第259回夢語り小説工房作品
「姫君たちの挽歌」 作 大山哲生
一
1968年四月、坂口俊夫は鴨川高校の三年生であった。
俊夫は、三年生になるときに考えたことがある。それはできるだけ多くのクラスメートと話すということだった。このことは二年生のクラスでの失敗が大きな要因なのであった。
二年生のクラスで俊夫はマイペースを貫き、他人に気を遣わずにとにかく自分のことだけを考えていた。そういう生活であるから、極めて親しい者としか話をしなかった。その結果、二年のクラスのほとんどの者が、俊夫が同じクラスにいたことを知らないということになってしまった。俊夫もほとんどの男子については同じクラスにいたという記憶がなく、女子に至っては名前も顔も知らないまま一年が終わったのである。
だから俊夫は三年になるにあたり、思い出多いクラスにしなければと強く思ったのであった。
そのためには、マイペースを少しゆるめようと考えた。二年の時は、一年間掃除当番を一度もやらずに帰宅したが、三年生では決められた掃除当番はきちんとやろうと思った。そして男子はもちろん女子とも話をしようと思った。体育祭や文化祭は積極的にかかわろうとも考えた。三年生の四月になるとほとんどの男子には話しかけたし、何人かの女子とも話ができるようになった。高校生活のいい思い出作りのためには、さまざまな妥協が必要だと、俊夫は考えたのであった。
二
五月。俊夫のいる三年二組では遠足の行き先を決めるホームルームが行われていた。
鴨川高校は自由な校風で、行き先はクラス独自に決める。だからクラスごとに行き先が異なる。俊夫のクラスでは、金閣寺と清水寺が候補にあがった。このどちらかに決まるかに思えたが、俊夫の周りで「もっとのんびりしたいな」と言う声が上がった。俊夫は、のんびりしたいなら小学生の時に行った、奈良の若草山がいいと思った。俊夫は挙手をすると充てられてもいないのに、
「奈良の若草山がいいと思います」と発言した。
その直後にテニス部主将の里崎恵理子が、
「私も若草山がいいと思います。のんびりできるし。ねえ坂口君」と俊夫の方を向いて発言した。
いきなり女子に話を振られた俊夫はとっさに「里崎さんの言う通りやと思います」と返した。
かくして、遠足の行き先は若草山に決まった。ホームルームが終わった後。里崎が俊夫のところにやってきて、
「やっぱり若草山よね」と、さも自分が言い出したかのように誇らしげに言った。俊夫も、たった二人の意見で行き先を覆したことがうれしかったので、
「そうやな」と返した。
その後、里崎は俊夫に妙な連帯感を感じたのか、べたべたと話しかけてくるようになった。里崎は元気があってやたら声が大きい。俊夫が小声で話したことも、里崎が大きな声で復唱するので、俊夫は気恥ずかしい思いをすることがあった。
遠足の当日。集合は京阪電車の東福寺駅である。ここでも里崎恵理子は俊夫に話しかけてきた。電車の中では二人とも話に夢中になって乗換駅である丹波橋で降りるのを忘れてしまった。
「坂口君、おりるはずの駅を間違ったみたいやね」と里崎は不安げな口調で言った。
「そしたら、次で降りて二駅戻って近鉄に乗り換えよか」と俊夫は言った。
かくして俊夫は里崎と、二人で電車のミニ旅行をすることになった。高校生の男女が日中に二人で電車に乗っているのであるから、周りの人の視線が痛かった。
近鉄の奈良駅を降りると、人が格段に多くなる。
里崎は、俊夫の後を追いながら、
「坂口君、手をつなごうよ」
「えっ」と俊夫は振り返る。
「だって人が多いからここではぐれたら大変だし」と里崎が言った。
仕方がないので俊夫は里崎と手をつないで奈良公園に向かって歩いた。大仏殿からさらに奥に行って若草山についた。俊夫があたりを見回すと担任も心配そうに見回していたと見えて「おおい、こっちや」と担任の呼ぶ声がした。こうして俊夫と里崎のミニ旅行は終わった。俊夫は男子のグループに入っておしゃべりを楽しんだ。
