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熊五郎の超直感的CDレビュー

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BUCK-TICK「或いはアナーキー」

2015年12月26日 13時41分57秒 | アルバムレビュー(邦楽)

BUCK-TICK「或いはアナーキー」
19th ALBUM 2014.6.4

01. DADA DISCO - G J T H B K H T D –
02. 宇宙サーカス
03. masQue
04. Devil’N Angel
05. ボードレールで眠れない
06. メランコリア
07. PHANTOM VOLTAIRE
08. SURVIVAL DANCE
09. サタン
10. NOT FOUND
11. 世界は闇で満ちている
12. ONCE UPON A TIME
13. 無題
14. 形而上 流星-metaform-

 

 日本のモンスターロックバンドBUCK-TICKがまたもや怪作を生み出しました。

 「シュルレアリスム」というコンセプトのもとに、ロック、ポップ、エレクトロ、ゴシック、デカダン、和、ファンタジー…
 様々な個性を持つ曲が揃っていて、同じバンドの曲とは思えないものもあるほど。
 しかし、どのタイプの曲も非常にハイクオリティであり、実験的な空気が感じられない。
 まるでその全てが得意分野であるかのような完成度。
 他のバンドは手が出せないような攻めている曲にもかかわらず安定感がある。

 前作「夢見る宇宙」が大人し目のアルバムだっただけに、今作の楽曲の濃さには驚くばかり。 
 特に、1曲目であり実質的な表題曲となっている「DADA DISCO - G J T H B K H T D –」の個性たるや。
 これはロックなのか? ギリギリパンクのような気がする。
 非常に気の抜けた曲だけれど、行進曲のような高揚感さえ感じる。
 とにかく形容しがたいが、とにかく素晴らしい。

 6曲目「メランコリア」は少しゴシックよりのロックナンバー。
 個人的に今作で1番好きな曲です。
 まるで…夜の砂漠を彷徨うかのような…
 冷たい孤独。ただただ救いがありません。

 「メランコリア」もそうですが、今作は非常に櫻井さんの存在を感じるものになっています。
 「シュルレアリスム」というテーマといい、並んだ曲達といい、今井色が濃いアルバムになるのかと思いきや。
 今井色も十分感じられるにも関わらず、聴き終わってみれば櫻井さんの印象の方が残っていたように思います。
 前作「夢見る宇宙」でも感じられた、櫻井さんの表現力の向上。そして詞。
 今作における櫻井さんの詞は、今までと大きく変わっているわけではないのにもかかわらず、ハッとさせられるというか、
 さりげない表現にもどこか光るものが感じられるように思います。
 「メランコリア」も、今までの歌詞であればピエロに焦点を置いていたであろうところが、今回の焦点は観客。
 「場面は・・・」と聴いたときに、客観的な視点を感じ、どこか突き放された寂しさや淡々とした事実といったものが感じられます。
 「灰は灰に ふう 風に BLOODY・・・」というサビも面白い。
 全てを描写するのではなく、心に浮かんだ断片的なキーワードを描いているのでしょうか。
 とても直感的で、かつその表現が美しいなと感じました。

 今作はこのように、今までと違う語彙を使っていないのにハッとさせられる詞になっていると思います。
 個人的には前作までには感じなかったなと思うところなので、改めて櫻井さんの進化に驚きました。 

 9曲目「サタン」、10曲目「NOT FOUND」も素晴らしい。
 「サタン」はミドルテンポの星野曲。櫻井さんの色に合う華やかで妖しい曲。
 「NOT FOUND」はアップテンポでサビの不協和音が美しく哀しい名曲。
 歌詞が今井さんですが、SFチックなメロの歌詞と、櫻井さんにも勝るとも劣らない、薄氷のような生を表現したサビの歌詞が良い。

 この曲の世界が崩壊していくように哀しく激しいギターソロがとても好きです。 

 そして13曲目、「無題」はまさにBUCK-TICKだからこその怪作。
 暗闇に響く、暗いサウンド。そこに乗る櫻井さんのファルセット。 
 ダーク、というよりもはやホラー。 
 生まれて、悲しくて、愛して欲しくて。
 それでも、叶わないけれど、生きる決心をし、歩いていく。
 恐らく、櫻井さんの自身の投影がなされた曲なのでしょうが、そうだとすると、その曲のタイトルが「無題」というのが…
 なんというか、興味深いですね。
 いつの日か「名前を付けてやる」時が来るのでしょうか。
 そして、それが「幸せ」となるのか「悲しみ」となるのか、「櫻井敦司」となるのかはわからないけれど。

 まぁ、少し…というかかなり空想が過ぎてしまいましたが、しかし、今までのBUCK-TICKの同類の曲であれば、
 ただ「悲しい」というものであったけれど、この曲には良い意味で商業的なポップさも感じられました。
 それはファルセットの多用であったり、詞への英語の使用であったり、サウンドの歪ませ方であったり。 
 ただひたすらに悲しいというだけでは生としてもロックとしてもいけない、という意識があるのではないかと私は思いました。 

 そして最後は「形而上 流星-metaform-」。
 これまた素晴らしい、「無題」にも負けず劣らずの名曲です。
 シングル曲ですが、かなりアレンジが変わっています。
 1番はベースレス、ドラムレスになっており、曲の神秘的な雰囲気がより感じられるように。
  私、このアレンジ大好き!笑
 どこか和の雰囲気を感じるこの曲は、聴いていると心が浄化されるようですねぇ。
 やはりこの曲も櫻井さんの表現力が素晴らしいです。
 そして歌詞も、奇をてらった語彙はないにもかかわらず、そしてとても抽象的な言葉ばかりであるにもかかわらず、
 散漫にならずに引き付けられるものになっています。
 強いて言えば、サビの「死ぬほど」という言葉が、抽象的な歌詞をギュッと引き締めているように思いました。
 「死ぬほど」… 日常の中でも聞く、飽和したような言葉ですが、この曲を聴いたときにはとても引っかかりました。 
  櫻井さんの作詞のテクニックなのでしょうか、すごく素敵な歌詞だと思います。 

 

  今作、とっても良いアルバムだと思うのですが、たった一つだけ不満が……
  星野さん、そう、星野さんです。
  星野さん…バラードは?

  聴き終わって、あまりの素晴らしさに感激していたにもかかわらず、僕は星野バラードがないことを聴き逃しませんでしたよ!
  星野さんファンとしてはどんなに良いアルバムであろうと、彼の神バラードを聴かずに120%の満足を得ることは出来ません! 
  確かに「世界は闇で満ちている」も良いピアノバラードですが… 違うんだよ!なんていうか… 違うんですよ!(語彙不足)
  あの星野さんと櫻井さんの組み合わせでしか生まれない、美しすぎる旋律を聴かせていただきたいんですよ…
  次作では是非、「Message」 クラスの神曲を7、8曲ぐらいブチ込んでいただいて…
  星野ファンの欲望をシャバダバに満たして欲しいと思います。

 

 以上、簡単ではありますが「或アナ」の感想でした。
 アルバムが濃いだけに、とっても疲れたような気がします。特に最後。笑
 個人的には「狂った太陽」や「69」、「ONE LIFE,ONE DEATH」、そして「memento mori」あたりにも負けない、
 今後のBUCK-TICKの重要なポイントとなる名アルバムだと思います。
 こんな名盤を生み出してくれたことにただただ感謝です。
 そしてまた新たなアルバムを聴かせてください。できるだけ早めに!笑 

 

 



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