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2020年最初は「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」感想【ネタバレあり】

2020年01月01日 | 映画感想文
明けましておめでとうございます。今年もマイペースにやっていきますので、よろしくおねがいします。

さて、今回はもうネタバレ忖度なしで批評していきたいと思います。
まだ観ていない方はここで止めてくださいね。




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「エピソード7:フォースの覚醒」からJJエイブラムスが再メガホンを取ったスカイウォーカーサーガ9部作の完結作として製作。

前作「エピソード8:最後のジェダイ」でライアン・ジョンソンが脚本と監督の両方をかねていたことから好き放題やらかして、散らかしてバトンを完結作に渡しました。スターウォーズファンから大不評を受け、今作のインタビューでもJJはライアン・ジョンソンのことを恨んでいないと公式発表するくらいです。

あんな状況で誰も監督をしたがらないのはわかります。全体的にJJは前作から空中分解しそうなストーリーをよく軌道修正したなという点は評価します。ただ、その一点だけですね。あとはもう文句が止まりません。

ただ、極端な話、「フォースの覚醒」と「スカイウォーカーの夜明け」だけを観ても話がつながるくらい「最後のジェダイ」はなくてもいい扱いになっています。突如出てきたレン騎士団の伏線も「フォースの覚醒」でしか出てきませんから。フィンと恋仲になって終わったローズの扱いが完全に無かったことになってたり、カイロ・レンとのフォースバトルで真っ二つになったルークのライトセーバーが元に戻っていたり、冒頭のカイロ・レンが前作でマスクを脱ぎ捨ててダースベイダーへの固執を脱ぎ捨てたと思いきやいきなり仮面を修理し始めるくだりは「いる??」と思いました。結局、後半は仮面を脱ぎますから「いる??」と。とにかくダースベイダーが仮面をかぶる必然性とは違って、カイロ・レンの仮面はなくてもいいですから。ジェダイだったベンとダークサイドに落ちたカイロ・レンとを分けるための記号としてはわかるのですが、仮面脱いでもダークサイドなら結局その仮面いる??っていう。そういうところが好きになれない理由ですね。あと、弱いですし。

そして、今回いきなりとってつけたように現れた黒幕。皇帝・ダース・シディアスの復活ですが、これも一部のファンは歓喜していましたが個人的にはがっかりしました。ルーカスは「フォースの覚醒」を観てがっかり理由として、メカニックや世界観が既存のものをリファインしたものばかりで新しさを感じないということを挙げていました。まさにそうで、結局新三部作って、旧三部作の人気な部分をもう一度使ってファンを喜ばそうとしている風にしか見えないんですよね。黒幕も結局、皇帝に頼らざるをえないのは、ライアン・ジョンソンのせいなのでJJを完全に悪者にはしません。本来なら、2作目で3作目に皇帝が出る伏線を入れておかないと今回からいきなり「黒幕、実は私でした~。スノークはクローンでピエロでした~」って急に出てくるのは、本当に萎えます。エピソード6の「ジェダイの帰還」でルークとアナキンが親子の力で皇帝を倒し、銀河に平和をもたらした物語を台無しにしているからです。

あと、皇帝が実はシスの惑星で秘密裏に“帝国の再復興”を目論見、水面下で準備していた“ファイナル・オーダー”が、これもまた中二病的に大戦艦による艦隊が浮上して、戦艦一つに波動砲ならぬデス・スターが持ってた星を一発で破壊できる武器を備えているチート展開にさらに萎えました。で、それでも反乱軍に勝てないって「無能か?」ってなります。それに、皇帝がまんをじして動き出すのなら、2作目で反乱軍が勝利しておかないと辻褄が合いません。「最後のジェダイ」で反乱軍が追い詰められ、もはや息も絶え絶えのときにあんな大艦隊を動かし始めるのはちょっと唐突過ぎです。同じディズニーでもアベンジャーズのMCUは伏線や過去作の設定を上手く伏線にする技法はすごく優れているだけに、もっとそういう良い技術面を同じ会社内で共有してほしいかなと思います。

あと、フォースの取り扱い、定義、価値観がルーカスがやってきたことと全く解釈が違ってきた点にも萎えました。遠く離れた者同士で、会話できたり、物体を触れたり、それで相手の場所がわかったり、霊体となったヨーダが落雷を起こした「最後のジェダイ」で唖然とし、「いや、これはライアンの暴走だからJJはそんなことしない」と信じてたら霊体となったルークがレイが投げたライトセーバーを受け取るシーンにはもうため息がこぼれました。「お前もか」と。そんな物理的干渉ができるならなぜその霊体で戦いに参加しないのか、そっちの理由付けが必要になってきます。霊体無敵説です。ラストバトルでルークとアナキンの霊体で登場してベンも参戦して親子三代皇帝と戦いシーンを描いたのならまだ目をつむりますが、全く必要のないところで霊体の無駄撃ちはいかがなものかなと。