昼食時間になると、里崎は女子グループに俊夫を入れてくれた。里崎は気を遣って俊夫にいろいろと話しかけてくれたが、俊夫はなんとも居心地が悪かった。
三
俊夫はまじめな生徒であった。勉強は毎日やった。特に英語は単語の意味などをしっかり予習しておかないと授業であてられたときに恥をかくことになる。しかし、成績は伸び悩んだ。
俊夫は勉強を少しやると飽きてしまう。そして机の横に立てかけてあるギターに手が行く。ポロンポロンと弾いてるうちはいいが、すぐに歌の本を取り出し、目についた曲を弾いて口ずさむ。ギターに夢中になると時間の経つのを忘れる。気が付くと三十分くらいは経っている。
そしてまたあわてて勉強に取り掛かる。俊夫は成績の伸びない原因がこのギターにあることに気がつかなかった。
さすがに夜遅くなるとギターを弾くわけにもいかないのでラジオを聴く。深夜は若者向けのポップスを流している。俊夫は洋楽を聞くのが大好きだった。
要するに俊夫はギターとラジオの合間に勉強らしきものをしているのであった。
四
九月の始め。
鴨川高校の三年二組のホームルームは賑やかだった。
十月九日の体育祭の出場メンバーを決めているのだ。
鴨川高校の体育祭には、各クラスの出場枠というものがない。基本は、出たいものが出るということになっている。
俊夫は、何に出ようかと思案していた。俊夫は、走ることには自信がない。しかし、鴨川高校ではなまじ一着で走るよりビリの方が人気が出る風潮があるので、俊夫は気が楽であった。中学校の時は体育祭が苦痛であったが、あの頃がまるで嘘のようだ。
出たい者が出る体育祭であるから、去年の四百メートル走は、一年四組の有志五名だけが走った。この競技は人気がなく走ったのはこの五人だけであった。こういう体育祭であるのに、赤、青、黄色、緑の各団は巨大な立て看板に工夫を凝らして一生懸命応援をする。もっと不思議なのはこういう体育祭であるのにきちんと得点化され、四つの団の勝ち負けが決まることであった。
俊夫は、二百×四のリレーにでることにした。リレーなら負けても全員の責任になるし、なによりチームと言うのがいいと思った。
「ぼくはリレーに出ます」と俊夫は発言した。黒板に俊夫の名前が書かれる。エントリーは自由だが、エントリーしたら必ず出るというのか鴨川高校の決まりになっている。
結局、リレーには俊夫と橋詰明子の二人が出ることになった。橋詰明子は演劇部に属している。十一月の文化祭が引退公演になるのでがんばらないとといつも甲高い声でしゃべっている。橋詰は背が高くスタイルもいいので、なぜかダイエットに成功した女子として女子の間ではもてはやされている。
俊夫は、橋詰と同じ競技にでることはうれしかったが、リレーメンバーは他のクラスとの混成チームになるから、誰と同じチームになるかわからない。できれば、走るのが遅い者からバトンを受け継ぎたいと俊夫は思う。その方が負けても言い訳ができるからである。かくして、体育祭の出場メンバー決めは盛況のうちに終わった。
十月九日。体育祭である。
鴨川高校では体育祭の開会式は全員が並ぶが、競技が始まると係の者をのぞいて事実上の自由行動となる。応援席に座る者、中庭の芝生でおしゃべりしている者、文化部の者は部室で文化祭の準備に余念がない。
俊夫の出場するリレーは午後の二番目である。俊夫は開会式が終わると自分のクラスに戻り、皆が持ち込んだ漫画を読んでいた。教室でくつろいでいるのは俊夫のほかに男子数名がいた。そして少し早い弁当を食べた。
そして午後。いよいよリレーである。俊夫はアンカーになった。そして俊夫にバトンを渡すのが橋詰明子であった。橋詰がトラックの向こう側から走り出した。コーナーを回って俊夫の手前数メートルのところで橋詰は前方につんのめった。そしてそのまま体をあずけるように俊夫の体に倒れこんだ。咄嗟に俊夫は橋詰を正面から抱きとめた。抱き留めたときに橋詰の頭から石鹸の匂いがした。
