チラシを配っていると道端でよく会うおじいさんがいる。
入れ歯を外したような口元は老いたポパイのようにふてぶてしいのだか、その目はシイの実の形にくぼんで気弱そうだ。通りがかったわたしと目が合うとその目はふわふわと視線を空に泳がしてしまう。
いつも薄いジャンパーを着てつるつるてんのズボンを履いて黒っぽい野球帽をかぶっているおじいさんは早足で歩く。歩いて歩いて止まる。
止まると電信柱を指差してからおもむろに頭を下げる。顔つきは真剣だ。しばらくうつむいたままでいる。それからウンと頷いて「ヨシ!」と声にだして、また歩き出す。
歩き出すのだか5歩も言ったところで今度は気をつけをする。そして他所の植え込みに向かって深いお辞儀をする。
お辞儀が済むと帽子を取って、白髪交じりの髪を数回なでて帽子をかぶりなおす。
そしてまた歩き出す。
坂の下に立つときは両手をおへその下に組んで頭を下げている。結構長くうつむいている。
そのあとふっと顔を上げて、わたしと目があったことがあった。すると今にも泣き出すかのような困りきったような顔になり、逃げ出すように歩き出した。
なんだかよくわからない。わからないからいろいろ考える。
わたしなんかには理解できない決まりがあって、その通りにしなければ具合が悪いのだろうか。
あるいはわたしには見えない何かがそこにいるのだろうか。おじいさんはその全てに挨拶してまわっているのだろうか。
辻辻にあやかしがいるのかもしれないし、どこにもいけない地縛霊がうごめいているのかもしれない。
ひとによくないものをそのおじいさんがなだめてくれているのだと思うと、どうだろう。
おじいさんは町内のまもりびとなのかもしれない。
入れ歯を外したような口元は老いたポパイのようにふてぶてしいのだか、その目はシイの実の形にくぼんで気弱そうだ。通りがかったわたしと目が合うとその目はふわふわと視線を空に泳がしてしまう。
いつも薄いジャンパーを着てつるつるてんのズボンを履いて黒っぽい野球帽をかぶっているおじいさんは早足で歩く。歩いて歩いて止まる。
止まると電信柱を指差してからおもむろに頭を下げる。顔つきは真剣だ。しばらくうつむいたままでいる。それからウンと頷いて「ヨシ!」と声にだして、また歩き出す。
歩き出すのだか5歩も言ったところで今度は気をつけをする。そして他所の植え込みに向かって深いお辞儀をする。
お辞儀が済むと帽子を取って、白髪交じりの髪を数回なでて帽子をかぶりなおす。
そしてまた歩き出す。
坂の下に立つときは両手をおへその下に組んで頭を下げている。結構長くうつむいている。
そのあとふっと顔を上げて、わたしと目があったことがあった。すると今にも泣き出すかのような困りきったような顔になり、逃げ出すように歩き出した。
なんだかよくわからない。わからないからいろいろ考える。
わたしなんかには理解できない決まりがあって、その通りにしなければ具合が悪いのだろうか。
あるいはわたしには見えない何かがそこにいるのだろうか。おじいさんはその全てに挨拶してまわっているのだろうか。
辻辻にあやかしがいるのかもしれないし、どこにもいけない地縛霊がうごめいているのかもしれない。
ひとによくないものをそのおじいさんがなだめてくれているのだと思うと、どうだろう。
おじいさんは町内のまもりびとなのかもしれない。