gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

白雪だって普通の子(後)

2012-09-25 09:48:41 | 日記
「なあ、鏡?この世でいちばんのべっぴんは…私、なわけないわね。私はあの子を殺した。あの子が美しいというだけで。自分の手で自分をけがしたのよ。これで私もおわりね。あの子がいちばん美しい」

すると鏡はこうゆうた。
「確かにあの子は美しい。でも、あんたはけがれてへんで。これを見てみ」

鏡に映し出されたのは小人たちと楽しそうに踊る白雪の姿。継母はそらほっとしたで。

でも、継母はどうじに思いあたったんや。

(あの子はこれまでいちども外の世界にでたことがない。動物も友達のように暮らしてきた子よ)

そう思うてみたら、小人たちの家は男ばっかりで、なんや心配になってきてな。さけど、いちどは殺しかけた子や。そないに簡単に呼び戻すわけにもいかへん。そこで継母は白雪に体で教えることにしたんや。

(でも、どうやったら…)
継母は考えたんやけどな、幸い自分は魔女や。
自分が不審者に化けたらええねん。

そうと決まったら、さっそく、毒の櫛を作った。これを髪にさしたら、たちどころに眠りにつく。でも、誰かが取ってさえくれれば目は覚める。

(これで、警戒してくれれば…)

案の定、白雪は櫛を受け取った。

「ねぇねぇ、お婆さん、こんな感じかしら?」

白雪は櫛をさしたとたんに眠りに落ちた。

(まったく…。でも、これでちょっとは気をつけてくれるわよね )

継母は期待してたちさったんやけどな、目が覚めた白雪は元どおり、警戒心もないままやった。

そこで、次に継母は毒のコルセットを用意した。

(小人たちにもあれだけ注意されていたし、ましてや、櫛を渡した私がまた現れれば警戒するだろう)

そう思うたんやけど、白雪はあろうことか、また受け取りよる。

継母は内心あきれながら、次を期待して帰っていった。

せやのに、白雪はそれでもあかんかった。鏡に映る白雪は、どこの誰ともつかん男を家に入れたり、ひどいときには、あの毒のコルセットをきれいに洗って腰に巻きよる。

(もう、これはあかん。無理や)

絶望した継母はこんどは毒のリンゴを用意した。
リンゴは食べ物や。櫛やコルセットとちごて、手では取れへん。結婚相手が見つからんかぎりは、眠り続けたままや。

作っといてなんやけど、やっぱり内心は、
(お願い、食べないで)
の一心やった。でも、それも虚しく、白雪は食べてもたんやな。

「なんでよ。なんで食べるのよ、白雪!あなたって子はどうして…」

継母は叫びたかった。でも、小人が帰ってきたら、おるわけにもいかん。で、泣く泣く帰った。

でもな、白雪はほんまはわかっとったんや。

コルセットを腰に巻いたあの日、小人たちは白雪を問い詰めた。

「なあ、白雪。あんたはなんでそう、やすやすと怪しい人から物を受け取るんだい。…言いたくはないけど、これ以上は俺たちでも守りきれないよ?」

「ごめんなさい。実は、あの老婆、私の継母なの。なんで、こんなことをするのかは分からないけど、私、こんなことは辞めてほしくて」

「なんだって!?君が継母に追われてきたのは知ってたけど、そこまでするなんて。よければ僕たちがとっちめに行こうか。」

「やめて。私が追われたのは、今考えれば、私が悪かったのよ。お義母さんがいつも鏡に聞いていたの、知っていたのに…。あの人は、人を信用できないの。お父さんと結婚したことだって疑って。自分の見た目がきれいだから、それだけなんじゃないかって。お父さんはそんな人じゃないのに…。もっと人を信用してほしいのよ」


リンゴを吐き出した白雪はため息混じりに目を開けた。
(やっぱり、あの人は誰も信用しないのね。…私のことも)

白雪姫は結婚式で真っ赤に焼ける赤い靴を用意した。それは、最後の手段だった。娘の私がそんなもの履いてほしいと願うはずがない、と、継母に感じてほしくて。

(ねえ、お義母さん)

でも、継母は履いてしまった。踊るように死んでいくお義母さんの姿に、白雪は涙した。

親の心子知らず、子の心親知らず。

白雪だって普通の子(前)

2012-09-25 00:36:24 | 日記
白雪姫は国いちばんのべっぴんでな、そのうえ優しいさけ、動物からも人間からも愛されとったんよ。

でも白雪の本当のお母さんは病気で亡くなってしもて、かわりに継母ができたんやけど、これがものごっつい性格がわるぅて、自分の美貌にしか興味なかったんや。そんな継母の日課は毎朝鏡に尋ねることやった。
「なあ、鏡、この世でいちばんのべっぴんは誰や? いや、そんなん私にきまってんねんけどな、一応念のために聞いときたいんや。ほら、私も歳やから」

そんなら鏡はこう応える。
「そんな心配いらんがな。あんたに決まっとる。間違いない」

「ほんまか!よかったわ~。私が美貌うしのうたら、なんの取り柄もないもんなあ。あの人がもろてくれたんも、結局は美貌やろうし。…なんかこんな話ししてたら寂しなってきた」

こうやって毎日、おいつめられそうな自分を慰めとったんやな。

一方、白雪は今が恋の真っ盛りや。噂を聞いてはあの人がいい、あの人と付き合えたらって。でも、心がおとなになっていくと、体もおとなになっていくもんで、肉付きもようなってくる。白雪はお姫様や。紅やら白粉やらには苦労せえへんかったけど、そのぶん、自分の容貌はきになっとったんや。
それで白雪は継母にいつでも聞いとった。

「ねえ、お母様、私はきれいなんでしょうか。最近、着る服がきつく感じて、太ったのではないかと」

「心配いらないって、何回言ったら気がすむねん。それはおとなになった証拠。私なんか見てみ?二の腕もこんなにたるんできて」
おどけてみせる継母に白雪はきゃっきゃと笑った。
あ~あ、白雪姫は自分の態度にお義母さんがどんどん傷ついとることに気づかへんかったんやな。

で、とうとうお義母さんも切れてもた。

狩人に白雪を殺すよう命じた。

でも、狩人にとっては、かわいい娘や。殺されへん。それでこっそり逃がして、かわりにイノシシの心臓をもちかえったんや。

その頃、継母はちょっとやりすぎたと後悔しとったんやけどな、帰ってきた狩人は白雪姫の心臓を差し出してくるし、はっきり言って後の祭りや。継母は供養のつもりで、白雪姫の心臓を食べたんや。

「なによ、あの子、塩分摂り過ぎじゃないの?こんな辛いのたべられへんわ」
ゆうてな。