の中に溢れる雑多な情報の中から、重要であるものとそうでないものを選別し、国民に適切な議題を提供する公的責務があります。だからこそ「報道の自由」や「取材の自由」というある種の特権(※)が報道機関には認められているのです。「メール脳」のような明らかに真実性の疑わしい主張を、ただ話題性があるからというだけで、何の検証もなしに掲載してしまうというのは、報道機関として決してしてはならないことだと思います。

随分前の話になりますが、月刊誌『マルコポーロ』(文藝春秋社刊)がナチスによるホロコーストを否定する内容の寄稿記事を掲載し、在日イスラエル大使館やユダヤ人団体等から猛反発を受けて廃刊に追い込まれる事件がありました(マルコポーロ廃刊事件)。

今回の東京新聞による「メール脳」報道も、本質的にはこれと同じだと思います。違うのは、「メール脳」報道によって槍玉に挙げられた女子高生たちがユダヤ人団体ほどの政治力を持っていなかったという点だけでしょう。


※マスコミ関係者や学者の中には、報道の自由や取材の自由は「人権」だという人がいますが、これは正しい理解でありません。人権とは「人が人であることによって当然に保障される基本的権利」のこと。報道の自由や取材の自由は、「国民に民主的討論の基礎となる情報を提供する」という理由から報道機関に特に認められた権利ですから、人権ではなく、報道機関の「特権」であると理解すべきです。このような理解からは、報道の自由や取材の自由は、人権である表現の自由とは異なった、特別の制約に服することになります。



元村有希子記者とゲーム脳

2004-10-18 07:16:15 | Weblog
先日紹介した理系白書blogの元村有希子記者、どんな記事を書いているのか気になってちょっと調べてみたところ、例の「ゲーム脳」騒動の発端の記事を書いていたことが分かりました。

知らない人もいるかもしれないので、一応解説しておくと、2002年7月、日本大学の森昭雄教授が「テレビゲームをすると、人間らしい感情や創造性をつかさどる大脳の前頭前野の活動が目立って低下する」という内容の「研究結果」を発表、その後、ほぼ同じ内容の新書本をNHK出版から「ゲーム脳の恐怖」と題して発刊しました。これを毎日新聞が大々的に報道し、他のマスコミや、普段からテレビゲームを快く思っていなかったPTA等の各種団体も巻き込んで、少年犯罪の増加等はテレビゲームが原因だとする、テレビゲーム糾弾の大合唱が起こったわけです。

ところが、これに対しネットを中心に反論が展開され、実はこの「ゲーム脳」理論、間違いだらけで科学的にナンセンスな内容であることが判明。精神科医の斉藤環氏からも出鱈目である旨の書評が寄せられ、挙句の果てには「ト学会」から「トンデモ本」認定されることに。風説の流布により業務を妨害された形のテレビゲーム業界は、法的責任追及の構えを見せます。

これに慌てたのが火付け役の毎日新聞。「国は科学的検証すべきだ--ITには負の側面も」と題する論説を掲載し、国費で「ゲーム脳」について「本格的検証」を行うべきだと主張します。以下、引用とツッコミです。

「ゲーム脳」が波紋を広げている。私は7月にこの仮説を記事で紹介した。あれから4カ月たつが、予想外の展開にやや困惑している。「やっぱりゲームは悪い」対「ゲームいじめだ」という、感情論の対立で語られることが多いからだ。ゲームが脳に与える影響について、社会の関心は高いのに、科学的な検証が足りないことを痛感する。国による本格的な研究を提案したい。

「波紋を広げている」「社会の関心は高いのに」など、まるで他人事のような書き方ですが、散々センセーショナルに「ゲーム脳」を煽ったのは他ならぬ毎日新聞です。「科学的な検証が足りない」といっていますが、この記事が書かれた2002年11月28日時点で、「ゲーム脳の恐怖」が間違いだらけであることは既に斉藤環氏らによって反駁の余地なく論証されています。国民の税金をトンデモ理論の検証になど使ってよいのでしょうか。