そして俊夫の上に橋詰が覆いかぶさるようなかっこうで地面に倒れこんだ。俊夫は後頭部を地面にしこたま打ち付けた。
橋詰は「ごめーん」と言うと起き上がり、バトンを俊夫に手渡した。俊夫はバトンをつかむと走り出した。前の五人がゴールをしたあと係の者がもう一度ゴールテープをセットしてくれたので、俊夫は最下位でありながらコールテープを切ったのであった。
体育祭が終わり、全員着替え終えて教室にいると、俊夫は男子から盛大に冷やかされた。
「おまえと橋詰は完全に抱きおうてたやろ」
「そやそや、おまけに地面に倒れてキスするみたいな姿勢やったぞ」
俊夫は一生懸命に否定した。しかし当の橋詰が、
「そう私たち抱き合ってたのよ。うらやましい?」とお姫様のようにいい放ったものだから、クラスメートの冷やかしの声はますます大きくなったのであった。
五
ある日のこと、家で俊夫がいつものようにラジオを聴いていると、ある歌が流れた。
「いい歌だ。歌いやすそうだ」と俊夫は思った。
曲の後にアナウンサーが言った。
「ただいまの曲はビージーズのマサチューセッツでした」
俊夫は、すばらしい歌だと思った。もう一度聞きたいと思った。俊夫の願いが届いたのか、マサチューセッツはその後ラジオで頻繁に流れた。
俊夫は、メロディを覚えたので、ギターで伴奏をつけてみるとなんとなくいけそうな気がした。
何回か聞くと、最初のフレーズだけは歌えるようになった。
『フィー ア ゴエンバー マーサチュセッツ』
俊夫は、これはマサチューセッツに帰りたいという歌だろうと思った。
俊夫は、近くの本屋で歌の本を立ち読みした。俊夫の想像通り、マサチューセッツという歌は故郷であるマサチューセッツに帰りたいという歌であった。
六
俊夫のクラスには洋楽に詳しい高島重雄がいる。俊夫はある昼休みにマサチューセッツという歌の話を高島にしてみた。高島はよく知っていた。マサチューセッツを歌っているビージーズが、兄と双子の弟の三人のグループから出発したことを俊夫に得意げに話してくれた。
二人が夢中になって話していると突然、
「その歌、うちの兄貴も好きやわ」という声がした。俊夫が振り返ると川島礼子がいた。川島は小柄で眼鏡をかけている。手芸部の部長である。川島は手芸や洋服づくりが得意である。カバンはもちろんのこと、噂では、制服の夏服も自分で縫ったらしい。
「その歌、うちの兄貴もええなあと言うてた」と川島は続けた。俊夫がマサチューセッツの歌詞がわからないと言うと川島は、
「兄貴が歌の本を持ってるから、私が歌詞を書いてきてあげる」と言う。
俊夫は翌日の休み時間に、まるで贈り物を受け取るように、川島からピンクの封筒をうやうやしく受け取った。中をみるとルーズリーフに筆記体でマサチューセッツの歌詞が書かれていた。
「ありがとう。うれしいわ」と俊夫が言うと、川島は照れながら、
「心を込めて書いたからね。しっかり練習してや」と言って、女子のグループの方へ戻って行った。
突然、「ラブレターや。坂口がラブレターをもらいよった。それもピンクの封筒やぞ」と数人の男子が叫んだ。
俊夫は弁明をしようとしたが、はやし立てる声の方が大きい。俊夫はなにも言わずに封筒をカバンに入れながら「おまえら、中学生か」とつぶやいた。
俊夫は、家に帰って、ギターで伴奏をしながら英語でマサチューセッツを歌ってみた。簡単な英語なのですぐに歌えた。こうして勉強時間が削られていることに俊夫は気が付かなかった。『マサチューセッツに帰りたい』というその歌は、俊夫の心の中の深いところをゆさぶったのだった。
七
十一月の文化祭は、俊夫は小道具の係だった。小道具であるからいくつかのものに色を塗ったら終わりである。教室の中では、台本の読み合わせや立ち稽古が行われていた。劇の内容は、安っぽいラブロマンスである。ヒロインは遠藤頼子が演じる。遠藤は笑うとえくぼができる。少しはにかんだような表情がかわいい。遠藤は水泳部に属していたが九月末に引退してやることがないので、文化祭では自ら主役に立候補した。
