Zaalvoetbal b.m.minami

              Naar de offciele clubsite.

右サイドの約束

2005-06-28 | §コラム§
2005年コンフェデレーションカップ――

ブラジルとの死闘を制した試合後、スタジアムの外でしょんぼりしているブラジルの子供を見つけたフセッティ。
子供好きの性分ゆえに、いてもたってもいられない彼は子供に走り寄り呟く。

フセッティ「ごめんな。ロベカルがいたらブラジルの勝ちだったと思うよ」
たまたま傍にいた三都主が訳して伝える。

俯いていたその子供は顔を上げ、フセッティをじっと見つめた。
それから早口で何事か言った後、親指を立てて、その場から走り去った。
わけが分からずキョトンとするフセッティ。
三都主は笑いながらフセッティの肩をポンと叩き言った。
「次に闘う時まで右サイドは預けておいてやるよ、だってさ」

フセッティは思わず少年の去った方向を振り返ったが、既に影も見えなかった。
しばらく無言でたたずむフセッティ。
三都主も何も言おうとはしなかった。
やがて三都主の方に向き直ったフセッティの表情は、苦笑を浮かべながらも、どこか晴れやかだった。
「なら当分は負けられないな。他の国に渡したら、あの子に怒られるからね」




アレから12年後、ワールドカップのピッチに立つフセッティの姿があった。
年齢的にはピークを過ぎていた。
しかしフセッティは不動の右サイドとして日本代表に君臨していた。昼夜を惜しむ研鑽のたまものだった。

相手は、忘れもしない2005年6月22日ケルンにて、まさかの引き分けを日本にプレゼントされたブラジルだった。
最強カナリヤ軍団。受けた屈辱は晴らさねばならなかった。
試合開始直前、10番を背負ったセレソンがフセッティにゆっくりと近付いてくる。

「・・・フセッティ」その声に驚き、ふと顔をあげるフセッティ。
「お前は・・・」あの少年だった。
「あの時の約束を果たしに来たよ」逞しくなったセレソンはそう言って笑った。
「・・・望むとところだ」フセッティの笑顔が弾ける。

日本側の応援スタンドで、その光景を涙ぐみながら見つめる柳沢。
その手に持った三都主の遺影が優しく微笑んでいた・・・。


<この項、了> 

蘭 牛太郎/Ran Gyu-taro HG