すいかの記録

けんきゅー関係のメモ(学術書籍、覚え書きなど)。

Duma Key

2009-11-26 08:31:24 | books read
『悪霊の島(上・下)』スティーブン・キング著、白石朗訳、文藝春秋、2009年)

上下あわせて1000ページ近くある大作。
タイトルから分かるように、幽霊ホラー系の話でクライマックスのイメージがいまひとつ沸かなかったけれど、それでもすごい。上巻では、「いったいこの展開が、どうホラーにつながるのか?」というくらい、あまり関係ないような綿密な人物描写が大半を占める。この描き方が、オリジナリティあふれていてぐいぐい読ませる。で、平和にみえた島での暮らしが、急展開をみせる中盤以降、息つかせぬローラーコースターってかんじ。白石朗の訳が、これまた見事で。。。

いちばん印象に残ったことば。
「人生は車輪のようなもの、だからそれなりに待っていれば、いずれは出発点がめぐってくる」下巻、pp.337-338。座右の銘にしたいくらいだけど、出典を知られるのは ちょっとかっこわるい?!

piggy

2009-11-16 13:26:47 | books read
『思考する豚』(ライアル・ワトソン著、福岡伸一訳、木楽舎、2009年)

読んでないんですけど、いちおう記録。
読めなかったのは、おもしろくなかったから。興味を引かれる素材はてんこもりなのに、全然読めない。同じくワトソンの『エレファントム』も同じ理由で挫折。訳は拙くないのに。

村上春樹と柴田元幸が対談で言っていたように、結局、翻訳はテキストがすべて。いくら名翻訳家が手がけても、原著がおもしろくなければ、日本語でもおもしろくない。ただ、その逆はいくらでもありうる。つまり、原著がおもしろい(価値がある)のに、翻訳が拙いために読んでもらえないとか。正しく訳することは最低限。いかに読みやすく、原作のもつ空気を伝えるか、が腕のみせどころ。でも、「わたしならこう書く!」と訳者が出しゃばるのは、御法度。つくづく難しいけどおもしろい世界だとおもう。

上に挙げた2冊は、どちらも楽しみにしていただけに、とっても残念。

またの名を(下)

2009-11-16 13:26:41 | books read
『またの名をグレイス(下)』(マーガレット・アトウッド著、佐藤アヤ子訳、岩波書店、2008年)

下巻、読了。多くの謎を残した終わり方だったけど、ぐいぐい読めました(今回は、和訳の違和感もあまりなかった)。構成力と登場人物の際立たせ方が見事。アトウッドに出会えたのは、今年最大の収穫と言えましょう、はい。

ショウガパン

2009-11-11 15:07:28 | books read
『夕暮れをすぎて』(スティーブン・キング著、白石朗ほか訳、文藝春秋、2009年)

当代一のストーリーテラー健在なり。
中編、短編はあまり書いてこなかったらしい(そういわれてみれば、そうかも)。
二分冊刊行の1冊目(2冊目は、来春刊行予定)。

ぐいぐい読ませる物語の構成、読み手の想像力を喚起する人物や情景の描写、どれをとってもすばらしい。訳者の日本語力が、これまた高度で、うまいなあ、と感心することしきり。

彼のホラーには、大きく2種類あって、わたしは「ジンジャーブレッド・ガール」が好み。「エアロバイク」のようなタイプのものは、どうも乗り切れない(以前の作品でいうと、『セル』はどうにかこうにか読み切ったものの、『ダークタワー』シリーズは途中でぜんぜんついて行けなくなった)。

で、次は『悪魔の島』。出だしは、好感触。秋の夜長に思い切り浸るのを楽しみにしているところ。

疫学の父

2009-11-10 21:14:38 | books read
ジョン・スノウ。研究上、きちんと知っておきたかったので、取り寄せて読んでみた。

『医学探偵ジョン・スノウ―コレラとブロード・ストリートの井戸の謎』(サンドラ・ヘンペル著、杉浦他訳、日本評論社、2009年)

コレラの感染源を突き止めたことで有名だけど、当時は、麻酔医を主な生業としていたらしい。ショウキ論者(変換ができん!やまいだれに章、気。読み方間違ってんのかな?)が大勢を占めていた時代で、経口感染はほとんど理解されず、亡くなるギリギリ前くらい(だったっけ?忘れた)に、やっとなんとか彼の説く感染ルートが認められたんだと。天才は、とっぴなアイディアで変人扱いされたり、邪魔者扱いされたりするけど、彼が天才たりえたところは、当時の技術をもってしてこれ以上は無理ってくらいに科学的な根拠を粘り強く集めたところなんだろう。

全体の構成があまりよくない。ハナシがあちこち飛ぶので、途中からまともにストーリーを追うのはやめて、必要なところだけ拾い読み。いちおう、最後まで読んだけど。

それにしても、ほんの150年ほど前までは、麻酔もなくて外科的手術は拷問だったらしいそれから比べると、医学は驚異的な進歩を遂げている(と、考えると、医学は立派な学問大系だけど、150年前のそれとは全く別ものなんじゃないの?)。でもって、それを当たり前のこととして享受できているのは、世界人口のほんのわずかに過ぎない。毎日、ほんとうに“簡単な”ことで、信じられないくらい多くの人命が失われているのだ。

司教がソーシャルワーカー的な役割を果たして…などというくだりもあって、ちょうど社会慈善事業の黎明期と重なるので、そのころの風俗や人びとの態度などもうかがえた一冊ではある。

いい加減に『オリバー・ツイスト』を読まねば。年内の課題。