劇のストーリーは、夢の中で遠藤演じるヒロインが恋人と手をつないで躍るというものである。相手役の、新井康太はダンスを習っていたことがあり、動きが堂に入っておりいわゆる『切れ』がある。
遠藤頼子は、新井康太のリードでかろうじて踊れているように見えた。
俊夫はというと、教室横の雑然とした廊下で、劇の練習が終わるまで椅子に座って漫画を読んでいた。誰が持ち込むのか、漫画週刊誌の最新号が何冊かあった。俊夫は子どものころから漫画が好きであった。こうして心置きなく漫画が読めるのは嬉しかった。
体育祭では、みんなから冷やかされた俊夫であったが、文化祭は何事もなく終わるはずであった。
文化祭の二日前、衝撃のニュースが飛び込んできた。新井康太が盲腸で入院したというのである。俊夫が登校するや否や、教室内が異様な雰囲気に包まれているのが分かった。
「今日の昼休みにホームルームをします」と劇の監督である尾山君が大きな声で宣言した。
その日の昼休み、クラスのみんなは自席について沈み込んでいた。劇の演目を変更するのは道具や衣装、音響などがほぼ完成しており不可能という意見が大勢を占めた。
次に踊りの部分を割愛してはどうかという意見がでたが、ヒロイン役の遠藤頼子が反対した。
遠藤は起立すると言った。
「せっかく練習してきた踊りをなくすのは反対です。振り付けをもうすこし簡単にしてでもやりたいです。代役をたてるのがいいと思います」
「代役は誰にするんや」という声があがった。
遠藤はしばらく考えていたがすっくと立ちあがって、
「坂口俊夫君がいいと思います。理由は新井君と背格好が似てるから」と言った。
おおーっという驚きとも安堵ともとれるようなどよめきが教室内に響いた。
俊夫は驚いた。寝耳に水であった。立ちあがって抗議をしようとしたとき、
「それでいいと思います」「それでええやん」「賛成」という声があちこちから上がった。俊夫は、従うしかなかった。
その日の放課後から遠藤頼子との踊りの練習が始まった。俊夫は遠藤の動きを見ながら見様見真似でとにかく曲の終わりまで躍った。俊夫は一生懸命練習しているのに、周りの者はただ笑い転げるのだった。
「坂口、ここは笑いをとるところではないから真剣にやって」と監督は言う。俊夫は別にふざけてやっているわけではないのにと心の中で憤慨した。
二日間の特訓の成果でたどたどしくはあったがなんとか踊れるようになった。
いよいよ文化祭当日。俊夫のクラスは午前の部だった。
踊りの場面を迎える。舞台の左右から俊夫と遠藤が出てくる。俊夫は懸命に躍ったが途中で振り付けの順番を間違えてしまった。遠藤と動きが合わなくなった。俊夫は動揺した。修正をしなければと思うが正しい振り付けを忘れたのであるから、元に戻しようがない。
遠藤も、俊夫が振り付けを忘れたことを察したようだった。
遠藤が躍りながら俊夫に近づいてきて、俊夫を抱きしめた。
「抱きあってくるくる回るから」と遠藤が小声で言う。俊夫は言われるままに遠藤を抱きしめてくるくると回り続けた。
「そのまま舞台を大きく動く」と遠藤はささやいた。
新井と遠藤で組み立てた振り付けとは似ても似つかぬものになったが、間違えた踊りを修正するにはこれしかなかった。
それから約二分あまり、俊夫と遠藤は抱きあったままくるくると回り続けた。俊夫は汗びっしょりであったが、遠藤もかなり汗をかいていいるようだった。ようやく曲が終わり暗転になった。俊夫は舞台の袖に引っ込んだ。
舞台袖に控えていたクラスメートは、茫然としていた。
「おまえら、本気で抱き合ってたな」と監督が冷かした。俊夫は「途中で間違えてしまったから仕方がなかったんや」と言い訳した。
劇が終わって教室に戻ると、