ライトセーバーもそうですよ。結局、ルークのライトセーバーを神聖なものにしすぎです。「最後のジェダイ」で壊れたのなら今作ではレイのオリジナルライトセーバーを出すべきだったのに、ルークのライトセーバーを修理して使ってるのに萎えました。もちろん意図はわかります。のちに、レイアも実はルークにジェダイのトレーニングを受けていたという過去シーンを見せて、だから「最後のジェダイ」でフォースを使えたんだという伏線回収はわかります。しかし、レイアのライトセーバーはなぜかルークが身を潜めていた孤島に隠してあるんです。「それ、最初にレイがきたときに渡さんかい!」とツッコミたくなりました。

JJとして、皇帝とのラストバトルでルークとレイアのライトセーバーとともに皇帝を倒すっていう意味をもたせたかったんだと思いますが、ルーカスならきっとそんなことはしなかったと思います。映画ラストに出てくるレイの黄色い光を放つオリジナルライトセーバーを最初から持たせていたでしょうし、レイアに1年間ジェダイトレーニングを受けていたのだから、レイとレイアのダブルライトセーバーで倒す方が自分はしっくりきます。あと、ライトセーバーのカラーバリエーションが新三部作ずっと青なのも、う~んって感じです。新しさを出すならもっと青と緑と赤以外の色を出してくれたらもっと新鮮味がありました。それこそレイの黄色い光のライトセーバーバトルを観たかったです。

一見、上手くつなげた感はあるんです。でもそれは本当にそれだけの話で、物語として、スターウォーズとして面白いかと問われれば首をかしげます。何より「もう一度観たい」という気も起こらないですし、映画を観終わったあとの余韻もないんですね。まぁ、そういう終わり方になるわなっていう予想通りの結末といいますか、別に新三部作がなくても良かったのでは?という蛇足的な物語でしかないんです。

あと、前にも書きましたが、「フォースの覚醒」と「最後のジェダイ」を地続きの連作にしたのがそもそも失敗の原因ですね。それによりレイの成長過程が上手く描けず、新三部作通して約1年弱の時間しか経過していない薄っぺらいものになってしまった結果、主要キャラ同士の友情や関係性が上手く掘れておらず、なのに今作ではもう10年来の戦友みたいな描き方をしているのに不自然さを感じました。だってまだ出会って1年弱じゃんっていう現実を今作だけでは埋めることはできませんでしたね。フィンとローズが戦争に勝利して基地に戻ってきたとき、ハグさえせず互いに探しにもいかない不自然さもぜひ御覧ください。「最後のジェダイ」のラストのアレはなんだったのかというね。あれがなければ、今作で出てくるフィンと同じ元ストームトルーパーの女戦士と恋仲にできたはずなんです。JJはしたかったと思いますが、ライアンが勝手にローズというキャラを登場させてフィンの恋人役にしちゃったもんだから、双方消化不良のまま終わっています。

「スターウォーズ」の版権をルーカスはディズニーに売りましたが、ディズニーサイドの大きな誤算はまさにこうして結果として現れました。つまり、「スターウォーズ」はルーカスが作って初めて「スターウォーズ」になりうるんです。JJもライアンも映画は撮っているんですが、「スターウォーズ」は撮っていないんです。「スターウォーズ」を撮れるのはルーカスだけだということです。だから、エピソード1~3が自分は一番好きで、何度観ても飽きません。どのキャラも魅力的で世界観も毎回独創性があって引き込まれるからです。

結論、今作は観てもそれなりに楽しめますが、どこかで観たことのあるような映像ばかりの新鮮味のないエンターテインメントムービーとなっています。個人的には合間に公開された「ローグ・ワン/スターウォーズ・ストーリー」や「ハン・ソロ/スターウォーズ・ストーリー」の方がどちらかといえば好きですね。

まぁ、ディズニーは今後、全く新しい「スターウォーズ」シリーズを展開する予定を発表しており、プロデューサーにマーベルスタジオのファイギ社長を任命しています。正直、ルーカスの手から離れたんだから、最初からこっちを作るべきだと思います。だったらフォースで何でもありの魔法にしても文句は言わないし、どんなライトセーバーが出てきても許容できます。いわば、ガンダムシリーズみたいなもので、宇宙世紀のガンダムとそれ以外のガンダムは「ガンダム」という記号こそ同じですが物語や設定、世界観は全く別物だからです。それにより新しいファンも付きます。宇宙世紀の続編として「ガンダムUC」を作ったから宇宙世紀ファンから賛否が起こるわけで、全く別の作品なら文句は出ないわけです。ライアン・ジョンソンも最初からそっちをやっておけばキャリアに傷がつかずに済んでいたかもしれません。

まぁ、終わってしまったことなので仕方ないですが、「観ても観なくてもいいスターウォーズ三部作」という印象が三作とも続いた稀なシリーズです。

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お正月の三が日は更新はお休みします。




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