エルデシュは,共同研究を重んじた.才能ある若手を熱心に育て,多くの数学上の問題の発見と証明という「成果」を上げることにのみ執着した.「フェルマーの最終定理」の証明に独力で取り組んだアンドリュー・ワイルズ(Andrew John Wiles)の研究姿勢に対する舌鋒は,実に辛辣.多様な研究スタイルを各自で認め合うほどの寛容さは,非凡であるほどに持ちえないということを感じる.いかなる天才であっても,真理の追究を独占的に為すことを嫌ったエルデシュへのオマージュとして,エルデシュ数というものが作られている.エルデシュと共著で論文を発表した研究者は「エルデシュ数1」,さらにエルデシュ数1保持者と共同研究を行った者は「エルデシュ数2」.2010年までのフィールズ賞受賞者は,全員 5 以下のエルデシュ数を持つとされる.