「二人の踊りはよかった。本当に愛し合ってるように見えた」と橋詰さんが俊夫に言った。遠藤も女子のグループから賛辞を贈られていた。俊夫は、心底ほっとした。二日前に突然出演が決まってこの二日間眠れなかったし食事も満足にのどを通らなかったからである。
こうして、文化祭はなんとか終わった。
八
俊夫は、大学進学を希望していたがどうにもこうにも成績が思わしくない。十二月には校内の模擬テストが実施された。冬休みに結果を見に学校まで行くと、俊夫の成績は343人中313番だった。
しかし、俊夫はおそらく大学には合格するに違いないと言う根拠のない期待を持っていた。年が明けると、さらに勉強に熱が入ったが、ギターでマサチューセッツを歌うことはやめられなかった。
大学は不合格であった。俊夫は一年間浪人することにした。
二月二十日。鴨川高校の卒業式である。
俊夫は、校長先生の式辞を聞きながら、この一年間を振り返っていた。色々なことがあった。各行事では、必ず女子が自分とかかわっていたことをおもしろく思い出していた。 俊夫が望むようなロマンチックな出会いはなかったが、橋詰さんや遠藤さんと奇しくも抱き合うことになったのはいい思い出だった。大学には落ちたがこれほど楽しい一年間は生涯訪れないだろうと思った。
式後、俊夫は後輩たちの拍手に送られて校門を出た。校門を出たあたりでみな、名残惜しそうにたむろしている。
その時、里崎恵理子が俊夫の前に来て「さよなら。二人のミニ旅行は楽しかったよ。少しどきどきしたけどね」と言って去っていった。
次に来たのは橋詰明子である。「坂口君、体育祭ではごめんね。あのときの坂口君の汗のにおい、忘れないよ。さよなら、元気でね」と言って去っていく。
次に来たのは川島礼子である。「坂口君、歌がんばってな。元気でね、さよなら」と言って去っていく。
最後に来たのは遠藤頼子であった。「坂口君、文化祭ではいきなり指名してごめんなさい。でも、坂口君と抱き合って踊れたことはとってもいい思い出になったよ。あんなに坂口君を身近に感じたことはなかった。元気でね。さようなら」と言うと手を振って去って行った。
思えば四人の女子は俊夫にとってお姫さまのような存在であった。四人の姫君たちは俊夫にとっては特別に輝いていた。そして、今にして思えば気の置けない心から慕う存在であったような気もする。
しかし今、姫君たちがその座を降り、俊夫の前から次々と消えて行った。
俊夫は虚脱感に打ちひしがれて家に帰った。
夜になると俊夫は急に寂しくなった。明日からはもうみんなと会えない。俊夫にとってあれほど楽しかったクラスが忽然と消滅するのである。もう俊夫とかかわる姫君たちもいないし、はやし立ててくれる男子もいない。
昨日まであれほどにぎやかだった俊夫の生活が、明日からは静寂と孤独に包まれたものになる。俊夫は世界の中で一人ぼっちになった。そして鳥肌が立つような孤独感が俊夫を襲った。俊夫は、耐えられないと思った。そして、明日からどう生きていけばいいのか不安になった。
あの、どたばたした体育祭や、緊張した文化祭がたまらなく懐かしかった。しかし、それはすでに色あせた青春の挽歌に過ぎないのだ。俊夫の目から涙があふれた。
ギターを手に取るとマサチューセッツを歌い始めた。
『マサチューセッツに帰りたい』
俊夫は思った。
明日から自分はどこに帰ればいいのだろう。
俊夫は嗚咽した。
捨て難い「ギター」と「マサチューセッツに帰りたい」は室生犀星かも?
故郷は遠きに在りて思ふもの
そして哀しくうたふもの
鴨川の水でさえ淀む事無く絶えずより良き故郷創生してるのかも知れないです。
澱んでしまった地球もコロナ騒動で?スカッと爽やか故郷創成期なら良いですね?(^^♪
青き地球、皆折角産まれて来たのですから♪勿体無い!勿体無い!と思ふこの頃。。
誰が為に鐘は鳴。。?(-_-)
一般日本国民の哀しみ。。でも在ります。(*_*;