「前頭前野の機能低下は「キレる子」との関連も指摘される。この知見と結びつき、ゲーム脳は社会問題になった感じがする。私も多数の投書を受け取った。大半は親の世代や高齢者からで、「ゲーム漬けの子どもが心配」「だから子どもは外で遊ぶべきだ」というものだった。

反論もあった。「悪いのはゲームではなく、子どもを管理できない親」という意見や、森さんの手法を「ゲームイコール悪、という前提に立ったゲームいじめだ」という批判だ。全くゲームをしない私は、感情論の応酬に戸惑った。


論点がすり替えられています。ネットを中心に非難の声が上がったのは、責任ある報道機関が、「ゲーム脳」などというトンデモ理論を、よく調べもせずに、センセーショナルに報道したからです。森教授の「研究発表」が議論を呼ぶ内容であることは、記事にする段階で元村記者も分かっていたはずです。そうであるならば、せめて同分野の専門家にコメントを求めるぐらいのことはするべきでした。そうすれば、森教授の理論がトンデモであることはすぐに分かったはずです。

「ゲームはお菓子みたいなものだ。おいしいし、気分転換できる。しかし食べ過ぎれば虫歯になる。歯を磨けば済むのか、それとも栄養が偏って病気になるのか。分量を決めて食べるか、お菓子を甘くなくしてしまうのか。いずれにしても、判断の基準が欲しい。

これは滅茶苦茶です。お菓子を食べ過ぎれば虫歯になることや、栄養が偏って病気になることは、確立された科学的知見です。これに対し、ゲームをすれば大脳の前頭前野の活動が低下するというというのはユダヤ陰謀論と同レベルのトンデモです。両者を同列に扱うのは馬鹿げています。小学生だってこんな論理のすり替えには騙されないでしょう。

「ゲーム脳」は、ゲームというお菓子に対して誰もが漠然と抱く不安を突いた。しかし「不安」のままではまずい。仮説が追試され、反論され、鍛えられることが必要だ。IT化を進め、白書で持ち上げる国にこそ、マイナスの影響を科学的に検証する義務があると、私は思う。

読んでいてだんだん悲しくなってきます。ちょっと考えれば分かることですが、森教授の理論は学会誌にアクセプトされたわけでも何でもありません。自分で勝手に発表して本を出しただけなのです。もし国が今回のようなケースについてまで「影響を科学的に検証する義務」があるのだとすれば、国は歯に重力発電装置としての可能性があるかどうかや、古代クレタ文明と忍者の関係についてまで科学的に検証しなければならなくなります。これではいくら税金があっても足りません。

要するに、元村記者は森教授の「研究発表」を十分な裏付け取材もせずにセンセーショナルに報道し、ひとたび森教授の理論がトンデモであることが明らかになり、自分たちにも責任が及びそうになると、今度は国に責任を擦りつけようとしたわけです。

まさに「ゲーム脳」騒動は、日本のマスコミの救いがたい無責任体質を象徴する事件だったと言ってよいでしょう。

さて、そんな元村有希子記者が書く理系白書blog、果たしてどうなることやら。。。


理系白書blog

2004-10-17 08:50:33 | Weblog
毎日新聞で「理系白書」を連載中の元村有希子記者のblogを見つけました。
新聞記者の方が実名と身分を公表してblogを開設しているというのは珍しいですね。
個人の責任で開設しているのか、それとも会社の業務として開設しているのか気になるところです。
前者だとすれば、画期的なことですが、後者だとすると残念ながら単なる宣伝ですね。
芸能事務所が開設しているタレントのblogと本質的に同じで、blogブームに便乗してみましたってことでしょう。
ページを見ただけではどちらだか判別がつきませんが、前者であることを願いつつ、生暖かく見守りたいと思います。