転出届けなどのために電車で3時間のひとり旅をした。諸々の用事があり、二泊三日の予定で宿を取ってあった。
到着してまず一番の心配事、壊れた部分入れ歯のことで歯科医院に駆け込む。
「まだ使えます。今出来ることをしますが、入れ歯はいずれ駄目になります。それよりも、健康な歯をケアしてくれる歯科医に、今直ぐとは言いませんが行ってください。」
先生は時間をかけて納得できるように話してくださった。確かにまだ困ってはいない。支える針金が折れたけれども、ピッタリと合っているので不自由なく食べられている。もう、先のことを心配しないと思った。
次は美容院、私の髪質を知って時間をかけてしっかりとパーマをあててくださる貴重な存在、でもこれが最後となる。予約時間はとってなかったのにすぐにしてくださって、引っ越し先のことなどおしゃべりしながら・・少し旅の疲れを取る時となった。
爽やかになって、いつもの医院を尋ねて四十肩の痛みを訴え、先生や看護婦さんとまたまたおしゃべり・・、奥さんはご自身が四十肩の経験があり、痛みを理解してくださりリハビリの方法を教えてくださった。
日も暮れてから汗にまみれて宿に戻り、優しい応対とゆったりと流れる吉野川にほっと.一息ついた。
簡単な食事の後住んでいた家に行き、買い取ってくださったお隣さんとまたまたおしゃべり・・そうして48年間住んだ家を笑顔で後にした。二度と入ることはない門を閉じて・・。
宿では、景色の綺麗な二階を希望したので階段の上り下りがあった。応対してくださった女性が「今夜は此処に泊まりますから、用事があったら何時でも言ってください」と階段の下の部屋を示された。ご迷惑をかけているな・・と思ったけれど、心強くて安心して眠りについた。
翌日は司法書士さんに寄ってから役場に転出手続きに行く。これで計画していたすべてが終わった。宿泊を一泊にして戻ることにする。
一番の楽しみは手続きが終わってから、電車の時間まで友人と積もる話をすることだった。彼女にはいつもお世話になっている。今、彼女はとっても大変な所を通られ少し細くなっておられた。二人になると、どんな時でもまるで何ごともなかったかのように楽しい時となる。
時間ぎりぎりまでおしゃべりをして、車に乗せて駅まで送ってくださった。当日発売の特急券を買う事が此処では初めてで不安だったが、一緒に居て助言してもらって無事に買うことが出来た。
電車が来る迄も話し続け再会を約束した。「元気になったら行く」と言われたことも嬉しかったが、お互いに歳を取っている身では、再会の約束は若い人には思いもよらないほどに重いのだ。
ホームでカートを持ってくださる方があったり、エレベーターに案内しくれる人があったあり、沢山の親切をいただいて、予定通りにもより駅に帰り着いた時「ああ。私の住まう所に帰って来た」と心からほっとしていた。
去る家は子育て刻む柱疵夫(つま)を看取りて役を終えたり
今日は転入手続きをした。健康保険証のことを尋ねたら「後ほど送りますが、今日からこちらで権利があります」と教えてくださった。まだ使わないとは思うけれど、その言葉に安心していた。もう、此処の住人なのだ。すべてはイエスさまが準備してくださったことである。
汗拭い終の棲家に転入の坂を登りて手続き終えぬ