告別式の前に書いておかないといけない迷信がもうひとつあった。
実は僕、ヴィエンチャンへ行くバスの中で風邪をひいて、帰ってから猛烈に調子が悪かったのだ。だからおばあちゃんに会いに行くのも遅くなった。そして葬儀の間、僕はだいたい棺の裏の方で家族や親戚たちと一緒にいることが多かったのだけど、やはりまだ調子が悪くてマスクをしていた。そんな時たまに鼻がムズムズしてくしゃみをすることがあった。すると近しいおばあちゃんがその度に僕の腕に木綿の紐を結んでくれる。
どうやら、これは死人が呼んでいるとかの迷信のようだ。僕はアクセサリーどころか腕時計も鬱陶しくてしない性質なので、ミサンガとかこういうものはあまり好まないのだけど、好意でやってくれているのだし、やって損は無いだろうからありがたく受け取っておいた。
さて、予定の2時を過ぎてお坊さんがやってきたのだけど、今回はやけに人数が多い。よ~く見てみると、大半がおばあちゃんのひ孫や近い親戚の子供たちじゃないか。
頭を強烈に文字通り“坊主”にしているので、一瞬気づかなかった。普段はおばあちゃんを大切にする素振りはあまり見せない子供たちだけど、まぁ親に言われて半強制的だったにしろ、こうやっておばあちゃんの為にこの日だけ出家して小坊主になるなんて、そういう制度が日本には無いから、何だかちょっと羨ましかったな。
そうして始まった告別式だけど、意外とあっさり読経も終わり出棺になった。日本ならここで霊柩車の登場だけど、タイではやっぱりというか、ピックアップトラックの荷台です。
現代ではお寺に焼き場があって、そこで火葬するのがタイの普通なのだけど、この農村では村はずれの森の中に火葬場を作っていて、そこまで僧侶を先頭に棺の載ったピックアップトラックに繋いだロープを山車の様に引っ張る感じで行列が続く。
僕は帰りにお寺にいろんなものを持っていかなくてはならないから別の車を運転して行ったのだけど、車のほうがもちろん早いので先に着いてしまう。だけどお母さんが先に着いたらダメだと言うので行列が行き過ぎるのを待ってその後ろに続いた。
そうして到着した焼き場の周りを行列は3周して止まった。
続きはまた後で・・・。
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